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コネタ727

 
チェーン店の丼屋に置いている“ご飯の友”調べ
丼屋に置いてるこういうのがご飯の友(not調味料)だ。

“ご飯の友”もしくは“どんぶりの友”。僕はそれを勝手にそう呼んでいる。ひょっとしたらもっと適切な呼び方があるのかもしれない。
それとはチェーン店の牛丼屋・定食屋(吉野家、松屋など)などのカウンターに置いてある、自由に使える紅しょうがであり、醤油であり、焼肉のタレなどである。調味料として括ってしまうと『紅しょうが』は明らかに違う。だから僕は勝手にごはんの友と呼ぶ。

何の変哲もないこのご飯の友だが、よく見ると店舗ごとに置いてある『友』が少しづつ違ってバラエティに富んでいる。このカウンターに置いているご飯の友だけでじゅうぶんご飯が食べれてしまうんじゃないかと思う事もある。そこでさっそくライスのみ注文してご飯をおいしく食べて帰れるか、確かめてみることにしました。

梅田カズヒコ

1軒め、『なか卯』の場合。



なか卯のデータ

《主力商品》 豚丼・親子丼・うどん
《本店・本部》 大阪府吹田市
《1号店誕生》 1969年10月 (大阪府茨木市)
《店舗数》 266店 (2005年6月末現在)
《その他》 モスバーガーと資本提携
《ひとくちメモ》 “こだわり卵”の黄身がものすごく濃くてうまい。


ライスとご飯の友。つまり、僕がやりたいのはこれだけで満足して帰れるかなんです。

さっそくライスを注文。なんだか僕の席だけ寂しげだ。

レシピつってもごはんにしょうゆをかける。とかろくな事やってないな。

そうか、これはきっと世界一面倒くさがりやのレシピなのだ。

さっそく単品ライスを注文。なんだかライスだけを頼むのは非常に恥ずかしい。ここのなか卯は店員のおばちゃんが耳が遠いらしく、何度も注文の品を復唱してきました。
『あの人、ライスだけ頼んでるよ』
という心の声が突き刺さる。何も聞かれてないのになぜ自分はライスだけを注文したか、の言い訳を考えている。人間はこういったとき、必要以上に気弱だ。(人間じゃなくて、僕が気弱なだけか)

しかしご飯が届いたらなんだかテンションがあがってきた。なんだか軽いクッキング気分だ。今、僕はご飯と言う純白のキャンパスに、調味料という絵の具を塗りたくる絵描きなのだ。

なか卯のカウンターに置いてある“ご飯の友”

・しょうゆ
・紅しょうが
・七味

この3点である。しょうゆがあるのでなんとか食べれない事はないだろうが、なんだか不安な布陣だ。

と、言うわけで簡単で貧乏くさいレシピです。

1、ご飯に醤油をかけてかき混ぜる。(醤油かけご飯にする)
2、紅しょうがをこれでもかとどっさり盛る。
3、仕上げに七味をぱらぱらと。
というわけで完成しました。


名づけて、紅しょうが丼。150円。

しょっぱ。

でも、食べれなくはないです。ごちそうさま。

思いのほか、みためはそこそこうまそうだ。

おかずも何もないライスを前に最初はどうなる事かと思ったが、そこそこうまくいったんじゃないか。見た目はまずまずの雰囲気だ。

今回は別にガンバルマンみたいに体を張る企画ではない。いかにご飯とカウンターの“ご飯の友”だけでおいしく食べるか、というポイントだ。
紅しょうがのくせのある匂いが食欲を増進させる。

さっそく食べてみる。うん、これは、食べられなくはない。しかし……しょっぱい。すっぱい。

どうやら紅しょうがを入れすぎたようだ。牛丼を食べる時、僕はえいやっと大量の紅しょうがをぶち込むのだが、ご飯にえいやっとぶち込むとなんだか紅しょうがが主張しすぎてその味しかしない。

しかしお金がない緊急事態においては有効な手段だと思う。150円で食事ができるのだから。
それに、なんだか楽しいぞ。

だんだん楽しくなってきた。次のお店に行こう。


なか卯の“ご飯の友”とライスの相性

おいしい ← − − − −○− → まずい
はなやか ← −○− − − − → じみ
たのしい ← − − −○− − → ひもじい

(※『はなやか/じみ』 は丼の見ための色合い、『たのしい/ひもじい』は検証中の自分の気分です。)

2軒め、『松屋』の場合。



松屋のデータ

《主力商品》 牛めし・カレー・定食
《本社》 東京都練馬区
《1号店誕生》 1966年6月 (東京都練馬区)
《店舗数》 668店 (2005年5月末現在)
《その他》 ここは牛丼(牛めし)売ってます。
《ひとくちメモ》 期間限定の“麦とろ”うまい。


松屋はライスに味噌汁がついてくる。嬉しい

にしても松屋はソースが多いな。

松屋はもれなく味噌汁がついてくる。

松屋は券売機には単品ライスはありませんが、店員さんに頼めば直接注文できます。(150円)。そして松屋の場合はなんと味噌汁が付くぜ、やった!

