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コネタ


コネタ647
 
長崎名物ミルクセーキ
長崎名物??

ある日、街で
「長崎名物ミルクセーキ」
と書かれた看板を見て驚いた。

「いや、それは長崎名物じゃないだろう?」
と呟いたら、すかさず同行の長崎人から
「何を言ってるんですか!長崎名物ですよ! 」
とツッコミを入れられ、なお驚いた。

長崎の食文化の奥深い一面を、またひとつ垣間見ることとなった。

T・斎藤

ミルクセーキは長崎名物であった

ミルクセーキ、懐かしいと思われる方も多いのではないだろうか。牛乳と卵と砂糖で作る、あの甘い飲み物である。

が、長崎のミルクセーキは違う。

長崎で、ミルクセーキと言えば
「夏に食べるもの」
である。

「飲む」のではなく、「食べる」だ。

百聞は一見に如かず。
これが長崎名物ミルクセーキである。


長崎名物ミルクセーキ

長崎ではこれがスタンダード

長崎のミルクセーキは氷菓子

たしかにこれは飲み物ではない。食べるものだ。味は、我々の記憶にあるいわゆるミルクセーキとほぼ同じ。それがシャーベット状の氷菓子になって出てくる。

どういうわけか長崎ではミルクセーキと言えばこれがスタンダード。逆にすっかりこれに慣れ親しんだ長崎人が、県外で初めて「いわゆるミルクセーキ」を見て愕然とすることも多いという。

ツル茶ん
マスターの川村さん
九州最古の喫茶店 (1階席)
雰囲気のある店内 (2階席)

ミルクセーキ発祥の店

一体どうして、このような独自スタイルに発展したのか?

長崎流ミルクセーキ発祥の店と言われている喫茶店「ツル茶ん」に話を伺いに行った。ちなみにこのお店、なんと「九州で最初の喫茶店」という歴史ある喫茶店でもある。

三代目マスターの川村さんは、終始にこやかにこう語ってくれた。

「私の祖父の頃、当時はまだ冷凍室のついた冷蔵庫がない時代でした。そこで長崎の暑い夏に合うように、練乳をベースにしたタネをかき氷に加えて作ったのが、氷菓子のミルクセーキです。」

これが大ヒットし、いつしか長崎中の喫茶店で見られる定番メニューとなった。ただ、作り方を伝授したわけではないので、店ごとに作り方が異なり、さまざまなバリエーションがあるらしい。(バニラアイスと氷をミキサーにかけた、マックシェイクのようなミルクセーキとか)

名物が作られる条件

お話を伺ってるうちに、その土地の名物と呼ばれるものができる“条件”が見えてきた。

まず、誰かが他にないオリジナルなものを自由な発想で開発する。次にそれを周辺の店が真似をする。真似する、というと聞こえが悪いかもしれないが、真似することはそれを受け入れ支持することだ。創意工夫を加えながらみんなが取り入れる。そしてなぜか全国的には展開しない。

この3つが揃った時、その土地の名物が誕生するのではないか。長崎に名物が多いのは、これらの条件が揃いやすい風土があるような気がした。

話は広がり…

川村さんの話はその後、ミルクセーキから広がり、チャンポン、トルコライスといった長崎名物の起源から、肉ジャガやハンバーグの話、ついには日露戦争や薩摩藩の話、はたまた今度上映される映画「いつか読書する日」(長崎が舞台)の話へと、とどまるところを知らず広がっていった。面白い話をいろいろありがとうございました。

●お店データ

ツル茶ん
長崎県長崎市油屋町2-47
TEL:095-824-2679
https://turuchan.jp/

冷たくて甘くてうまい
シズル写真撮影協力:長崎県物産振興協会 ヨシムラさん

 

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