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コネタ


コネタ354
 
世界にひとつの「オリジナルちょうちん」作り

以前から提灯(ちょうちん)が気になっていた。自分でもよく分からないけれど、なんかイイなぁという感覚。

そもそも語感がいい。ちょうちん。ああ、なんて平和な響きだろう。ちょうちんさえ付ければ、たいていの事が丸くおさまるんではないか。

 ・ちょうちんロック
 ・ゴスロリちょうちん
 ・ちょうちん自殺
 ・デスちょうちん

どれもこれも、なんとも牧歌的で心休まるじゃないか!! おまけにあの、ビヨーンと垂れ下がった丸くて長い形状も、オレの「まぬけ魂」をギンギン刺激してきやがるんだよ!!

そこで今回 は、京都の街中にある提灯屋に出向いて、ちょうちん作りの模様を取材してまいりました。世界に一つの「オリジナルちょうちん」を眼前で作ってもらえ るこの喜び。

果たして、どんなちょうちんができるんでしょうか。

(text by ステッグマイヤー名倉

「張り子」さん全景

お店にうかがって「こういう感じの提灯を作ってもらいたいんですけど〜」と説明すると、まず案内されたのがここ「張り子」さんの部屋だった。

提灯作りは分業体制になっていて、「張り子」(骨組みを作る)と「書き子」(字や絵を描く)はそれぞれ個別に作業しているんだとか。

ちなみに「張り子」のご主人に話をうかがってみたところ、この仕事はやり始めてまだ10年くらいとのこと。それまでは呉服の染め職人をしていたものの、あまりの不況でどうにもならず、この仕事に転向してきたらしい。

のっけからディープな展開になってしまい、動揺しながらの取材スタートとなる。


木型組みスタート!!

1.木型を組む

ちょうちん作りの第一歩は、注文に応じた大きさの木型を組むことから始まる。

八枚の木型を円状に組んで固定して、周りにちょうちんを組んでいくわけである。

その際、木型とちょうちんが接着してしまわないよう、木の表面にオイルを塗るのが「ちょっとしたコツ」らしい。パチンコ玉に浸してあるオイルを布に取り、表面に薄く塗っていく。

パチンコ玉をどうやって入手したのか尋ねると、おばさんは照れながら「主人がね…パチンコ屋で出してきたの」と。余計なコト訊いてすみませんでした。

八枚の木型を円状に組む
オイル入れ。パチンコ屋で入手ですか…

木型に竹ひごを巻いていく

2.木型に「骨掛け」する

木型を組み終えたら、次は「骨掛け」工程である。

要は周りに竹ひごを巻いていくのだが、「この力のかけ具合が難しいんですよ」とはご主人の弁。あまり強く掛けると八角形のちょうちんになってしまうし、逆に張りが弱すぎるとヨボヨボのしまりのないちょうちんになってしまうんだとか。

…このように話すご主人の表情は、どこか得意げで嬉しそうだった。ぼくはこういう「得意げな顔」を見るのが大好きである。


上下ひっくり返して再び巻く

3.骨組みに「糸掛け」する

竹ひごを全て巻いたら、今度は「糸掛け」作業を行う。

単に竹ひごを巻いただけだと、上下方向に際限なく伸びてしまうので、「これ以上伸びちゃダメですよ」というリミットを縦糸で設定するわけである。

で、さすが職人さんだけあって、目にも止まらぬスピードで糸が掛けてられていくわけでありますが。

カメラを近づけると、ご主人はちゃんと超スローモーションで作業してくださるのでした。うわー、いい人だ。

まるで映画のクライマックスシーンのようなスローモーションで作業する職人さん。かなり間抜けな光景だったが、こみあげる笑いをなんとか押さえこむ。ありがとうございます!!

「糸掛け」作業
カメラを近づけると超スローモーションで作業してくださいました。さながら映画のクライマックスシーン。

骨組みに糊を塗っていく

4.骨組みに「紙張り」する

スローモーションによる「感動の糸掛けシーン」は無事に終了。

するとご主人、おもむろに刷毛を取りだし、手際よく糊を塗りはじめた。そしてそのまま、和紙を貼りつける作業へと突入である。

要所ごとに解説が入る。

「上のカーブの部分に貼るのが結構難しくてね」
「余った紙を切るときは骨を傷つけないよう気を使いますね」

一人前になるまで何年くらいかかるのか尋ねてみたところ、「うーん、忘れたね」との答えが返ってきました。

上から和紙を張る
余った紙をナイフで削ぎ落としながら

「乾燥室」にて14分間

5.乾かす

和紙を全て張ったら、これを乾燥させて「張り工程」の終了である。

で、どのくらい乾燥させるのかご主人にうかがってみたところ。

「えーと7分+7分で…14分!」

あ、あのう、それってどういう足し算なんでしょう!? 皆目分からずパニックに陥るが、もしも深淵に触れるようなことになってもマズいので、とりあえずは黙っておくことに。