そういえば牛めしや豚めし頼んだ時も無条件で味噌汁ついてきますね。またご飯だけ食べるのか、と思っていた僕は嬉しかったです。

松屋の“ご飯の友”の特長は6種類にも及ぶソースの豊富さです。この辺をどうご飯に絡ませるかがおいしく食べられるかどうかのポイントになりそうだ。

松屋のカウンターに置いてある“ご飯の友”

・しょうゆ
・紅しょうが
・七味
・フレンチドレッシング
・焼肉のたれ(バーベキュー味)
・焼肉のたれ(おろしポン酢)
・黒酢ドレッシング
・カルビソース

協議の結果、なか卯で使用した3品(しょうゆ・紅しょうが・七味)さらに焼肉のたれ(バーベキュー味)と黒酢ドレッシングを使用する事にしました。

1、しょうゆと焼肉のたれをご飯にかける。
2、前回の反省を生かしちょんと紅しょうがを盛る
3、黒酢ドレッシングで味を調える。
4、仕上げに七味をぱらぱらと。

焼肉のたれはチャーハンにいれる事があるのでご飯と愛称がよさそうだ。しょうゆとの組み合わせはどうかと思ったが、工程1、の段階で味見したらいい感じに中華風の味がした。これにさっぱり味の黒酢ドレッシングが混ざれば、たぶんいい具合になってくれるはずだ。


名づけて、ガーリック風味ごはん。150円。

おいしそうだ。いただきます。

ごちそうさま

見た目はそれほど、しかし味は……

見た目はそんなにおいしそうでもないが、焼肉のたれのガーリック風味の香ばしい香りがする。これはご飯ががつがつ進みそうな匂いだ。夏バテ防止に黒酢も加えた。これで健康面もばっちりである。(きっと)

ひとくち食べる、ぱく。ん、これは……なんていうか……いや、決してまずくはないのだ。一軒めのなか卯より味に重曹感があっておいしい。しかしなんだろうこの負け感。おいしいが、心にぽっかり穴が空いてしまったかのような気分だ。微妙な味に思わず不思議な笑いがこみ上げてくる。

同行してくれた友達にも食べさせたところ、『あ、これは、失敗したチャーハンだ』と的を得たコメントをいただきました。

フライパンで炒める事ができたらおいしかったかもしれない。残念ながら満足感は得られる事ができなかったが、料理としてのポテンシャルを持っているという事だ。

チャーハンっぽい何かを目指して味付けしたら失敗したチャーハンになってしまった。俺の采配が間違っていたか。いい選手を集めたのに自分の指揮ミスで負けてしまったサッカー監督のような気分です。妙に悔しい。


松屋の“ご飯の友”とライスの相性

おいしい ← − −○− − − → まずい
はなやか ← − − − −○− → じみ
たのしい ← − − − − −○→ ひもじい

3軒め、『吉野家』の場合。



吉野家のデータ

《主力商品》 豚丼・定食(本来の主力は牛丼)
《本社》 東京都新宿区
《1号店誕生》 1899年 (東京都中央区)
《店舗数》 1269店(海外含む)  (2005年6月末現在)
《その他》 牛丼チェーンの最大手。
《ひとくちメモ》 近頃一日だけ牛丼を復活。大繁盛だった。


吉野家と言えば、四角くて黒くて大きい紅しょうがいれですよね。

コチュジャンなんて置いてたっけ?

最近行かなくなったなー、吉野家

僕はその昔吉野家に入りびたりだった。あれはまだBSE問題など関係ない牛丼が270円だった頃の話である。その頃、マクドナルドのハンバーガーは65円だった。あれはいい時代だった。この吉野家とマクドナルドのデフレ特価のおかげで、僕は人生で一番貧乏だった時代をなんとか乗り切ったのだ。そういうわけで僕は吉野家に特別な思い入れがある。
諸事情があるが、僕個人的には早く牛肉輸入を再開してほしい。

店内に入る。僕の記憶ではカウンターに置いているのはなか卯と同じ紅しょうが、しょうゆ、七味の3つだった。1年ぶりぐらいに吉野家に行ったらコチジャンが置いてあった。コチジャンなんてあったっけ?

