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コネタ


コネタ759
 
秋川サバイバー(そして川への正しい飛び込み法)
30年たってもなにひとつ変わってない川原からの風景

私の場合。

夏と言えば「川」
秋といっても「川」
山の次にも「川」でそのあと「豊」とくる。

全国の山川豊ファンの皆さまこんにちは。
死ぬほどくだらない合い言葉でも、クチに出すとあんがい面白いものですよ。

さてこちら東京都は檜原村の秋川渓谷。
この川は、好きな人ができるたびに「連れて行ってあげたい」と思う特別な場所だ。

読者のみなさまにも『川遊びイン・ダ秋川』をバーチャ体験していただきたいと思い、いつもの行動パターンで川を激写してきた。

ひとつだけ違うといえば、JRと徒歩で挑んでみたということだろうか。
長い長い一日となった。
そして死にました。たしか二回ほど。

(text by 土屋 遊

はじめての、電車遠征

出動前夜になって「どうしても車に乗せてくれ」というあつかましい友人の出現。
いつもならば甘やかす気はさらさらないが、ちょうど「青春18きっぷ」が一回分残っている。後々恩にきせることもできようかと、私だけ単独ソロで電車を使うことにした。

毎年恒例の秋川だが、電車遠征は初体験だ。
小・中学生のころはのんきなもので、毎回ヒッチハイクをしていた。
そうだった、いつも乗せてくれるのは暴走族関連のお兄ちゃんばかりだったのだ。

あのときはどうもありがとう、おかげでその筋の方々にまったくビビらない強靭な性格に育ちました。


武蔵五日市・駅前から

 

浮き足だって山をめざす

感謝の心持ちで電車にゆられていると、あっという間に終点「武蔵五日市駅」に到着した。
つい先日、各駅で京都まで行った私にとっては、もはや朝飯前。
「もしやすでに水着をお召しでしょうか?」
と問いつめたくなるようないでたちのネエちゃんが
「やっと着いた〜 すげー長かった〜腰イッター」
と携帯でグチっていたのがちゃんちゃらおかしいほどだ。

私は完全に浮かれていた。
水着のネエちゃんに体力年齢的に勝ったからではない。渋滞に巻き込まれてイラついているであろう友人たちを思うとうれしくてうれしくてしかたなかったのだ。

彼らとは駅でおちあう予定でいたものの、まだ小平付近というドンくさい連中を待っていてもラチあかない。
目的の川までは、駅から1時間もあるけば着いてしまうのではないだろうか。

ホラ見ろ、山はすぐそこ。そうだ、歩こう。歩いて川まで行っちまおう。


信じられないほどはりきっていた

この道はいつかきた道

……というより何回ともなく、むしろ二週間前にもきている気もするがあれは幻だったか。車窓からは見たこともない光景が次々に目に飛び込んできてコーフンの連続であった。

民家と民家の隙間から見えるあちらの風景
チロチロと流れる小川
やたら人間になれなれしい野鳥……

携帯メールがまったく苦手な私が、写メールと一緒にいやがらせのメールを送り続けたのだからよほどうれしかったのだろう。友人の伊藤さんとのやりとりを読み返すと、私のココロの推移が手に取るようにわかる。


ヤッホー!待ってろよ〜やまー!
東京であることを忘れさせる道
看板の前でしばし呆然。いままでずっと、『アキかワ』だと思っていた。
わき水。ペットボトルに入れて売りさばきたい
どんなにすっとばしても今日はつかまりませんよーだ

ASOBI Re: 10:10
イヤーン!もうすぐついちゃうワーどうしましょー

ITO Re: 10:12
今小平霊園

ASOBI Re: 10:16
ごしゅうしょうさまです

ITO Re: 10:40
今マリの誕生会やったとこらへん。そちらはどう?

(到着後、電話で死ぬほど自慢する)

ASOBI Re: 10:56
ちょーかいてき!さいこう!わき水はっけん。写真おくってあげよーか

(シカトされる)

ASOBI Re: 11:11
やっほー!きょうはさいこうのあきかわびよりですなー川がわたしをよんでいるーるるるるるー

ITO Re: 11:59
武蔵五日市まで7キロ。アソビと会えるかな?

ASOBI Re: 12:04
しんでなかったらね

ITO Re: 12:09
は?あと4キロ アソビまってろよ!今たすけてやる!

