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コネタ


コネタ651
 
初めての壁登り
ジム外観。中はスゴイことになってました

久しく会ってない友人に「飲みませんか」と声をかけたところ、「それよりクライミングに行かないか」と逆に誘われた。

…クライミングってアレですか、壁をスルスルと登っていく、あのクライミングのことですか。

「いや、興味はあるんですけど、最近体重がのっぴきならないことになってて…」と懸念を漏らす私に、友人は「大丈夫でしょ」とひとこと。

「だったら、ひとつ」ということで、腕の筋力だけを頼りに登ってきました。

高瀬 克子

不安です

赤羽からバスに乗り、埼玉県川口市にある「PUMP」というクライミングジムに向かった。同行してくれたのは、最近すっかりクライミングにハマっているという青木さん。

「クライミングって、ストイックというか、山男然とした人達が黙々とやるイメージがあるんですけど」と聞くと、「あー、そうかも。でも面白いよ。パズルみたいで」と青木さん。パズル?

あれこれ話しているうちに、ジムに到着。さっそく中へ入った。


見上げると、こんなだ

思わず「うわあ!」と声が出るほどの絶景である。全体的に“やたらと天井が高い体育館”といった雰囲気の内部は、壁一面が様々な形の突起物で覆われている。

安全装置を巻き付けて、どんどん上に登る方々。見てるだけで首が疲れます
高齢の方も、登っていらっしゃいました

…ここを、手と足だけで登って行くのか。

想像以上に本格的な設備を前に「今日は見学だけで」という言葉が喉元まで出かかるが、すでに登録料と利用料金を払ったばかりだ。

いやぁ、エライところに来てしまった。「好奇心、猫を殺す」という言葉があるが、中年女をも殺しそうである。大丈夫か。

不安がる私に、青木さんが「いや、俺はいつも大体ボルダーしかやらないから」と、天井の低いコーナーを指さした。ん? ボルダー?



こちらがボルダー専用のコース

なるほど、こっちは床にマットが敷かれ、高い所からジャンプして降りても大丈夫な作りになっている。ロープなどの安全器具がなくても気軽にクライミングが体験できるコースのようだ。

青木さんいわく「ここだとロープを持ってもらわなくてもいいから、1人で来てもすぐ出来るし楽しいよ」とのこと。

そうかそうか、そうですか。そういうことなら、このボルダーをやりましょう。是非やりましょう。


専用のシューズをレンタル。つま先が重要なスポーツだけに、かなりタイトな作りです

ヤル気になったのはいいが、登り方が全くわからない。

ジムでは初心者への講習も頻繁に行われているようだが、せっかく経験者と一緒に来たのだからと、青木さんにいろいろ聞くことにした。


「あのカラフルなテープの意味は?」
「同じ色のテープが貼ってある所にしか手と足をかけられない、とかいう意味」

なるほど、むやみやたらと好きなように登ってはいけないようだ。同じ色・同じ形の貼ってある所を選んで登ることで、コースが何種類にも分かれるらしい。パズルって、そういうことか。

「とにかく模範演技を見せてくださいよ」と、青木さんに先に登ってもらうことにした。まずは実際に登るところを見てみたい。


元体操部だけに身軽な動き
横にスイスイと移動するのもボルダーの楽しみ、ということで軽快に移動中。さすがです

青木さんは難易度の高い、黒いテープのコースを攻めていた。趣味の欄があったら迷わず「クライミング」と書くであろう青木さんは、さすがの登りっぷりである。

見てるだけでは来た意味がない。登り終えた青木さんに簡単なアドバイスをもらい、私もさっそく登ることにした。

「まず腕を伸ばすこと。曲げてると筋肉が疲れるから」
「はいー」

まずは、一番簡単なピンクのコースを攻めることする。


…う、腕が、もげそうだ

突起に腕をかけてブラ下がる。自分の全体重を両腕だけで支えるのが、これほどツライとは。ブラ下がりながら「これは無理…かも」と訴えると「だから、腕は伸ばす!」と、さっそくゲキが飛んできた。

「あ、そうか」と腕を伸ばすと、一気にラクになった。例えて言うなら鉄棒に腕をかけて、そのまま体を後ろに倒した時のような感じだ。


のろのろと登る

「次のピンクのシールはどこ?」「そこ! 右上!」 などと後ろから支持を出してもらいながら、なんとかコースを登り切った。

ドスン、とマットに飛び降りる。びっくりするほど汗が出ていた。息も上がっている。自分ではそれほど体を動かしたつもりはなかったが、これって実はものすごい運動量のスポーツなのか? それとも自分が運動不足だっただけか?

