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コネタ


コネタ276
 
プロの練習を見に行く

 プロのスポーツ選手というのは一体どのくらい練習をしているのだろうか。一流選手であり続けるためにはきっとたいへんな努力をしているに違いない。そういえばちょうどプロ野球はシーズンを終え、秋季キャンプに入っているらしいではないか。しかも都合のいいことに沖縄にはいくつかの球団がキャンプ入りしている。これは実際に彼らの練習を見て確かめられるチャンスだ。ということでプロ野球の秋季キャンプを見に行ってきました。はたしてプロの選手はどのくらい練習していたのでしょう。

安藤 昌教

球場周りはドラゴンズの応援一色です

まずは中日ドラゴンズ

沖縄県中部、北谷町では中日ドラゴンズが秋季キャンプを行っている。球場近くにはドラゴンズを応援する横断幕がたくさん掲げられていた。ドラゴンズは今年のセリーグ覇者だ。しかも日本シリーズで惜敗している。その状況から考えてきっとえらく練習しているに違いない。

ところで筆者は愛知県出身ということもあり、子供の頃は周りに流されるがままにドラゴンズを応援していた。実は野球にはあまり興味のない子供だったのだが、ドラゴンズファンでないと友達と話が合わなかったのだ。

そんな筆者もいつだったかナゴヤ球場へドラゴンズ戦を見に行ったことがある。その試合中、三振してベンチに帰ってきた大豊選手の頭を当時の星野監督が平手でひっぱたいていた。「あほたれが」とでもいわんばかりに。それを見ていた筆者は子供心に怯えた。プロの世界は厳しいんだな、と。

ちなみに現在、大豊選手は名古屋で大豊飯店という中華料理店を営んでいる。


ひたすら繰り返される盗塁の練習。地味です

ヒデノリ選手の特打ち。打つたびにコーチから「もっとコンパクトー」と怒鳴られていました

予想以上に厳しい練習でした

それでは早速ドラゴンズのキャンプの様子を見てみることにしよう。

キャンプは野手が球場を使い、投手は隣接された練習場を使っていた。こちらは野手の練習する球場。この日は平日ということもあり、スタンドには見物客もまばらだったが、子供連れやカップルがちらほら見に来ていて遠足のようなほのぼのとした空気が流れていた。

練習が始まるまでは。

朝10時の練習開始と同時に観客は口を閉ざすことになる。

この日の午前は基礎練習。ひたすらにノックと盗塁の練習が繰り返されていた。ノックはアメリカンノックと称されるもので、一塁から二塁を回り三塁まで全力で走りぬける間、一二塁間と二三塁間で強烈な打球が2回飛んでくる。それを受ける。逃すと怒鳴られる。

盗塁の練習は投手のモーションを見て全力で走る。盗む塁上にはコーチが仁王立ちしていて、遅いとまた怒鳴られる。

「すげえ、こんなに練習してんのかー」
筆者の近くに座っていた中年のおじさんがつぶやいた。筆者もそう思っていた。だがこのおじさんは今日仕事休みなのだろうか。そっちの方が気になった。


高校の野球部員だろうか。とても熱心に練習を見守っていました

素人ながら触発されます

スタンドには平日でもぱらぱらと見物客が訪れていた。お昼になると近くで仕事をしているらしき人たちが弁当を持って来てスタンドで食べている。筆者もコンビニで買ったパンを食べながら練習を見ていたのだが、黙々と練習をする選手達を見ていると、なんだかじわじわと「おれもがんばらなきゃ」という気持ちが沸いてきて座っていられなくなってきた。夏休みにクーラーの効いた部屋で高校野球を見てるときに感じる申し訳なさのような感じだ。久しぶりにすがすがしい刺激を受けさせてもらった。


激しい練習を見物しながら弁当を食べるおじさん
お父さん、今日は会社お休みなの?

ものすごい近くで練習が見られます。すぐそこに憧れの選手が

投手陣は和やかに

続いて投手陣が練習する練習場へ移動する。こちらはとにかく選手の近くで練習が見られる。

投手陣の練習は球場の野手よりも和やかに行われているように見えた。石川選手というムードメーカーがいるおかげだろうか。彼は終始笑顔で冗談を飛ばし、周りの空気を和ませていた。

監督が来るまでは。

お昼前に落合監督が練習場にやってきた。監督が登場すると場の空気が一気に張り詰める。さすがの石川選手もキッと表情を変えたように見えた。どうやらこの厳しい練習メニューは落合監督のいわゆる「オレ流」らしい。ひたすらしごいて付いて来られたやつだけを使う、という方針なのだ。どうも中日の監督というのは怖い人が多い。

