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コネタ


コネタ435
 
廃油で情熱的に石鹸を作りました

使い終わった天ぷら油を有効利用する方法として、石鹸作りがブームになって幾星霜。
石鹸作りは廃油の利用という目的だけではなく、自分だけのオリジナル石鹸、贈り物石鹸として新品の高級素材を使い、作るのが趣味という人も多いらしい。

しかし私の目的は違う。
油から、石鹸ができる。
高校の時に化学で習ったことが、そのまま家庭で実験できる!

大好きだった有機化学の実地体験として、石鹸を作りました。

佐倉 美穂


化学の授業はいつも興奮してました

化学で元素記号を習い、その完璧さ、法則と、あるべきものがある世界に開眼し、感動した中学時代を経て、私は化学の世界へ羽ばたいた。
だって陽子の数で元素が並んでるんですよ。しかもそれがその数どおりに結合したりするんですよ。

それ以降、化学の授業が楽しくて仕方がなかった。
天ぷら油のCMを見ても「不飽和脂肪酸なのね!」なんて情熱を抱いていた。

油は炭素が長く連なっていて、水をはじくようにできているが、その炭素の端に水に溶ける元素が結合すれば油にも水にも溶けるようになるという。イッツソーファンタスティック!

今回の水に溶ける元素はナトリウム。
苛性ソーダとも言われる水酸化ナトリウムを油に混ぜるだけでその反応がおこるのだ。
なんてお手軽有機化学実験なのでしょう。
しかも生成物は生活に使える石鹸。こりゃあやってみるしかないでしょう。

前置きが長くなりましたが、こうしてこの実験にとりかかった訳です。

 

まずは水酸化ナトリウム

まず水酸化ナトリウムを水に溶かす。
危ないのでゴム手袋、眼鏡やサングラスをし、換気をよくして扱いましょう、と参考にしたサイトに書いてあったが、うっかり蒸気を吸ってしまい、喉が張り付きそうなヤバい臭いに「劇薬はダテじゃないのね」と感じ入ってみる。

水に入れただけで過激に反応し、高温になるので湯煎ならぬ水煎をしつつ穏やかに溶かす。

劇薬ですから
扱いに注意!

 

廃油と合体

完全に溶けたら廃油に注ぎ入れ、攪拌する。
最初は下に水酸化ナトリウムの層、上に油の層ができるが、攪拌してゆくうちにどんどん色が油色から乳白色になってゆく。


油も油差しも使い古し
油とNaOH、衝撃的な出会い

混ぜている途中、そのベージュというかクリーム色が、ミルクたっぷりのカフェオレや作り途中のプリンのような気がしてきて美味しそうに見えてくる。舐めてしまいそうだ。
でも臭いは油。そこで我に返る。

その色の変化をご覧あれ。



今!今ケン化が起こっているのね!と感慨深く色の変化を見つめる


攪拌している液体の表面に筋が書ける程のまったり具合になったら型に流し入れる。
時間が経つにつれ色が薄くなり、最初の油の琥珀色が嘘のように白っsぽくなる。
翌日にはカマンベールの中身くらいの柔らかさになっていた。

型に入れたものは部屋に静置していたのだが、あやうくペットのフェレットが足跡を付けそうになる。危ない危ない。


柔らかいコンクリに猫が足跡をつけるかのごとく

 

石鹸のできあがり

型に流し込んで2週間後、ようやく型から出してみた。
おお、かわいいナリはしているけれども、これはしっかり石鹸だ。
堅くて、でもしっとりと冷たく、ずっと触っていると手がぬるぬるしてくる。…そして油くさい。


一見ホワイトチョコ

写真ではわかりにくいが表面に見える黒いつぶ。
痩身石鹸の海藻でもなく、美肌石鹸の炭でもなく、これは、カキフライの衣の残骸だ。トンカツかもしれない。

大量にできたので、残りはジュースのパックで固まらせた。
どっしりとした巨大石鹸のできあがりだ。


野菜ジュースを毎日飲んでます
手のひらよりでかい石鹸を見たことがありますか

これをちょうどいい大きさに切り分けて使う。
どうせだからちょっとかわいくしてみよう。というわけでZくんだ。ひよこも彫ってみよう。


石鹸が彫刻向き素材だと初めて知る
黒い粒が先日の献立を思い出させる

もう少し彫刻を施して………



というわけで、国士無双です。
孔雀は難しいので、かわりにひよこ。ピンズの1はZくんで。

麻雀は小学生の頃に家族でやって以来ご無沙汰なのですが、このパイを使っての麻雀もやりたくないですね。手が油臭くなりそうだし、ぬるぬるしてきますから。


ああ、とうとう炭素とナトリウムが結合するだけで、油が水にも溶けるようになるというケン化反応を体験しました。
机上の理論を台所で実地。
やはり実験はおもしろいのです。実用性のあるものができあがるならなおさら。
うっとりと満足なのです。

Zくん、泡立ちはいまいち

 

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