早く14分経ちますように。


カミソリは毎回砥いで使う

6.乾かしてる間にウンチク話を

されど14分。なかなか長いものである。

その間もご主人は別の仕事をしておられたが、ぼくに気を遣ってか、いろいろとウンチク話を聞かせてくださったのだった。

まずは、和紙を切るカミソリ。いろいろ試したけれど、一番いいのは「貝印のノンコーティング・タイプ」とのこと。こいつを毎回砥いで使うんだとか。

お次は、木型を載せる台座。ドレッシングの赤キャップを芯軸にかぶせると非常に具合がいいそうで(よく回転する)、「これも独自の工夫ですわ!」とニコニコ顔のご主人。

せっかくなので、ご主人の手を見せてもらう。爪が伸びてるのは、仕事とはとくに関係なく、「切るのが面倒だから」だそうです。

ご主人自慢の赤キャップ(ドレッシングのふた)
職人さんの手。爪は短くてもいいそうです。

畳めるよう、一本一本にクセを付けていく。面倒くさそう……。

7.蛇腹の折り癖をつける

そうこうするうちに14分経過。

最後に、ちょうちんの伸縮する部分に「折り癖」をつける作業が待っていた。これを一本一本丁寧にやらないと、うまく折り畳めないんだそうで。

ちょうちん一個あたり50本以上の折り目がある。こんなちょうちんを、多い日だと40〜50個作っているという。

ってことは、一日に2500本の「折り癖」つけですか。それを毎日。ひいー。


「書き子」さん登場!

8.「文字書き」と「絵付け」

ちょうちんのボディが完成すれば、あとは「書き」工程を残すのみ。

ここでは注文に応じて、文字や絵柄などを描くことになる。

ぼくが今回注文したのは、「ラ・キュイジーヌ名倉」赤ちょうちん。将来的にもしフランス料理屋など開くことになった場合、こういうのがあれば重宝すると思ったからである。

何も言わずに筆を進め始め、ものの数分で書き終えた「書き子」さん。さすが達筆です。


墨の屑をスリコギで挽き溶かした汁
「撮ってもいいですか?」
「はァ…」(露骨にイヤそうな顔)

今度は「塗り子」さん登場

文字を書き終わったら、次は背景に朱を入れる作業である。

作業はすべて分業制になっているようで、これまた別の人(塗り子さん)が登場したのでありました。それぞれの道のプロがいるんでありましょう。

塗り終わったら店内で乾燥させる。「3時間くらいたったら来てください」。そんなにかかるのか…。

あと一息!!
店内で当然のように乾かされる

3時間後。ついに完成!!

9.上枠と下枠を付けて完成

3時間後、再び店にうかがう。

最後に上枠と下枠(黒いやつ)を打ち付けて、今度こそ本当に完成である。

やったー。ついに念願の赤ちょうちんが自分のモノに!! 思わず頬がゆるむこの感覚。

ちなみに、御代のほうは2940円でした。

領収書。お金は返ってこないけど。

ちょうちんの相場料金を知らないので、これが安いのか高いのかよく分からない。

でも、これだけ手間のかかった手作り製品なら、納得のお値段ではある。

領収書なんてもらっても取材費は返ってこないのだが、タダなら領収書でももらってしまう貧乏性。


通りがかった居酒屋にこっそりかけてみる

10.実際にぶらさげてみる

赤ちょうちん片手にニコニコしながら帰宅する。その道すがら。

もし自分が店を持ったらどんな風にあるんだろうと思い、たまたま通りがかった店の軒先にこっそりかけさせてもらったのが左の写真であります。

おお、それっぽいじゃないですか!!

しばらくの間、うっとりと見入ってしまった小生でありました。いいなァ、赤ちょうちん。買ってよかった。

「ん?」

マイちょうちんの様子を遠巻きに見守っていたところ。

道行く通行人がみんな、「ん?」という表情で注目していくので嬉しさもひとしおだった。きっと「新しいフレンチレストランか…」「今度行ってみよう」などと思っておられるのであろう。

というわけで、皆様もよければ是非、自分のちょうちんを作ってみてください。便利ですよー!!

取材協力:奥川提灯店
  京都市下京区柳馬場通綾小路下る永原町146

 

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