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コネタ


コネタ218
 
伸び縮みするスパゲティ屋さん

今回の記事、情報元はといえば、正直申し上げてテレビ番組だった。

「ふだんは6人しか入れないお店、でも9人来ても大丈夫!」という内容で、つまり3席分のスペースを「壁を外に押し出す」ことで作り出していて、びっくり仰天したのだ。

店の場所を見たら、吉祥寺南口。かつて親しんだ街にそんな物件があったのか!これは行かねばと、あたふたとそのお店「多夢羅(たむら)」に向かった。

乙幡 啓子

店主の田村さんがシャッターを上げる。中はごらんのとおり、ふつうのお店。だがしかし、窓枠に主人が手をかけると・・・。


ふつうのたたずまい。
何するんです?

下左の写真の通り、50cmほど壁全体が押し出され、お店が完全体となった。上左の写真と比べていただきたい。

こういう構造って、他にもあったな・・・望遠鏡だったか?


ばーん。
しまうところも見せてくださった。手で押す。

お店の中でのセッティングもむろん必要だ。


すきまから風が入るのを防ぐため、詰め物をする。
テレビラックを引き出す。

そしてお店は広くなった。下左の写真の、カウンターのところに新たにスペースが誕生したのだ。


左側が移動式の壁である。
天井。舞台装置みたいだ。

そもそもなぜこのような仕掛けかというと、話は簡単だ。「シャッターがあるから、引っ込めないと収まらない」。・・・。そもそもがそもそも、何ででっぱっているかというと、元は外壁はなくテント張りだったそうで、今なら「オープンテラス」のようでおしゃれともいえるが、当時外食はおおっぴらにはできない傾向があったということもあり、ちゃんとした壁を作ったそうだ。

当時といえば。ここは27年前から営業しているが、多摩地区初の「生スパゲティ」を出す店なのだ。


店も三角だ。 狭い。
生スパゲティ。麺は自家製。太い。

元はコーヒーショップだったが、ある日、知り合いに連れられて行った「パスタミックス研究所(というようなところ)」で、衝撃の生パスタとの出会い。そしてそれを再現し流布すべく、5年後に生スパゲティの営業を開始したのだ。

ラーメン1杯30円〜50円の時代に、スパゲティは1皿100円〜120円。スパゲティ食べてる子はおしゃれで最先端というイメージがあった当時に、早くも生麺での営業だ。

その生麺を使った、定番「ナポリタン」を作ってもらいました。



生麺は以前もハマって、新宿地下のある店に通った。むちむちの食感が悪魔的に魅力なのだった。

ここのはその上、太麺だ。細麺も好きだが、太麺はなんというか、「噛んでる幸せ」「口いっぱいのほおばり感」を感じるのがいい。このまま小1時間ほどはモクモクと食べ続けたいという気にさせる。

三崎港に近い出身の、ご主人の母上が昔作ってくれたスパゲティには、豊富に魚介類が入っていたそうだ。これも、海老・イカ・アサリなど魚介類が、マリナラ系ソースにまぶされて入っている。


衛生的。
どうですよ、この太さ、ひたり具合。

作ってるときはあまりしゃべらないというご主人だが、取材中はお話が絶えることはなかった。

「狭い店はね、誰のために料理しているか、お客さんの顔が見えるのがいいね。カウンターと近くてね」とご主人。

近いのはいいが、たまに材料を切らしているときなど、お客さんに買ってきてもらうこともあるという。ミルクを頼んだお客さんにお金渡して、「安いのでいいから牛乳買ってきて」というと、飛んでってくれるそうだ。

「そうやって買ってきてもらった180円の牛乳を、カップに入れて1杯300円で出しちゃうんですからね。」とご主人。あ、これはむろん常連さんに限ってのお話ですが。しかし、なんという信頼関係だろうか。そのお客さんもいい人だ。


まるごと1枚入ってます!
ベーコン!これじゃ枕だ。1日でこの半分、多いときは2つまるまる消費するという。

しかしそんな話、ここに書いてしまってよかったんだろうか。

そういえば、昔、「親にどんな仕事してるかインタビューしてくる」という宿題をご主人のお子さんが出されて、そのとき
「お客さんは、もし女の人ならすべて自分の恋人と思い、もし男の人ならすべて自分のライバルだと思って作っている。」と答えたそうだ。小学生に。

上のエピソードで、この店の「何か」を伝えることができただろうか。
当初「伸び縮みする」という切り口で訪ねたお店だが、うまいナポリタンを食べ終えたころはそんなことは忘れていたのだった。

自家製生スパゲティ専科
多夢羅
東京都武蔵野市吉祥寺南町2−2−11
TEL : 0422-49-4908
営業時間 : 昼11:30〜夜10:00(LO 9:30)
木曜日、その他不定休

 

 

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