デイリーポータルZロゴ
検索天気地図路線このサイトについてランダム表示ランダム表示
アット・ニフティロゴ

コネタ


コネタ740
 
海水から作った塩で海ごはん

文句なしの天然塩

「海ごはん山ごはん」というミニ番組が好きだった。
男女3人が文字どおり海や山に行き、様々な趣向を凝らして調理をし、テーブルセッティングをして食べるというものだ。
そこにセリフは一つも無く、しかしその躍動感や輝き、また、食べた時の美味しさがきらきらと伝わってきて、吸い込まれるようにして見ていた。

あれやりたい。

というわけで、材料も海から作ってみました。塩。

佐倉 美穂

材料を取りに海へ行く

近所の海へ自転車を漕いで行く。
まだ午前中だというのに、日光浴をしている人が皮膚を赤くしている。


まぐろのように

この浜は遊泳禁止で、その代わりに釣り人やウィンドサーファー、夜には花火をやる人などが集まる。

さて、さっそく水を汲むか、と波打ち際に向かうと……ゴミだらけだ。
ひるまずに水に入ると……昆布茶のような色の海水。


マリンブルーとはどういう色だったか

これで? この水で、塩、作るの? 本当に?

いやでもフィルターにかけるし、煮沸させるし、大丈夫大丈夫。近くに下水処理場があるけど、きちんと処理してるんだから大丈夫大丈夫。

半ば自己暗示のようなものをかけ、水に入って容器を沈める。


服濡れた

ボトル二本合わせて、ちょうど10Lの海水を頂戴した。


有象無象が入ってそうな水

 

途中の作業は家で

ここからは少し家で作業をする。この浜は火気厳禁な上、作業も何時間かかるかわからないからだ。

鍋いっぱいに海水を漉し入れ、沸かす。一回では10L入りきらなかったので、蒸発してきたら継ぎ足すことにした。


さらしの布は三角巾を利用

沸騰した海水の表面に、なにやら緑色のもやもやしたものが出てきた。なんだこれ。とりあえず取り除いておく。顕微鏡で見たら面白いものだったかもしれない。

今日は文句なしの晴天。きっと高気圧だろう。沸騰している海水は、おそらく100℃を超えている。
その前に立ち、火力を調節しながら見守っていると、炎天の下自転車で海水を採取した影響もあってか、くらくらと現実離れした思考になってくる。「ふはははは、紅蓮の炎に焼かれて塩になってしまうがいい!」なんて言葉が頭に浮かぶ。
実験が黒魔術になっている。

火にかけてから2時間。10Lの海水も全て鍋に入り、かつ水量も減っている。鍋の内側には塩らしい白い跡ができている。

3時間たって、かなり濃縮された海水を味見してみる。
あまりのしょっぱさに吐き出しそうになる。でも後味にきつい感じは残らない。


海水が どんどん 濃縮されていきます

海水の表面に何か塊のようなものが浮いてきている。底にもこびりついているものがある。
これは硫酸カルシウムなので、コーヒーフィルターで漉して取り除く。


この濃縮された素晴らしい色

 

いよいよ塩が

黒い鍋に移し、沸騰させると、飛び散った海水が鍋の壁面で結晶化し、白い水玉模様になっている。
どんどん煮詰めてゆくと、海水が白くなり、かき回すしゃもじももったりと重く感じる。

これ、潮干狩りの時の砂の感触だ。ざらざらと重い塊が、水の中ですーっと拡散する。
しゃもじで白いものを持ち上げてみると、案の定すでに固体になっている。


もう塩がすぐそこに

過熱して4時間たち、もう液体もほとんどなくなったら、コーヒーフィルターで再び漉す。


フィルター、便利だなぁ

漉された液体は「にがり」だ。何に使おうか。
残った固体こそ、念願の塩だ!

でもまだ液体を含み、さらさらとした状態ではないので、フライパンで水気を飛ばす。

やっとできたのが、この白い山。
なんてことはないただの粉の盛りだが、私にはアルプスのように輝いて見える。


しお! ソルト!

重さを量ったら200gしかなかった。10Lの海水に含まれる塩分は300g以上あるはずなのだが。どこに飛んでいってしまったのか。

そして舐めてみた。
む、月並みだが、まろやかという言葉が一番しっくりくる。
市販の食卓塩と比べてみたら、こちらは刺激的に舌に刺さるような感じがするが、今回作った天然も天然の塩は、しょっぱさが少なく、後味が甘い、とさえ感じる。
おそらく何か余分なものが入っているのだろう。ミネラル?

 

海ごはん作り

さて、ここからはできた塩を使っての調理です。
暑い海で食べるもの。海の家の定番、そう、ラーメンだ。
強い日光の下、濡れた体を温めるラーメンは、シチュエーションという調味料で素晴らしく美味しい。

でもそこの海は火気厳禁なので、最低限の用意を自宅でやってから海へ向かう。

鳥のささみの茹で汁がラーメンのダシにいいらしいので、高いささみの代用品、鳥胸肉を茹で、その汁に先ほどの塩を入れる。


スープ完成。

スープを魔法瓶に入れ、具を包み、再び海へと向かい、砂浜についたところで肝心の麺を忘れていたことに気付く。
このヌケサクめが! と自分の粗忽さが笑える程の失態だった。

再び自宅へ引き返し、麺を茹で、タッパーに入れて海へ行く。

 

ステージは再び海へ

おお、いいテーブルがある。
日光浴したい人にはベッドでも、今の私にはテーブルクロスをかけたいような食卓だ。


それでは調理開始。

麺にスープを加え
風味付けのごま油を少々
茹でた鳥胸肉を具に
トッピングのネギを乗せたら

かんせーい!

早速食べてみる。
塩への気持ちが強かったのか、入れすぎてしまったらしく、ちょっとしょっぱい。
しかしそれ以外は文句なしに美味しい。
ダシもごま油もいい風味を出しているが、この複雑な味はまごうことなき「天然塩」のなせる技だろう。
スープの最後の一滴まで飲んでしまったが、やはり後味まろやかで、喉が渇く感じがしない。自分で作った塩、本当にいい味だしますよ。

やっぱり楽しい、海ごはん!


海で食べなくてもよい。

豆腐もどき

副精製物のにがりで、定番の豆腐作りにも挑戦した。
結果、あまり固まらず。
温度などのデリケートな問題もあったのかもしれないが、やはり変なものが混じっていたのだろう。
味はというと、足りなくなった塩はここに入っているんじゃないの? というくらいしょっぱく、なにやらえぐみもあった。
こんな不味い豆腐を食べたのは初めてだ。これも良き思ひ出哉。

 

▲トップに戻る コネタバックナンバーへ
 
 


アット・ニフティトップページへアット・ニフティ会員に登録 個人情報保護ポリシー
©2012 NIFTY Corporation