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コネタ


コネタ308
 
ハードコアひも道

ここでひとつ、とっておきのおもしろい話をしたいと思います。

昔々あるところに、一匹の犬が飼われていました。ある時、通 りすがりの旅芸人がその犬をみてこういいました。「この犬は顔も白けりゃ尾も白い!!」

ほら、しろかったでしょう?

アハハハヒー、冗談ですよ。この後を読んでもらえれば分かると思いますが、冗談でもいわないとやってられませんからね。それでは今からとっておきの話をさせて頂きます。

(text by 宮崎晋平



ハードコアひも道。

そんな言葉を確かに感じさせてくれるお店が、浅草橋にある。
看板には大きく「紐」の文字が踊り、そこからはひもに対する情熱と、老舗としての貫禄が同時に伝わってきて、見る者の心をがっちりと掴んで放さない、そんな魅力に溢れている。
きっとこのお店にはありとあらゆる種類のひもに溢れ、ひもに対する認識を新しく変えてくれるような、そんな素敵なサムシングに満ちているに違いない。
いつもなら電話で取材の許可を取ってから赴くのだが、今回は、直接お店に取材を申し込んでみることにした。



軒下にもひも。
ワゴンにもひもだ。

めくるめくひもの世界。

そんなフレーズを前に、意気揚々と店内にお邪魔させて頂く。
すると、60歳を過ぎたくらいの初老の男性が、「はい! どんなひもをお探しでしょう!?」と高らかに声をかけてきた。そこで、取材したい旨を告げると、その男性が突如激昂して怒り始めた!!

「うちはひも屋だからインターネットなんて関係ないよ! 看板見てくれよ、ひもって書いてあるから。ひもって分からないのか!? ひもが何種類あるかって? そんなのみりゃ分かるだろう、あれもこれも全部ひもだよ!! ひも売ってるんだから。」

うへぇ、ひも屋って超恐い……。全然ひもの世界なんてめくるめかなったし、いきなり怒鳴り散らされた。その怒声の勢いは、思わず身体を反らしてしまった程だ。

なんで怒られたのかイマイチ釈然としないまま、とりあえず引き上げることにした。


ひものネクストレベル。

今回の取材は完璧に失敗だった……。そんなことを考えながら、浅草橋付近をうろつきまわる。浅草橋一帯は問屋などが多いため、なにか違うネタが見つかるかもしれない。

そんな、紐にもすがりたい気分で歩いていると、一軒のテナントが目に留まった。外のワゴンにはひも。ドアにはカラフルなひもの見本表が掲げてあり、中ではパートとおぼしきご婦人達が、なにか必死に作業している。
間違いない、これはひも屋だ!!  さっきのお店をひも界のオールドスクールとするなら、こちらはさしずめひも業界にキラ星のごとく現れたニュースクールだ。早速外で作業をしていた男性に、話を訊かせてもらうことにした。

すると、なんでもここはリボンやゴムひもなどをメインに取り扱っていて、アパレル関係にひもを卸しているお店らしい。種類は色違い、素材違いも含めると膨大な数に及び、お話を訊かせてくれた方も具体的な数字までは把握していないようであった。


新しいひも屋。小売りはしていないそうです。


ワゴンにあったひもの端切れを漁っていると……。
なんか金色のひもが出てきた!!

めくるめくひもの世界、アゲイン。

とりあえず、ここでは上の金色のひもを買って店を後にした。違う店だが、ひもに関する取材も出来た。これでもう今回の取材は終わりにしてしまおうかともちょっと考えたのだが、ここで、筆者は妙案を思いついた(毎週思いついているけど)。

この金色のひもをはじめのひも屋さんに持っていき、ひも好きをアピールするのだ。そうすれば、ひもに対する情熱を共有することができ、恐いおじさんも心を開いてくれるかもしれない。よし、さっきのお店にもう一度行ってみよう。

暮れかけた師走の街を、ひもを片手に小走りで急ぐ。通行人の「あの人どうかしちゃったのかしら?」的な視線を浴びながら、最初のひも屋に無事にたどり着くことができた。緊張しながら、ひもを片手に店内にはいる。すると……!?

「なんなんだあんたは。取材なんてどこか別の大きいところでやればいいだろう。うちは力がないからそういうのはやってないんだよ!!」
「力がないっていうのは?」
「…………この辺には大きいところが沢山あるから。そういうところにいってやってくれ!! うちは関係ないんだからさ。」

今回は激昂こそされなかったが、なかば呆れられているようだ。しかし、口調も荒く怒声に近いものがある。怒られていることにはかわりないようだ。取材も拒否の姿勢を頑なに崩そうとしないし、これ以上の続行は不可能と判断することとなった。


筆者(左)とお店のご主人。店内の棚には天井までうずたかくひもが並べられている。

しかし、取材時は気がつかなったが、最後の発言をこうやって文字に起こしてみると、なんだか寂しいような申し訳ないような、不思議な感情がわき上がってきた。

確かにひもを置いてある大きな雑貨店などに行けば、簡単に話が聞けるかもしれない。 でもきっと、そこには筆者の胸をときめかせた、めくるめくひもの世界の存在には、おそらく気付かなかったのではないか。そんな風に思う。

「ひも」というと間口は狭そうだが、様々な種類があり、あらゆるニーズに対応していることが、店内の様子から分かった。そのひもに対する思いを、大手ではなく老舗のひも屋さんの口から訊いてみたかった。恐らく、そこには長年の経験を通 して会得した智恵が、宿っているような気がするから。

そして、便利さを追求する世界の中で、なにか大切なものが殺されようとしている、そして、自分もまたその加害者のひとりなのかもしれない、そんなことを今書きながら思いついたので、シメの言葉に代えさせて頂こう(もちろん思いついただけなので、これといって深い意味はない)。

以上。


今回購入した金色のひもを、抽選で1名様にプレゼントします。使用目的を明記の上、皆様奮ってご応募ください。


→応募はここから
・しめきり:2004年12月20日13:00
・当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます

いつかなにかの役に立つかも。


 

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