デイリーポータルZロゴ
このサイトについて

コネタ


コネタ620
 
おとなの階段のぼる
この場合、2段目あたりで「シンデレラ」

君はまだ「シンデレラ」だそうです。
かなりステータス低そうですね、シンデレラ。「想い出」しか使えなかったり。

まあ懐かしのヒット・ソングはともかく、わたくし、長いこと「おとなの階段」とは何ぞや?と思っておりました。

「おとなの階段」てどこにあるのだろう。
だいたい「おとな」の基準で何。
青春の1ページで、誰もががふと疑問に感じる「おとなの階段」を探します。

(text by 神田ぱん

小さい(短い)けど「おとな」の風格

「おとな」とは何なのか

おとなは漢字で「大きい人」と書く。
このデンで行けば「大きい階段」がおとなということになる。段差、幅、段数といった構成要素が「大きい」と「おとな」。
だが、サイズが小さいからといって「こども」とは限らない。
←の階段をこども呼ばわりしたら、きっと酒焼けしたダミ声で「そりゃーどーも、ありがとねェ」などとすごまれる。怖。

大きい(長い)けど「こども」が使用

また逆に立派な、長い、大きい階段でも、通学路なんかでこどもがピャイピャイしてて、「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト!」とかやってる瞬間には、遊び場の風情だ。

てことは、「おとな」かどうかは、その階段の立地条件に大きく左右されるのではないか?「おとなの街」に行けば、「おとなの階段」があるのかも。

 

おとなの街の地下鉄階段

おとなの街・新宿へ

それでおとながたくさんいそうな新宿に行ってみた。

新宿は、元禄11年(1698)浅草の名主・高松喜兵衛らによって開宿された「内藤新宿」が始まりだ。それまでは江戸はずれの寒村で、信濃高遠藩主・内藤家の所領だった。

手塚治虫漫画と同名の店がある裏路地

今も「内藤町」という地名は残っているが、内藤家は開宿で土地を返上させられたし、その後も明治政府に新宿御苑など相当な土地を返上した。子孫の内藤さん(もと朝日新聞のえらい人)から、「旧藩主の集まり(そういうのがあるらしい)に行くと『オマエんとこは遊郭のアガリで食ってたんだろ』と言われるがそういうことはなかった」と聞いたことがある。
デベロッパーの高松喜兵衛は、●リ●スホテルみたいな感じでお殿様の名前をくっつけたのだろうか。やるネ、喜兵衛。

新宿は実質岡場所だった江戸四宿の中で、良くも悪くもいちばん遊里らしさを残してる街だと思う。そして私は、そんな新宿が好きだ。

 

GaKusei-Video。なんでKが大文字?

新宿は「おとなの階段」だらけ

まず見つけたのは「韓国スター別コーナーへの階段」だ。ヨン様は、どう考えてもこどもよりおとなに人気がある。
よってこれは「おとなの階段」と認定。

さらに個室ビデオ、ヘルス、案内所など続々と「おとなの階段」を発見する。
つーか「おとなの階段」ありすぎ!

さりげないカーテンあしらいが心憎い
風俗店の情報センターへは敷居を低く

ゴージャス階段にびびる


さて、賢明な読者諸氏はすっかりお気づきかもしれませんが、ここまで私、いっこも階段のぼってません。新宿が好きーとか言いながら腰が退けてて、誠に面目ない。

でもさー、歌舞伎町のさー、こんなビルのさー、階段なんてさー……怖いじゃん!


絨毯に女の涙が染み込んでいそうなたたずまい。柱の金貼りにかなりの威圧感

「おとなの階段をのぼるシンデレラ」にふさわしいのは、本来こんな階段かもしれない。そう思い、意を決してのぼってみた。


階段の上から下り目線で撮影

どうでしょう。ルイビトンの集金バッグをぶら下げたお兄さんたちに、不審なまなざしで見られながらも撮った一枚。
今回もっとも危険なショットなのだが、危機感も達成感も、何ひとつ伝わらないことに我ながら感心する。


鉄柵付きの「おとな」物件

ゴージャスさにはびびっても、こういうほどよく都会的に荒んだ階段には、どうしようもなく心惹かれてしまう。
塗装のはげ具合といい、だらしなくほどけたチェーンといい、完璧な荒みっぷり。
階段は年増ほど味が出るねェ。

とってもヘルスぃな「いちごミルキー」

撮影しているうちに、歌舞伎町には意外と外階段が少なく、ビルの内階段が道路からもよく見えることを知った。
外階段は敷地に余裕があるところにしか作れないのだろう。そして内階段までチラ見させるのは、「CMのあとヒロシが号泣!」みたいな“ヒキ”のテクニックという気がする。

←ここは私なら“退く”けど。

お店のサイトは「アフロディーテ」だった

ヒキわざを駆使する「おとなの階段」は掲示板や看板の役目も果たし、客は階段から店の情報を得る。SM…ショー…喫茶…か。
簡にして意。

久々の新宿散歩、おもしろいけど緊張してクタクタ。もう帰ろう。でも帰りがけ、ちょっと楽しい物件を見つけてしまった。これだから新宿って好きですよ。
また来た時は「シンデレラ」を脱して、もう少し「おとなの階段」のぼりたい。

駐車場のビルなんだけど…… 実は小口切り風がアヴァンギャルドな建築物

おとなの階段は異界への入り口

「おとなの街」に「おとなの階段」がしつらえてあるのは、単に店が2階にあるからというだけではないような気がする。

現世と黄泉の国は、黄泉比良坂(よもつひらさか)」という坂で隔てられている。「坂」は「境」だから「坂」というらしい。
実際にのぼるのはつい二の足を踏んでしまう「おとなの階段」も、彼岸と此岸の境なのかもしれない。と思いました。

いや、それほどでもないです。

 

▲トップに戻る コネタバックナンバーへ
 
 


個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.