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コネタ


コネタ240
 
食べられる、フシギな動物つくったよ!

(text by 大塚 幸代

10月16日〜10月31日UPLINK GALLERYで行われたミヤタケイコさんの個展『POWER POP ROOM』会場のようす

私は女子小学生のころ、ぬいぐるみのようなものを、一切買わなかった。
ファンシー文房具がどんどこ売れ出した80年代、私はわざと可愛いものを避けていた。缶ペンケースも、黒くてシャープなデザインの、男子に人気だった「BOXY」を使用。
周りには「……なんかこいつ変」と思われていたんだと思う。やんわりといじめられていた。
当時、女子間には誕生日にサンリオ製品を贈り合うという習慣があったのだが(今もあるのかもしれないが)……私は一度も貰ったことがなかった。
ちょうど、誕生日が学校の創立記念日で休日だったので、有り難かった。誕生会も開かなかったし、呼ばれても行かなかった。親もファンシーなプレゼントはくれなかった。現金を渡されて「これで本買え」と言われたりした。
でも本当は欲しかったのだ。カラフルな、キティちゃんの布バッグや、髪飾り、おさいふ、ぬいぐるみ。
「けっ、そんな女子供の欲しがるものなんか欲しがったらカッコ悪いっ」「それに、背が高くてブスで暗い私には、ああいうの似合わないっ、頭にリボン付けてる美少女のナオミちゃんとか、ああいうコにしか似合わないんだっ」「私は女の子の仲間には入れないんだ……」と思い込んでいた。
孤高なハードボイルドな女子小学生のつもりだったのだ、たぶん。

しかし反動というのはすごい。
年齢を重ね、少女から遠のいていくにつれ、素直に「かわいい」ものが好きになった。『いちご新聞』(サンリオの雑誌)の購読をはじめたのは、20歳を過ぎてから。雑誌に載っているかわいいものを切り抜いて、スクラップブックにしていた次期もある。ぶ厚いファイルがみっしり5冊分くらいある。

だから「かわいい」に対して異常な執着がある。中途半端なぬるい「かわいい」ものには「ダセえんだよコラア! もっと真面目に真剣に、ハードコア〜にかわいくなくっちゃ意味がないんじゃあああああああ!」と腹を立てたりするしまつ。
しかし「かわいい」ものを掘り下げていくと、一周まわって「こわい」になってしまったりもする。だから、自分でも「かわいい」がもう良く分からない。
かわいいって何だろう?

かわいいが分からないけど、「とにかく、すごい」と思う、作家さんはいる。
私の大好きなヌイグルミ系造型アーティスト・ミヤタケイコさんだ。
私は自分で絵を描いたりモノを作ったりすることは出来ないのだが……今回ミヤタさんの個展で、ワークショップがあるというので、思いきって参加してみた。



ミヤタさんは今回の展示で「食べられるぬいぐるみ」も作っていた。カフェが付いているギャラリーなので、ミヤタさんの作品を眺めながら、ミヤタさんのお菓子も食べられたワケだ。


これが、名付けて「毒スイーツ」、クマクビケーキ。もちろん毒入りではなく食べられる。

 

今回のワークショップは、このような「食べられるぬいぐるみ動物」を、参加者おのおので好きなように、デコレーションするというもの。

ぬいぐるみ作品に囲まれたギャラリーの中で、作業を始める。


まずは金具(ケーキロック)で、用意されていたクマさんスポンジを固定。


まず、ミヤタさんによる説明。
「今日は、自分のために作るんじゃなくて、『誰かにあげる』ことを想定しながら作ってみましょう!」

……え、と思った。ショックだった。
困った気持ちになってしまった。友達や恋人がいないというのもあるが、私の中で「かわいいものを作る」のは、自分のためだけの作業だと思っていたからだ。
頭の中が白くなった。




