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コネタ298
 
全国屈指の骨董市「東寺の弘法市」探検レポート

京都といえば東寺の五重塔。

ここ東寺では月に一度、全国屈指の規模と言われる大骨董市が催される。数百もの業者が境内にひしめき合い、訪れる客も数十万人におよぶとのこと。

地元では「弘法さん」と呼ばれるこの骨董市。掘り出し物が多いというので根強いファンが多いらしいが、ぼく自身は今まで一度も行ったことがない。人混みが苦手だからである。

だが、長年京都に住んでいながら、一度も弘法さんに足を運ぶことなく生涯を終えるというのは少しさみしいのではないか。

…とまァ、風邪がこじれたり歯が折れたりと個人的災難続きの昨今、このような気弱なことを考えてしまったワケでありまして。

そこで今回は、まだ命の灯火が消えないうちに、東寺の弘法市を見て回っておくことに決めたのでした。

(text by ステッグマイヤー名倉

東本願寺経由でたどり着いた東寺の入口。嬉しさもひとしおだ。

いきなり場所を間違えながらの取材スタート

実はのっけから思い違いをしていて、全然ちがう場所にある東本願寺に行ってしまったのでした。

もちろん骨董市の「こ」の字も見当たらず、茫然としていたらふと自分の勘違いに気づいたという次第。

ずっと京都で暮らしているくせにこの体たらく。恥を忍んで本願寺の参拝客に訊いてみる。

「あのー、東寺ってどこにあるんでしょう…」

こういうときはもちろん関東弁である。京都に来るのは初めてなんです、てな表情をして。


「精力大爆発」ですか。

掘り出し物を求めて

弘法大師ゆかりの市場だけに、きっと仏教系の古書や骨董品などが多いんだろうなァ。

…と踏んでいたのだが、予想は大きく裏切られた。露店の品々を見渡すと、「精力大爆発」のにんにくグッズを筆頭として、にせヴィトンの靴下、ガンダムのフィギュア etc, etc...。

あまりにも節操がなくてワクワクしてくる。弘法大師は自分の名前が冠されたこの市場を、どんな気持ちで見ているんだろう。

ルイヴィトンもとうとう靴下業界に参戦!? OLのマストアイテムですな。
「起動戦士ガンダム〜木箱の上の戦争」。でも雰囲気は妙にマッチしている。

装身具をお探しですか?

パンクの方々の姿も

ここの骨董市は朝6時くらいからやっているらしく、今回もかなり早起きして駆けつけたのだった(といっても9時くらいだけど)。

なのに先客のなかには、たいそう立派なモヒカン姿の方々が。近頃ではパンクの方々にも早起きの習慣が浸透しているんだろうか。いいことである。

ちなみにパンクの方々は鋲や釘、金づちなどを物色しておられました。装身具をお探しなんでしょうかねえ。


中古カメラと同等の扱い。

覗くと楽しいミッキーグッズ

中古カメラに混じって、ミッキーのスコープが売られていた。なにかと思って店員(ガイジン)に訊いてみたところ、流暢な日本語が返ってきた。

「スコープを覗くと漫画見えるね。その漫画見ながら、自分でストーリーを考えて楽しむ。さまざまのイマジネーションで楽しむ。いいよコレ!」

で、さっそく覗かせてもらったのが左下の写真。手に付いた妙な虫にビックリしている男の図である。…このストーリーを自分で考えろというのか。

というわけで、無い知恵をふりしぼって考えてみたストーリーを写真下に書いておきます。


『長寿虫に噛まれた男』
長年勤めた会社を突然リストラされた徹郎さん(42歳)。
妻子にも逃げられた彼に残されたのはサラ金の借金1500万円のみでした。
そろそろ自殺しようかと考えていたある日、彼の手を一匹の虫が噛みました。
「うわっ、長寿虫だっ!!」
そうです、この虫に噛まれた人は絶対に120歳まで生きるのです。
徹郎さんはますますションボリしました。
この少女も「長寿虫」を脳裏に思い描いているのだろうか…。

500円の安箸にも笑顔で名前を入れてくれる。

ネーム入れ の無料サービス!

傍らのお箸屋さんでは、買った箸に無料でネームを入れるサービスが行われていた。どんな箸でもOKだという。

さっそく彫ってもらおうと箸を購入したのだが、「ステッグマイヤー名倉」は少々長すぎて申し訳ない。そこで、もう少し簡潔で似たような名前を…と考えた末、「スメグマ名倉」と入れてもらうことにした。

「すみません、スメグマ名倉でお願いします」
「へ? スエウマ? スエグマ?」
「ス・メ・グ・マ、です!」
「この紙に書いてくれるかなァ」

何も知らないおじさん、記入した紙を見ると「ふーん、スメグマね。スメグマ、スメグマ〜」と何度もつぶやきながら作業しておられました。

心底申し訳ない気分になったけれど、さすがはプロ。入れられたネームは金箔入りで完璧な仕上がりだった。

「ふーん、スメグマね。スメグマ、スメグマ〜っと」
燦然と輝くネーム箸。

「ねえ、お母さん、お母さん!」…惨事の予感。

空気が凍てついた瞬間

エロ石像(左写真)を見つけたのでパシャパシャ写真を撮っていたところ。

ぼくにつられてか、隣にいたガキ(幼稚園くらい)も石像に興味を示しはじめた。そしてとうとう、母親に質問してしまったのでした。

「お母さん、お母さん。この人ら、なんでくっついてるん?」

凍りついたお母さん、間髪入れずに

「そんなもん知らんわな! さっさと来んと迷子になるえ!」

たしかに「何故くっつく」のかはぼくにもよく分からない。お母さん、ご名答である。


つるし柿つるしてェ!!

その他いろんなモノたち

とにかく節操なくいろんなモノが売られているのがここ骨董市の特徴でありまして。

ふと横を見れば「つるし柿」。いいなあ、ぼくもつるしてみたい。

ちなみにこの柿、意外にも若いお兄さんたちが購入してました。さてはナンパ目的か。「オレ、部屋でつるし柿やってるんだ。見に来ない?」なんてって。

焼印ショップもなぜか大人気だった。用途はなくても、現物を見るとなぜか欲しくなる不思議な一品(あやうく買いそうになりました)。

しかし自分の苗字の焼印、いったい何に使えばいいのか。ノートパソコンのカバーにでも刻んでおくか。

焼印屋に群がる人々。
あなたの名前入り「牛肉のたたき」だってジュージュー作れますぞ。一家に一個、必需品!!

美味しそうなキャベツ焼き。というか、キャベツの体積ってこんなに縮むのか。

…というわけで、東寺の骨董市。おおよその雰囲気は分かっていただけたでしょうか。

ほかにも、お好み焼きやビールなどの屋台も充実してるので、お祭り気分でブラブラしてみるのも一興です。京都にお越しの際には是非、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

ちなみにビールは境内で買うと高いので、目の前のコンビニであらかじめ購入しておくことを強くお薦めいたします。

東寺の弘法市は毎月21日に開催されます。
時刻はだいたい朝6時頃〜夕方6時頃まで。


 

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