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コネタ


コネタ480
 
カドケシを自作する

カドケシの出現には驚いた。1つの消しゴムに28箇所のカドがあるというあの大発明消しゴムだ。

“隣の席の子に消しゴム貸したらカド使われて心で泣いた”

小学校エピソードの定番として語られるこの悲劇もカドケシのある今はもう伝説でしかない。

あれほどカドに固執しながら、どうして小学校の時に考えつかなかったんだろう。“カドのいっぱいある消しゴムを作ろう”って。カドケシというすばらしい発想へのリスペクトと嫉妬を込めて、今回は普通の消しゴムからカドケシを自作します。

(text by 古賀 及子

カドケシを改めて眺める


すげえすげえとは思っていたが、社会人になってから消しゴムを使っていないためカドケシも実際に持っているわけではないのだった。

そんなわけで、久しぶりに消しゴム売り場へ。懐かしいメーカー品がずらりだ。そうそう、私が学生時代使っていたのはコレでした。

やっぱりカドは魅力なのだ

“いつもカドで消す感触”。カドが消しゴムのキモであることはカドケシ以前からの共通意識だった。

はじめまして、カドケシ


そしてカドケシ、初購入。じっくり眺める。10個のキューブが連なってできたスタイリッシュなデザイン。それにしてもカドだ。カドがいっぱいだー。ああ、学生時代の自分にこのアイディアをリークしたい。

現在カドケシは1cm四方のキューブからなるレギュラーサイズと7mm四方のキューブからなるミニサイズの2種類が出ていた。

サイズは変わっても、キューブの数(つまりカドの数)はそのままという拡大縮小構造になってる。今回マネして作る私もこの基本形にのっとって作ることにした。

こいつらをカドケシ化してゆく!

用意したのはMONO(大)、MONO(小)、そして無謀かとも思われたがお祭り気分で版画用の消しゴム板、ハンケシ。こいつらを「10個のキューブからなる28個のカドを持つ」カドケシ仕様に変えていく。

まずはMONO(大)。餅のよう 削る部分を決定 彫るべし

彫る、彫る、彫る

カドケシは1つ1つのキューブが微妙なカーブでくっついている。彫る場合、四角いキューブ状に丸々くり抜いてしまうとバラバラになって10個の四角い消しゴムができるだけになってしまう。

微妙なカーブを残しながら掘り進む


慎重に慎重にだ。こんなに精神を統一する作業も最近ではめずらしい。なんだ、この神聖な気持ちは。これは仏像を彫るみたいな気分か。彫り物は人の気持ちをおだやかにする。

異様に時間がかかった。集中していたので気が付かなかったが、余裕で2時間弱が経っていた。普段集中力のない私だけにこれは本当驚きだ。精魂込めて消しゴムに命(カド)を吹き込みました!

どうでしょう!

自力でカドケシ作れたよ! ええと、写真が遠いでしょうか。いやー、近くで見るより遠目の方がいいですよ。夢があって。だって……

寄り写真。なんかイビツ? 

手彫りの味わいと言っていただけるとありがたいです。欲張って大きな消しゴムで作ったため、カッターの刃が上手いこと食い込まなかったのですよ。

カドケシ、すごいアイディアだと思ったけど、クラスでこれを黙々と作っている子がいたらちょっと距離を置きたい、そんな風情。

めげずにMONO(小)も作る。キューブの1辺が短いため、さっきよりもサクサク掘れた。

でもやっぱイビツ 

コクヨのカドケシがプロの料理人による料理であれば、この自作カドケシは週末の男の料理だ。荒々しい。しかし、そこには温もりが。料理でも消しゴムでも手作りには相応の良さがある。開き直って胸を張れ。

ケースに納める。さらにへんな味わいが

もうここいらでやめてもよかったのだが、せっかくなのでハンケシにもカドケシの波を寄せる。もちろん、同じ構造で。

すんごく薄く彫ることに ……つまり、版画?

板を薄くくり抜くような作業になったため、期せずして作業は版画を彫るようなことになっていた。さすが版画用消しゴム。

それにしても、私は何をやってるんだっけっか。カドの多い便利な消しゴム、カドケシを作るんだったよな。明らかにカドケシとしての用途を無視したカドケシの誕生である。

ざん。揃い踏み


こうして本品と並べると、さらに手作り品のあか抜けなさは一目瞭然である。が、大発明カドケシに、気のせいでも一矢報いた気分を味わうことが出来た。

最後に野外で模型用人形とともに記念撮影をしてこのコネタ記事を終わりたいと思います。

「これ、俺んち」
「へー、かっけーじゃん。新築?」


「これ、俺んち」
「……へー(穴蔵?)」

「これ、俺んち」
「……へー(遺跡?)」


ついしん

自作カドケシは削った消しゴム部分が無駄になってしまいもったいなかったです。お小遣いで消しゴムを買っている小学生、中学生諸君にはお勧めできません。カドケシ作りがまさかお金に余裕のある大人の遊びだとは。


 

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