次に、クマ型スポンジを用意しくださった、フードコーディネーターのQ(キュウ)さんから技術指導が入る。
「本日はバタークリームとチョコクリームが用意してありますから、お好きなほうを使ってください。でもこのクリーム塗ってしまうと、クマの原形の細かい部分は、ほとんど形をとどめないと思いますが」
「で、塗ってから何か飾りを付けるときは、つまようじでスポンジをほじくってからくっつけると、よくくっつきます」
なるほど。しかし出来るのだろうか……。不安がふくらむ。


用意してあった色鉛筆で、ラフ画を描いてみた。
「とりあえずピンク」ということしか、思い付かなかった。


用意された材料もすごかった。マーブルチョコ各種、グミ、フルーツ……絵の具箱のように、色が氾濫しまくり。着色したスポンジを粉状にしたもの(写真左、ケーキクラム)は初めて見た。


「うーむ、うーむ……」
悩みながら、バタークリームに色を付けていく。アメリカの輸入モノの食用色素だそうで、日本のものと発色が違う。
赤を入れ、紫をちょっと入れたら、「かわいいピンク」というよりは、内臓というか、レバーのような色になってしまった。


「……な、なんとかせねば!」
材料にあった、薄いピンク色のキスチョコを、思いつきで付けてみる。


ラフ画で描いたのと同じように、マーブルチョコも付けてみた。


作業するわたくし。「………」

私のお隣の席で、ミヤタさんも作業をしていた。
「いやあ、個展の最終日なので、疲れちゃってて……ダメだわ」とか言いながら、「やっぱそんな色使い、普通思い付かないっすよ!」というセンス抜群のクマを作っていた。

「ところで、大塚さん。大塚さんのホームページに『アメリカンケーキ』を紹介したページがあったでしょう?」
「ああ、はいー」
「あれ見て、ちょっと参考にしたんですよー」
「えっまじですか。嬉しいです」
「あれ、すごいですよね、アメリカのケーキって」
「……私、初めてアメリカのケーキがすごいって思ったの、映画の『バック トゥ ザ フューチャー』なんですよ」
「ケーキなんか出てましたっけ?」
「あのー、主人公マーティのおじさんの刑務所出所祝いに、ママがケーキを作るんですよ。それが、すっごい派手で、印象に残ってたんです」
「へえ、どんなケーキだったんですか?」
「確か、鉄格子の絵の、そのまんまの……」

だらだらと話をしながら作業をすすめる。
アート系のワークショップなんて初めてだから、実はちょっとビビっていたのだが、ノリとしては、女子高校生時代の、家庭科の時間みたいに、穏やかで楽しい時間だった。




1時間ほどで、皆のが完成!


それにしても、みんなうまい。両面に顔を作ってる人もいた。


ミヤタさんのは、後頭部からなぜか、カラーミミズ・グミが生えていた。やっぱりそれは思い付かない。




そして、どーん。わたくしの作品。ちょっとロリータ風にしてみたんですけど、いかがでしょうか。
ちなみに頭上のタコ型グミは、一応、帽子に見立てています。




裏はこう。

お互いの作品を見ながら、
「これは、人にあげると、イヤガラセになっちゃうかもしれませんね、ふふふ」
という結論になった。




自宅にもって帰って、箱を開けて、もういちどマジマジと、自分のケーキを見た。

「かわいく……ない。でも、かわいい………かわいいよ。いや、かわいいかあ? や、かわいいって! たぶん」
食べながら「ああ、これは、小学生時代の自分へのプレゼント、ということにしよう」と思い付いた。
デコレーションの部分はともかく、中のスポンジ土台が大変に美味しかった。

ミヤタケイコさんサイト

●ミヤタケイコさん個展『黒い森のオトモダチ』が開催中です。11月30日まで。
Lamp harajuku
〒150ー0001 東京都渋谷区神宮前4-28-15 
12:00-20:00 無休
Tel:03-5411-1230
http://www.generation-inc.com

●12月26日、札幌・FURNTURE DESIGN AGRAの「パイロットデリシステムシリー
ズNO.005」で、今回紹介した『POWER POP ROOM』の毒スイーツが食べられるイベントがあるそうです!
詳しくはあぐら家具HPで
http://www.agra.co.jp/



 

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