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コネタ


コネタ615
 
沖縄でも名古屋料理が食べられる

名古屋取材から帰ってきて、あの独特の名古屋食はもう当分食べられないのだな、と思うと少し寂しくなっていた。そんな折、沖縄でも名古屋名物が食べられるお店があるとの情報を入手したではないか。それは見逃せないぞ、と思い独自で取材をして記事を書き、名古屋本にいれてくれるよう頼んだのだが、趣旨から外れるのでだめです、とのこと。まあそりゃあそうだ、ここ沖縄だしな。だけどみすみすボツにするのももったいないのでコネタとして紹介させていただきます。

安藤 昌教

沖縄の町に煌々と光る名古屋の文字。

不安を胸に入店

沖縄と名古屋とでは食文化がかなり異なる。味噌味、鶏肉の名古屋に対して、ここ沖縄は専ら塩味、豚肉だ。そんな沖縄で名古屋の味が受け入れられるのだろうか。同郷の身として不安を抱えながら噂のお店に入ると。

「へいいらっしゃいませーっ!」

満員なのだ。

すごいぞ、名古屋!アウェイでもその実力を発揮してくれていた。


おおお、名古屋の手羽先だがや。

完全に名古屋でした

メニューは沖縄メニューと名古屋メニューに分かれていた。そうか、やっぱり純粋に名古屋食だけではないのだ。なにはともあれ名古屋食の雄、手羽先を注文。僕はこれまでいろいろな土地で手羽先を注文してきたが、納得できる名古屋の味を出すお店にはほとんど出会ったことがなかった。しかもここは沖縄、かなり不安だった。

ところが運ばれてきた手羽先を見て驚いた。パリッとした揚がりといい、体に悪そうなほど胡椒を効かせた感じといい、これがまた見事に名古屋なのだ。他の土地ではなかなか再現できるものではないと思っていた。震える手を押さえつつ手羽先を名古屋流儀でさばいて一口食べてみる。

号泣でした。まさに見た目そのまま、名古屋の手羽先だったのだ。


手羽先と赤だし。ここは名古屋か。

親孝行から出来たお店

感動して若い店長、近藤さんにお話を伺った。

「店長、すごいですね、名古屋の手羽先でした。」
「ありがとうございます。だけどメニューはどれも沖縄の人の口に合うように微妙に改良しています。手羽先だって本場のはもうちょっとピリ辛でしょう。はじめはそのまま出していたのですが、お客さんにあまりにも辛い、と言われて改良しました。」

そういわれてみると確かに幾分マイルドになっている気もする。だけど根本に流れる名古屋のマインドはそのままだ。

近藤さんは1年ほど前に地元愛知から家族共々沖縄にやってきた。その理由を尋ねると少しはにかんだ笑顔を浮かべながら、名古屋弁の残るイントネーションで話してくれた。

「実はね、親父が話してるところを盗み聞きしてしまったんですよ。いつか沖縄に住みたいなあ、って。それならば、と僕が先にこっちにきて名古屋の味が食べられる場所を作ろうと思ったんです。」

沖縄に進出した理由は近藤さんの親孝行だった。いい話ではないか。で、お父さんはさぞ喜んだでしょう。

「いやそれがもう飽きたみたいで、お前がここでお店やってるのならたまに来るからもう住むのはいいや、って。」

お父さん。


店長の近藤さん。若し。

さらに聞いてみた。

「ちなみに沖縄メニューと名古屋メニューとではどちらが人気ですか」
「ええ、もう完全に名古屋メニューですね」

うれしくなって手羽先以外にもだし巻き卵や八丁味噌チャーハン等を注文したが、どれもお世辞抜きにおいしかった。店長の名古屋と親へのたゆまぬ愛のなせる業だと思う。

忙しい中かなり親切に取材に応じてくれた店長の近藤さんに「本になります」とか言ってしまったが、ごめんなさいだめでした。いつか沖縄本を作る機会があったらかならず取り上げさせていただきますので許してください。

鮨・炉ばた料理 食いしん坊太郎
  沖縄県那覇市久茂地1-6-1 (1F)
  営業時間 17:00〜1:00 (日曜定休日)
  電話 098-863-5443

 

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