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コネタ


コネタ506
 
じくじく流れ出るスライムを作る

 でろでろした正体不明の玩具・スライム。子供の頃にわけもわからず夢中になった方も多いのではないだろうか。

 しかし、夢中になったのも遠い昔。大人になるにつれてスライムとの距離は遠のいていく。

 スライムのことを忘れかけた大人になっていた自分。ところが今回、なんだか気になるスライム作りキットを発見。「じくじく流れ出るスライム」って書いてある。

 その語感はなんだろう。別に思い出さなくてもいいあの頃を思い出してスライムを作ってみました。

(text by 小野法師丸

●謎の物体・スライム再び

 子供の頃にわけのわからない魅力にひかれて遊んでいたスライム。もうスライムは卒業した大人になったつもりだったが、ある日科学実験の専門店で見つけたスライムはちょっと違っていた。



 「ゲルとスライムの化学」という商品名。個人的にはなんとなくでろでろと遊んでいたスライムだが、この製品ではあくまで科学的なアプローチでスライムに臨んでいるようだ。




 一番下のところに「小中学生がチャレンジできる高等化学実験」とあるのが大人の私としては気になるが、スライムにひかれる気持ちは小中学生に負けるつもりはない。

 中でも気になるのは「じくじくながれでるスライム」とある一節。

 なんだそれは。「じくじくながれでる」──初めて聞くような言い回し、その陰影のある語感はなんなんだ。



 キットの中身はこんな感じ。おもしろ半分で作る気分だったが、一気にケミカルな雰囲気が高ぶってくる。

 右の写真は同梱のかなり詳細な説明書の表紙。語尾に「!」を多用した高めのテンションは、これからスライムを作ろうとする者を鼓舞してくれる。ポジティブな気持ちでスライム作りができそうだ。




説明書を読みながら作業を進めていく。


『では、粘性があり、ゼラチン状の「架橋重合コロイド」を合成してみましょう。少し難しい表現ですが、独自のスライムを作ってみようということです。』


 スライムと向き合う姿勢を正されるような説明。「架橋重合コロイド」なんて言われてもわからない。「独自のスライム」と言い換えてくれているが、その言い回しも独特だ。



 説明書に言われるがままに材料を混合していく。ぷるんぷるんしてくるに連れて、子供の頃に遊んだ思い出がよみがえってくる。なんとなくでろでろさせているだけで、満たされていくような気持ちになったものだった。




 おお、このでろでろ具合。あの頃といっしょだ。これがじくじく流れ出るスライムなのだろうか。早速試してみよう。




 あれ……? 金ザルに入れてみたのだが、意外とぷるぷるしているようで流れ出てくるという感じではない。手に取って大きな視点で見ればまあ流れてるとも取れるが、もっとだらしのないスライムを期待していた者としては少々期待と違ったと言えるだろうか。

 じくじく流れ出るという語感にひかれて作ったスライムだったが、思った以上に腰が強かった。

 製品開発者のスライムを思う気持ちがこんなシズル感あふれる名前をつけたのだろうか。もちろん混合の仕方によってはじくじくいけることもあるのかもしれない。



 説明書には化学組成の模式図も載っていたりして、製作者側の本気が感じられる。ただ、個人的にはそういうことは忘れ、何も考えるなくでろでろさせていたい。

●大人ならではのスライムの楽しみ方

 じくじく流れ出るスライム。人それぞれにスライムを表わす言葉があっていい。今回の実践でわかったのは、当たり前だけれどつい見失いがちなそんなことだった。

 上の写真は別の材料を混ぜてできる「グーフィー・ゲル」と名づけられたもの。手触りこそ少し違うが、どうしようもない感じは変わることはない。

 これからも仕事でつらいことがあったときには、スライムをいじって心の中の折り合いをつけていきたいと思う。


 

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