コースを制覇した、という達成感が心地よく、「あー、これはハマる人はハマるなー」と思いながら、難易度を上げて次のコースに挑戦すること数回。

ちょっと休憩、と靴を脱ごうとして驚いた。手がフルフルしている。小刻みに震えて、靴のヒモがうまくほどけない。明日以降、どんな筋肉痛に襲われるのか、このうえなく不安だ。


子どもはとにかく身軽。この女の子は特にすごかった
スタッフの若い女性も、考えられない場所を考えられない体勢で渡ってます

休憩しながら他の人の登る様子を見ていて、あることに気がついた。上手な人ほどヒトに見えない。まるでサルだ。サルに見える。


特に、この方は人間離れしておりました
なんと「ヒョイ」っと飛び移ります

外で煙草を吸っていると、ちょうどこの「人間離れ」した方も一服しに来たので「上手ですねぇ」と声をかけてみると、「あ、僕、ここのスタッフなんです。今は大阪店で働いてますけど」とのこと。

聞けば、全日本のボルダー部門の大会にも出場しているらしく、今年は3位か4位(まだ結果が出てなかった)という実力者であった。上手なハズである。


伊藤達也さん、21歳。とにかく話し好きの明るい方。スケボー好き

「スゴイじゃないですか!」と言うと、「いやー、とにかく僕は、ボルダーの楽しさを、もっとたくさんの人に知って欲しいんですよー」と明るくおっしゃる。

「あ、私もクライミングって、もっとストイックな雰囲気の方ばっかりかと思ってましたけど違うんですね。特に伊藤さんは」

「ははは。こんなのもいるんですよー」と伊藤さん。

撮った写真をサイトに載せていいかと聞くと、「えっ、だったら、もっと何かやりましょうか」と、自ら進んで被写体となってくれた。なんと素晴らしいサービス精神の持ち主でありましょうか。


子どもに「鯉のぼりやってー」と言われて、大技を披露
コースじゃないところまで果敢に攻めます

伊藤さんが「やるかー!」と雄叫びをあげながらTシャツを脱いだ時点で、周りにいた人たちがニヤニヤしながら集まってきた。次々に繰り出される技を見て「すげー、すげー」を連発している。みんなの顔が笑っているのは、伊藤さんの人柄ゆえなのだろう。


動きが激しすぎて、なかなか写真に収まりません
徐々に技はアクロバティックな域に

ひとしきり技を繰り出した伊藤さんに「こんなもんで大丈夫っすか」と聞かれ「十分すぎます! ありがとうございます!」と答える。

いや、ほんとにすごかった。伊藤さんが連発する大技に、カメラが付いていけなかったことが唯一の心残りだ。かたわらの青木さんと「いいもん見たねぇ」「見た」と言い合いながら、ジムを後にした。

すでに腕と尻の筋肉が痛い。今からこれだけ痛いということは、後日どれほどの筋肉痛に襲われるのだろうか。

ちなみに青木さんは初めてクライミングをした日、家の玄関のドアノブが回せなかったそうだ。恐ろしい話である。

それから

「今度行く時は、もっと体重を落としてからにしよう。私もサルのようにヒョイヒョイと身軽に壁を登ってみたい。さらにはロープを使った高所にも挑戦してみたい」と、2日後、ピークを迎えた筋肉痛に顔をしかめながら思った。

というわけで初の壁登り。課題だらけでしたが、思っていた以上に楽しくできた。青木さん、もうあまり邪魔しませんから「高瀬はそろそろ痩せたかな?」と思った頃にでも、また誘ってやってください。

「PUMP」1号店
  埼玉県川口市元郷2-3-12
  TEL 048-225-2919

こんな角度の壁を登れる日は、果たして来るのでしょうか

 

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