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コネタ


コネタ286
 
日本一辛いラーメンを食べた

会社近くのラーメン屋に「日本一辛いラーメンがある店。完食した方には粗品贈呈」という貼り紙があるのを見つけた。
見た目は何の変哲もない、普通のラーメン屋だ。まったくノーマークの店にあった、身近な日本一。普段の生活で日本一に挑む機会などそうそうあるものではないが、さいわい辛いものには自信がある。「日本一の辛さのレベルってどのくらいなんだろう」との興味から、粗品を貰う気満々で、食べに行ってみました。

高瀬 克子

同行者あらわる

日本一辛いラーメンを食べに行くという私に「興味あります。行ってみたいです」と同行を希望してきたのはウェブマスターの林さんだ。
「辛いの大丈夫でしたっけ?」と聞くと「ココイチなら3辛です」と林さん。なんとも反応に困る微妙な数値の自己申告だが、日本一に挑むに当たって1人よりも2人の方が何かと心強いだろう。辛い(ここはツライとお読みください)闘いになった場合、励まし合える相手がいるのは重要だ。
というわけで、林さんと共に店のある湯島へ向かった。


店は外観工事中でした
店外にあった貼り紙。日本一辛いラーメンは很辣(ヘンラー)ラーメンという名前らしい

隣の人と仲良くなれます

店には先客が二人。

カウンターに座り「很辣ラーメンを2つください」と注文すると、それまで店のテレビに見入っていたお客さんが「お、挑戦するの?」と話しかけてきた。


たぶん常連さん(テレビから視線離さず)
上島さんのリアクションはどんな風だったのでしょう

「食べたことあるんですか?」「ないない。俺、辛いのダメだもん。無理無理」「あー」

こういうチャレンジメニューは見ず知らずの人と気軽に話すきっかけになりますね。なんとなく雰囲気が飲み屋のカウンターっぽくなってきたところに、問題の「日本一」登場。ああ、ドキドキする。ちゃんと食べられるだろうか。


赤黒いスープに浮かぶ、海苔、メンマ、焼豚、わかめ

慎重に口に運びます

かなり早い段階で上着を脱いでTシャツ姿に

レンゲに付いたザラザラがおそろしい

これだけ見ると、構成がまるでスープカレー

辛さと熱さ

透明度ゼロのため、麺がまるで見えない。そしてスープがドロリでザラリだ。このザラリが全て香辛料(主に唐辛子?)かと思うと、さすがに腰が引ける。湯気が上がっていないのは、表面の油が膜になっているせいだろうか。

まずはスープをひとくち。…ん?
「あんまり辛くないですね」
「そうですね…。あ、でも後から来ますよ」
たしかに口に入れた途端に飛び上がるような辛さではない。後からドシーンとくる、重量感のある辛さだ。

そして麺へ。…麺がすすれない。熱さのせいもあるが、汁が口の周りに飛ぶのがこわくて、ずずずーっと勢いよく吸い込むことが出来ないのだ。外国人がラーメンを食べる時ってこんなだよな、と思いながら注意深く麺を口に入れる。

ずずずずー!

いきなり隣の林さんが盛大な音をたてた。あ、鼻かんでるんですか。見ると、すでに汗だくだ。

「なんだか耳が遠いような気がするんですけど」「耳にきましたか」「らしいです」「どっか体の機能がおかしくなってるんですかね」

そういう私も額からツツツーと汗が流れ始めた。鼻水もどんどん出る。食べる。汗をふく。食べる。鼻をかむ。その繰り返しだ。


敵はスープだ

スープまで飲み干さないと、完食とは認められない。麺はわりと難無く片付いたが、問題はスープだった。「赤い葛湯」と呼びたくなるほど、とにかく濃度が尋常じゃない。ひとくち飲んだら、少し休憩しないと次のひとくちに進めない。

スープはもうとっくに冷めているのだが、いつまでも熱く感じられ、口から胃にかけての一帯が強いお酒を飲んだ時のようにカッカと灼けるように熱い。

あまりの辛さに舌がマヒしてもおかしくはないハズなのに、かえって味覚は敏感になったようで、当初は感じなかったハーブっぽい風味を感知できた。一陣の風が吹き抜けるような清々しささえ覚える。…辛さによる幻覚だろうか。

「半ライスください!」

あ、林さんが禁じ手に出た。やっぱり、このスープ「だけ」を飲むのが大変なのだ。


やりました!

髪の毛を汗で貼り付かせながら、完食の笑み

ノートの日付けを見ると、だいたい1日に1〜3人が完食している模様。多いのか少ないのか

自分では買わないデザイン

無事に完食

結局、普通のラーメンの倍の時間をかけて、なんとか完食。林さんも半ライスの助けを借りながら、無事完食。
店の人に「食べました!」と誇らしげに宣告すると、こちらが拍子抜けするほど冷静に「あ、はい」と返されてしまった。もしかして完食率が高いのだろうか。

「やっぱり完食される方が多いんですか?」
「いいえ」(きっぱり)

それだけ答えると、どこかへ行ってしまった。とことん無口な人らしい。

「このノートに名前と感想を書いてください。それから記念写真を撮ります」

店の壁には完食者のポラロイド写真がズラリと並んでいる。ここに仲間入りするのかと思うと、嬉しいような照れくさいような恥ずかしいような。顔の汗を拭き、林さんと2人、カメラの前に立った。

カシャ! ギュイーーーン、ギュイー…イ、イ…、ギュギュギュギュ。

「…あ、フイルムが切れてました」

なんとも言えない空気が店内に流れる。

「えーっと…。写真を撮りに、あとでまた店に来てもらってもいいですか?」と店員さん。
そこで、写真を撮るために再び店を訪れることで話はまとまり、結局この日は粗品を貰っただけで店を後にした。

「この手触り、絶対タオルだ。いっぱい汗かいたからタオルなんだな。気が効いてるな」と思いながら粗品の包装を剥がすと、中から出てきたのはランチョンマット。…なんで?


ちゃんとしたラーメンでした

確かに辛かった。でも「あれは本当に《日本一辛い》ラーメンか?」とも思った。それとも私は自分で思う以上に辛いものが得意なのか?

ただきっと、ホントに日本一辛いラーメンというのは、食べ物としての機能を果たさないような気がする。ただ辛いだけの凶器のようなラーメン。そんなの、TVチャンピオンの激辛王でもない限り食べられない。

人が食べることを考えて作られたラーメンだったからこそ、最後までおいしく食べられたのだろう。そう考えると好感が持てるというか、なんというか。
ちなみに激辛ラーメンには、他に中辛・準辛・小辛とあるので、興味のある方はお店へどうぞ。

本来なら、ここに貼られる予定でしたが

「北キツネ」

 文京区湯島3−42−2
 03-3831-4060

それから

翌日、再び店の前で林さんと待ち合わせた。

「昨日、お腹大丈夫でしたか?」「はい」「え、私、食後6時間くらいしてからトイレに篭城しました」「へー」

くやしい。正直、負けた気分だ。

店に入り、昨日とは違う店員さんに写真を撮ってもらうことになった。汗で顔がテカってない分、日を改めた撮影というのは却って良かったかもしれない。

カシャ! ギュイーーーン、ギュイー…イ、イ…、ギュギュギュギュ。

フイルムは、相変わらず切れたままだった。
私の写真が店の壁に貼られる日は、果たして来るのでしょうか。


 

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