せっかくなのでコチュジャンで味付けしてみる事に。

1、しょうゆとコチュジャンをかける。
2、紅しょうがもいれて混ぜる。最後に七味をぱらぱら。

今回のポイントはコチュジャンと、しょうがを上に盛らずにご飯と混ぜてみたことだ。というわけで完成品はこれです。


うん、なかなかうまそうだ。

ごちそうさまでした。あ、どうしてもおかずが欲しかったので豚皿頼んじゃいました。すみません。

おかずが欲しいごはん。

ん? この味は、おかずが欲しい。辛い。ここの上に具があれば完璧な丼である。もしくは卵で包めば辛さが和らぎオムライスのように食べれそうだ。

隣の男が不審そうに僕をながめていた。吉野家は他の店に比べやや狭いので隣の人との距離が近いのだ。無視できない距離なのだ。いやでも目に入ってしまう。
しかも吉野家は熱烈なファンが多いため、食べ方にうるさい人が多い。よく考えると僕の食べ方は邪道中の邪道である。

いかにも何か言いたげなおじさんを尻目にそそくさと店を後にしました。


吉野家の“ご飯の友”とライスの相性

おいしい ← −○− − − − → まずい
はなやか ← − −○− − − → じみ
たのしい ← − −○− − − → ひもじい

 

4軒め、『めしや丼』の場合。



めしや丼のデータ

《主力商品》 定食・丼
《本社》 福岡市博多区
《1号店誕生》 1989年 (福岡市博多区)
《その他》 ほっかほっか亭と同系列
《ひとくちメモ》 ご飯はおかわり自由。


めしや丼は単品ライスを販売していないので定食を注文。

みよ! テーブルに置かれたありとあらゆるこの“ご飯の友”たちを。

高菜、食べ放題。

最後は興奮のリポートです。

さて、最後は今までとはちょっと毛色が違うかもしれないが、定食屋、めしや丼で“ご飯の友”を試してきました。
ここは単品ライスが売ってませんでした。しかたないので定食を買うことにしました。しかしそれでもどうしても僕はこのお店を紹介したかったのである。このお店もよく前に住んでいた家の近所にあった時によく行ったんですが、ここの“ご飯の友”がまさしく“ご飯の友”で、僕がご飯の友をご飯の友と呼ぶきっかけにもなったお店だからだ。

まずはラインナップを見てみよう。

・漬物(高菜)
・塩
・ドレッシング(ごま)
・ドレッシング(ノーマル)
・しょうゆ
・ソース
・山椒
・七味

以上の8品である。ここで特筆すべきはなんと言っても高菜の存在。この存在は紅しょうが等に比べかなり心強い。高菜がある事によって消費されうるご飯の量がかなり増えます。そのほかもかなり充実なラインナップと言えよう。

おかずを先に食べてしまい(あくまでご飯だけで食べきれるかどうかをリサーチするため)、残ったご飯でご飯の友を試す。

1、高菜をこれでもかとご飯の上に敷き詰める
2、続いてしょうゆを少々、塩をぱらぱらと。
3、最後に山椒をかけてできあがり。


おいしそうな高菜丼のできあがり。これがカウンターに置いてあるご飯の友だけでできた料理だからすごい。

高菜、食べ放題。

さて、味のほうは。

うまい、うまい。なんだこれは。これだけで立派な商品になりそうだ。

漬物+ご飯というありふれた、しかしうまい組み合わせに風味を持たせる山椒。そして両者の個性をやさしく融解させるしょうゆと塩。もう何もいう事はない。負けた感なんてゼロである。


めしや丼の“ご飯の友”とライスの相性

おいしい ←○− − − − − → まずい
はなやか ←○− − − − − → じみ
たのしい ←○− − − − − → ひもじい

めしや丼はおかわり自由。高菜ごはんがおいしくておかわりしちゃいました。

さて、なんだか自分の中で暴走してしまった感のあるこの企画。裏テーマは貧乏になってお金がなくても楽しくやる方法でした。
人は貧乏になるとどうやってお米を食べるかという事を考えだします。お米さえ食べてれば人間はなんとか生きていけるのです。しかし米は米のまま食べることはできない。だから本当はおかずが欲しい。でもおかずが買えない。だから人はしょうゆをかけ、単価の安い卵をかけ、なんとか米を食べ生きていくのです。その気になれば定食屋でご飯しか頼まなくても、なんとか調味料や漬物でごまかして食べきる事ができる。
そこまで切羽詰る前にもっと働けよ! 外食しないで自炊しろよ! といわれそうだが若き日々にはいろいろあるんです。これを読んでくれたすべての今、どうしようもなく貧乏な人へ。きっと大丈夫っすよ。貧乏を体験した事がある人は体験した事がない人よりきっと深みのある人生のはずです。何の根拠もないけど。


 

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