だけどこの練習を見ていると、今シーズン優勝できたのも納得がいく。こういう地味でハードな練習こそが本当に強いチームを作るのだろう。


サイン待ちの親子。どっさりと色紙を持っていました
ノート片手にみっしりとメモを取っていた若者。何を研究していたのだろう。他球団のスパイか

落合監督が歩くと

監督もたいへんです

練習場から落合監督が出てくると、その後をぞろぞろと報道陣が付いて回る。そしてその後をさらに一般客がぞろぞろと続く。監督は日本シリーズの後体調を崩してしまい、この日の前日も早々と球場を後にして休養をとっていた。どこに行くにもこんなに取り巻きに囲まれていては確かに休む暇も無いだろう。

だけど筆者もやっぱり後をつけてしまった。だって落合監督だもの。


報道陣がぞろぞろと後に続きます
その後をさらに一般客がぞろぞろと

 

次は横浜ベイスターズ

ドラゴンズがキャンプインしている球場から自転車で15分くらいのところに横浜ベイスターズがキャンプをはっている。この区間は少し移動する間に道路に掲げられた旗がドラゴンズからベイスターズへと変わるキャンプ激戦区だ。見物客にとっては一度にいろいろな球団の練習が見られて得した気分になれる。


こちらはベイスターズのキャンプ地、宜野湾市
球場にはベイスターズの旗がなびいています

選手で入り口で色紙を持って出待ちするおばちゃん。乙女の目をしていました

近くても雰囲気が違います

横浜ベイスターズのキャンプ地、宜野湾市へやってきた。中日のキャンプ地からは目と鼻の先なのだがなんだか雰囲気がまったく違う。北谷町の中日キャンプは、なんだか虎の穴みたいな雰囲気が漂っていたのだが、横浜のキャンプ地は運動公園の一角にあるグラウンドを使っているためか、開放的で明るい感じがした。グラウンドの周りには公園を利用している一般市民がたくさんいる。


やっぱり一番熱心なのは高校球児でした

リラックスして練習していました

横浜も中日と同様、午前は基礎練習を行っているようだった。筆者が見に行ったときにはノックが行われていた。しかし中日とは違い、なぜかあの張り詰めた緊張感みたいなものが無いように感じた。球場には浜崎あゆみが流れていて、選手もリラックスした様子で練習をしている。選手同士練習中にふざけあったりもしていた。

中日との違いは見物客層にも見られた。高校球児がノート片手に熱心に見に来ているのはどちらも同じだったが、中日の見物客に子供連れやカップルが多かったのに対して、横浜の見物客には女性の単独来場が多く見られた。一人で来るからには、暇だからなんとなく、とかではなく本当に熱心なファンなのだろう。彼女達は他の誰かと話をすることもなくぽつりと一人で座り、じっと選手達の練習を見つめていた。選手達の様子とは逆に、見物客は横浜のほうがストイックだ。


横浜キャンプの見物客は女性一人が多い
こちらにも。じっと練習を見守ります

選手は口々に「おつかれちゃーん」と言っていました

やっぱりちゃんと練習していました

しかしいくら中日よりもリラックスした雰囲気だとはいえ、横浜の選手達もちゃんとハードな練習をこなしていた。この日は11月だというのに日差しが強く、日中は気温も27度くらいまで上がっていた。そんな中、全力でメニューをこなす選手達の腕はみんな一様に太かった。半端な太さではなく本当に太かった。これこそがプロの厳しい練習に耐えてきた証なのだ、といわんばかりに見えた。

少しだけプロが身近に感じられました

どうでもいい話だが、横浜の選手達の間では今「おつかれちゃーん」が流行っているようだった。練習を終え、休憩に入るときには球場のあちこちで「おつかれちゃーん」「おつかれちゃーん」の声が聞こえた。筆者も好きだ、インスタントジョンソン。


外野席で寝る人。11月だというのに裸で寝られるところがキャンプ地として選ばれる理由

プロはさすがに練習してました

取材したのは各球団たった2日ずつだったのでなんとも言えないところもあるが、筆者の見る限りプロ野球選手はかなりハードに練習をしていました。特に印象に残ったのはドラゴンズの練習がとにかく厳しいということ、それからベイスターズの選手達はみんな仲が良さそうだということ。このままいったら来シーズンもドラゴンズかもな、と思った。練習のしすぎで故障者が出なければいいと思う。

それにしてもプロのスポーツ選手の練習はただぼーっと見ているだけでかなりおもしろいです。ノックしてもほとんどエラーしないし、機械みたいにぴたっとファーストに送球するし、腕太いし。実際に練習を見に行くことでプロ選手のすごさを再認識することができました。来シーズンの応援にはいっそう気持ちが入りそうです。

 

 

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