いつからだろう、漫画に出てくる肉を「あの肉」と呼ぶようになったのは。
単純な線で表されたその肉感は、あまたの子供らにその食感まで想起させるに十分であり、永く憧れの食べ物として記憶せられることとなる。
ある肉屋さんなど、その名の通りの品を作って大ヒット。「骨付き」の「あれ」だ。
しかし、あの肉といえば、もうひとつあるだろう、「あれ」が。私が再現しよう。
(乙幡 啓子)
中央線沿線の某肉屋さんで再現されているのは、下のような肉パターンだったと思う。
骨の周りにソーセージ的な練り物を貼り付け大きくしていったものだ。ギャートルズ(古い)でうまそうにかじりつかれ、引きちぎられるシーンが懐かしい。
「あの肉」といえば第一にこのタイプだと思うが、皆さんお忘れではございませんか。「ビフテキ」状のあれを。
家にある藤子系漫画や戦車系漫画などひっくり返してみたが、「探し始めるといなくなる」の法則で、参考となるあれの絵図は見つけられなかった。仕方なく記憶をたどって上のような絵を描いた。
この厚み。何の肉だかわからない脂の入り具合。「ビーフステーキ」ではなく、まさに「ビフテキ」というたたずまい。でもどういうわけだかうまそうだ。
今夜はこれを、漫画の通りに、私の手で再現してみたい。
「あの肉1号」同様、こっちもソーセージで成型。ここまではいいのだが、脂をさてどう表現したらいいものか。
無理やりラードを塗り込めたら次は側面だ。(漫画での)本物は何か巻いてあるように見える。ステーキに巻くといったらあれしかない、ベーコンだ。
えー、できました。あれ。
・・・。
漫画の登場人物は、これらの肉を引っ張りながら食いちぎったりしているものだ。そのときゴムのように伸びる様がこれまたうまそうに見えるのだ。
これ絶対伸びない。
まあ、それっぽくは仕上がったな、と思ったところで、さて焼いてみるか。
ソーセージをばらしたときに、もっとつなぎ的なものを入れるべきだったと反省。基本的なところを押さえられず、商品化までの道のり遠し。
残った肉はカレーに入れて食べた。「あの肉ビフテキ版」の末路はカレーの具だった。