容器内を真空にして、食品の鮮度を保つ装置があるという。

おやこんなーところに真空が。

数年前のＣＭのフレーズが頭をよぎり、身近な真空ワールドへと誘われた。

ウェルカム非現実的世界。その名も真空。遊んじゃうぞ。

（佐倉 美穂）

沸騰する？

真空とは空気の全くない状態だと思われがちだが、大気よりも空気が薄い状態を指すこともある。
なので、この容器は後者の状態をつくるものなのだが、真空装置と名乗っている。激しい低気圧といったところか。

低気圧で思いつくことの一つに水の沸点が下がるというのがある。
高山に登ってカップラーメンを作ろうとしても、低い温度で沸騰してしまうので、硬くぬるくできあがってしまうらしい。

ではぬるいお湯を一気に山頂に持っていけば、沸騰してしまうのでは？

こんな疑問も即解決。
だって私の手には真空装置があるのだから。

80℃程のお湯を入れたコップを容器に入れ、ポンプで真空にする。

と、どうだ！コップの底から泡がぼこぼこと沸き上がって来るではないか。まさに沸騰。真空マジック。
このお湯ならまずいカップラーメンができること請け合いだ。

…それは止めておこう。

マシュマロはどうなる？

ホワイトデーの贈り物の代表になっていた時期もあったが、今はそのナリを潜めてマイナーなお菓子になりつつある彼らに今脚光を浴びせよう。

このふんわりとした優しいお菓子は、中に空気の泡をたくさん抱えてこの舌触りを保っている。
これを真空の中に入れたら？

ポンプで空気を吸い出すとともに、どんどん膨張するマシュマロ。大気に押さえつけられていたそれが、今解放されつつあるのだ。
めりめりとトトロの木が育つように膨らむマシュマロ。きっと極上のさわり心地だろう。こんな枕で眠りたい。

しかし容器の蓋を開けたらみるみるうちにしぼんでしまった。しょぼぼぼーん、という効果音が聞こえてきそうな勢いだった。
しょぼぼぼーん。

音はどう聞こえる？

音は空気の振動で伝わる。では、全く空気の無い世界には音は存在しないのだろうか？
知りたい、試してみたい。人の知的好奇心は止むことなく、次から次へと生まれる。そして人は実験を通して理論を現象として体験するのだ。

ちょっと大きなこと言い過ぎました。

空気の無い世界で音を聞いてみたいものの、そんなところでは死んでしまいますので、この容器を使って実験してみます。

音が出る装置の代表、携帯電話。これを容器に入れ、音を鳴らしつつ減圧し、変化を聞いてみる。

シュポシュポとポンプを動かし、もう空気抜けない！という手応えになった頃、音は確かに変化した。
音量は下がり、高い音になった。
低い音が聞こえなくなったのだろうか。

明らかに音も真空内で変化しますよ！

鮮度を保つ？

この容器はもともと食品の鮮度を落とさないのが目的のものだ。
では、どのくらい落とさないのか試してみよう。

取りいだしたるは、餅。
これを
・むき出し
・タッパー
・真空容器
の状態で室温に一週間おいてみた。

実験を開始した翌日、変化は顕著に表れた。むき出しのものは表面がひび割れ、もうダメなの、という声が聞こえそうだ。
なにしろ戸棚の奥にしまってあった賞味期限が去年の餅だ。封を開け、乾燥した室内への移動という劇的な環境の変化がもち肌を荒らしてしまったようだ。冬の保湿は重要なのね、と餅に教わる。
毎日目の回りにクリーム塗っておいてよかった。