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コネタ287
 
こんなのあり? ミュージック・タクシー
一見、普通のタクシーのようにも見えるが…

趣味で、車に立派なオーディオ・システムを積む人はけっこういるが、それと同じノリを、営業用のタクシーで実践しているかたが長崎にいる。その名もミュージック・タクシー!

「そ…、そんなのありだったんだ?」

今までのタクシーは一体なんだったんだと言いたくなるくらい、すばらしい趣味の世界がそこにあった。

T・斎藤

ミュージック・タクシーの上戸さん

液晶モニターが計3台!

さっそく車内を拝見

こちらが、ミュージック・タクシーを営まれている上戸(かみと)さん。タクシー会社に11年勤め、現在は個人タクシーとしてされている。

ミュージック・タクシーの外観は一見、普通の個人タクシーのようにも見えるのだが…。
早速、中を見せていただいた。

まず目を引くのが、計3台の液晶モニター。音楽はCDではなく、DVDの映像付きだ。

「テレビも見れますし、プライベートルームみたいな感じです。」と、上戸さん。

たしかに。これなら待ち時間も苦にならないだろうし、むしろずっとそこに居たくなるかも。タクシーの仕事って待ってる時間長いだろうし。

スピーカーだらけ

車内にはとにかくたくさん、あちらこちらにスピーカーがついている。ドアにも、フロントにもリアにも。ツィーターとかウーファーとかも。

「ちょっとこだわり過ぎたかも知れません…。」(本人談)


ドアにも
フロントにも
鋭い音を作り出すツィーター
リア。なんかいろいろ置いてある。

超軽量の鍛造ホイール。1本5万円。

改造費用は200万オーバー

「メーカーさんからは、全国でタクシーに取り付けた前例はないって言われました。。」

改造にかかった費用はなんと200万を越えているという。ちなみに車両本体価格は180万ちょい。 本体よりも改造代の方が高い。

「採算がどうのこうの考えたら、やってないと思います。」(本人談)

ちなみに、このミュージックタクシーの料金だが、特別な料金を取ったりはしていない。あくまでも普通のタクシーの運賃のみ。むしろ個人タクシーなので初乗り料が10円安い。超良心的。


何かが違うトランクルーム

スペアタイヤは積まない主義

次に、トランクルームを見せて頂いた。

通常スペアタイヤが入るスペースに、ウーファー(重低音を再現するスピーカー)が堂々と埋め込まれている。

「アレ? スペアタイヤって積まなくてもいいんですか?」
「法令上は問題ないです。その代わり、いざパンクした時の為に、これを積んでます。」
と言って取り出したものはパンク修理キット。
壊れたらその場で直す!


スペアタイヤの代用品
電源を安定供給させる装置の姿も

夕暮れ時の長崎の街をドライブ

装備はこのくらいにして、次はその音響を体感させていただくべく、夕暮れ時の長崎の街を走ってもらった。

♪I LOVE YOU, OK〜

「お!これは矢沢永吉じゃないですか!」

上戸さんは、「個人タクシージャズ研究会」というものにも参加していると事前に伺っていたので、てっきり車内で流れるのはジャズがメインだと思っていただけに意表を突かれた。なつかしい。

そういえば、学生時代はドライブしながらよく音楽を聴いたものだった。家に着いてもまだ続きを聴いていたくて、家の周りを用もなくグルグル走った。家のラジカセと違って車の方がスピーカーが4コあって快適な音響空間だった。

「お客さんでも、着いてもまだ乗っていたいとおっしゃるかたがたまにいますね。」

お気に入りの曲を集めてドライブ用のテープを作るのも好きだった。作っているうちに、だんだん意表を突いた曲を入れたくなり、そのためだけにラジオ体操のCDを買って来たりもした。尺八のCDも買ってしまったし、津軽三味線のCDも持ってる。意外にも深夜のドライブには尺八が合っていたし、早朝はラジオ体操の音楽がすがすがしい。

♪中央フリーウェイ〜

「おお!これは荒井由美じゃないですか!」

私の地元は茨城なのだが、これを聞くとよく中央道まで走りに行きたくなったものだ。でもたいていは「常磐フリーウェイ」の替え歌を歌って帰ってくるんだけど。。

(音楽は、いろいろな思い出を甦らせてくれます。)


夕焼け空をバックに1枚、と思って撮ったら予想以上の美しさに。
(取材中ということで、非営業のランプが点いてます。)

ついでに、せっかくの機会なので、
タクシー運転手という職業について、私が日頃抱いていた疑問をたずねてみた。

1) タクシー運転手はいつ眠るのか?

「今は、朝8時から昼2時まで寝てます。」
上戸さんは深夜型のタクシードライバーで、朝7時まで営業して、昼間寝るという。もちろん、個人タクシーだから、そうしなければならないというルールはなく、人それぞれ。

「ちなみに、タクシー会社に勤めていた頃は、朝5時〜8時の間に出勤して、それから21時間ぶっ通しで働いてました。その代わり翌日は丸1日休みです。」
タクシー会社の場合、1台を二人で共有する。人間は1日交代で、車は毎日働く。

しかしそれにしても、21時間連続って…。
途中で休憩を挟むとはいえ、どうやって生活リズムを作ればいいのかイメージが湧かない。。


タクシー運転手はサイボーグ

話を聞いた限りでは、個人タクシーの方が断然楽そうに聞こえる。ならば…

2) どうしてみんな個人タクシーにならないのか?

「タクシー会社に10年以上連続勤務しないと、個人タクシーになる権利が得られないんですよ。プロ野球のFA権?あ、そうですね。そんな感じです。」
さらに、 試験に合格しなければならない。これは40問の○×式の筆記試験。法令と地理とあって、5年間無事故の人は地理は免除になるのだとか。

が、こういう制度になったのもつい最近のことで、ちょっと前までは個人タクシーの営業権の数が決まっており、誰かが辞めて空きができないと権利を得られない、非常に狭き門だった。(ということで、最近個人タクシーの数が急増している。)

「私だったら、どんなタクシーをやろう?」

レッスン英会話タクシー?
すごく笑えるギャグタクシー?
とにかく恐ろしい恐怖タクシー?
迫力満点ビッグ・サンダー・マウンテン・タクシー?

なんてことを、つい想像してしまうくらい、ミュージックタクシーは独創性とサービス精神に満ち溢れていた。
世の中のタクシー全部がこんなだったらいいのに。

「次はプジョーでやろうかと思ってます。」

MUSIC TAXI (上戸(雅)タクシー)
長崎県長崎市東山手町
090-6299-3536
(本文にも書いてますが、AM8:00〜PM2:00は睡眠タイムだそうです。)

ホームページ:https://www3.cncm.ne.jp/%7Emartin45/


 

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