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コネタ


コネタ593
 
空から落ちてきたもの
頂き物。

友達がうれしそうに何かを持ってやってきた。

「安藤さん、これ拾ったんです。あげます。」

見ると発泡スチロールの箱に「気象庁」と書かれている。なんでも外回りの仕事中に暇だったので海岸をぶらぶらしていたら落ちていたとのこと。

「なんか大切そうじゃないですか、これ。届けたらたぶん謝礼出ますよ。」

謝礼。

見るからにいらない臭のぷんぷんする物体だったのだが、その言葉につられてもらっておいた。

安藤 昌教

危険物ではないとのこと。

危険物ではありません

スチロール製の箱には気象庁気象観測器と書かれていた。危険物ではありません、とも。箱に貼られたラベルによると、これは上空の気象を測る装置らしい。気球に乗せて飛ばしたものが計測を終えて落ちてきたのだ。

箱にはつぶれた風船のようなものが付いていた。こいつ風船で飛んでいたのか。風船おじさんみたいだ。


確かにレーウィンゾンデと書かれている。

箱には「回収しますのでお電話下さい」と書かれている。早速記載の番号に電話をかけてみた。

「はい、気象台です」
「あの、気象観測器というものが落ちてきたのですが」
「・・・は」
「ええっと、スチロール製の箱です。風船が付いていました」
「ああ、レーウィンゾンデですね」

よく見ると箱には確かにレーウィンゾンデと書かれている。

「で、何か被害はありましたか」
「いえ、特に」
「そうですか、ありがとうございました。では燃えないゴミとして捨ててください」
「捨てていいんですか」
「ええ」
「回収しないのですか」
「もう計測は終わっていますので。捨てるのが面倒でしたら取りに伺いますが。」

謝礼どころか僕がもらったのは案の定ゴミだった。だけどせっかくなので少し話を伺った。以下、お話の内容から抜粋。


外側には熱伝対が突き出ていました。

レーウィンゾンデとは

・レーウィンゾンデは無人気象計測装置です
・気球に乗って高度約3万メートルまで上昇
・そこで温度とか気圧とか風向風速とか必要なデータを収集します
・全世界同時刻に一斉に飛ばしています
・計測が済んだ頃に落ちてきます
・沖縄は島なのでほとんどが海上に落ちますが、たまに住宅地に落ちることもあるようです


ぱかっと開けるとバッテリーと基盤が入ってました。

捨てる前にばらしてみてもいいですか、と聞くと
「ばらしてもいいですが、電池をつないで電波を発することはしない方がいいです」
「電波を発するとどうなるんですか」
「発しない方がいいと思います」

含みのある言い方に少し引っかかった。電波を発するとどうなるというのだろう、未来警察みたいな人たちが捕らえに来るとでもいうのか。

せっかくなのでばらしてみることに。

気象庁と書かれたラベルを剥がし、ぱかっとふたを開けると中にはなにやら基盤が入っていた。


見るからに電波発しそうです。

電波発せられず

基盤にはアンテナのようなものが付いていていかにも電波を発しそうだった。ちょっと詳しい人ならいじくることが出来るかもしれない。だけど僕にはどこに電池をつないでいいのかすらわからなかったし、全体的になんか汁が出てきていたのでこれ以上触りたくなかった。ということで残念ながら電波を発することは出来なかった。


袋に入れると一段とゴミっぽい。

やっぱりゴミでした

もらったものはやっぱりゴミだった。しかしこんなものが空を飛んでいたとは知らなかった。今回はたまたま拾われたたからいいものの、海とかに落ちたら誰にも拾われずにゴミになるだろう。環境に悪くないのか。それ以上に価値のあるデータを計測してくれていることを期待しつつ、レーウィンゾンデは次のゴミの日に捨てました。


 

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