ASOBI Re: 12:10
ひかげがない

ITO Re: 12:13
武蔵から現地までの道、混んでる?今渋滞中。

ASOBI Re: 12:16
いや

ITO Re: 12:18
武蔵から現地まで何分くらいかかったっけ?

ASOBI Re: 12:30
えいえんにつかないんじゃないの

ITO Re: 12:33
どうした!

ITO Re: 12:37
山!

(「川!」「豊!」をやりたかったんだと思われる)

ITO Re: 12:41
おーい!

(以下山にはいったため不通)

危機一髪で救出される

雲ひとつないピーカン空、木陰ゼロ、歩道もなし、ひとっこひとりいない道。(いやいた方が逆にビビる)
いつのまにか、デンジャラスな道端を、車におびえながらそれでもひたすら歩いていた。

スポーツ飲料も底をついた。暑さであたまが朦朧とする。ドライバーをおどかすために幽霊のフリをするのも飽き飽きだ。もはやデジカメをかまえる気力さえない。
途方にくれてもいるものの、川に引き寄せられうように足だけ前へ前へと進むのはなぜだ。
これはなにかの試練だろうか、荒行かもしれん。
なにごとか願掛けをすれば今日こそはまんまと叶う気がする。
しかし今、私の願いはただひとつ。

早く川に着きますように……。

永遠に歩き続けるか、中学生以来のヒッチハイクを試みるか検討していたところ、思ったよりも早く友人伊藤さん一家に拾われた。ほんとうにほんとうに拾われた気分だったのだ。


対向車が、かなりオーバーに私を避けていきました

手ぬぐいを巻いた眠り姫……
あれから(野外風呂にはいろう参照)というもの、すっかりうちわ名人になった伊藤さん。いつも懐にうちわをしのばせているとの未確認情報も。

余力残さずして川に到着

到着時点で私はすでに力尽きていた。

今日はもうここで夕方までぐっすり寝ましょう、とマイベッドを確保。
しかし焼肉や豚汁のにおいと水しぶきにそそのかされ、20分くらいねむったところですっかりパワーを取り戻した。

川の楽しみ方は人それぞれだ。

一日中昼寝や読書、釣りをしている人もいれば、延々と火の見張りをしながらうんちくをタレる親切きわまりない人もいる。

火を見ると見張りをしなければ気がすまない人がいるように、山があれば登りたくなる人がいるように、プレステがあればゲームをしたくなる人がいるように、私の場合、この川を目の前にすると飛びこみたくなる。
血が騒ぐのだ。

それではまず、飛び込みポイント、そして正しい川への飛び込み方を伝授しましょう。

初心者向けと中級者ポイント

飛び込みポイントは4カ所。

陣地のすぐ左側は初心者ポイント1。
100mほど下ったところに少し広めの中級者ポイント2。

比較的流れはゆるやかで深く、小学生の水泳トレーニングにはぴったりの場所。

この2コースは二年前に、行政のバカが安全対策のためか小石を敷きつめ浅瀬にしたことがある。
自然をどうにかしようというのが大きなまちがいで、けっきょく、川の流れは二年の年月を経てまた同じ水深をつくった。
飛び込んだ瞬間の、水中の深いみどりとキラキラがまったくうつくしいのだ。


ヒャッホウ!上級者は幅跳びの要領で。
じっさいは両膝をとじて垂直に飛び込むのが正しい安全技法

均整のとれた水しぶきはハイクラスの証拠

でも私は小学生の頃、この水の中でヘビに噛まれて泣き叫んだことがある。好きな男子が一緒だったので、あんな窮地のなかにおいてもおおげさに「死ぬー!」とわめいて気を引いたものだ。まるっきり効果はなかった。
水は澄んでいたが私の心はどこまでも濁っていた。苦い思い出だ。

 

 

川でかっこつけると大変なことになります


本人はセクシーポーズと言い切った。てんでムダなポーズ。
むやみにバック転で飛び込むと……
スベって沈水。サンダルを流されることになります。
背中から落ちて痛い思いをします。

いよいよ聖地へ向かう

残りふたつの飛び込みポイントは、陣地から川を下って数キロ離れた場所にある。泳いだり、軽く岩を登ったり、溺れたりして辿り着く、ふたつの滝だ。 私たちはその聖域を
「一番目の滝(ちっちゃいほう)」
「プロの滝(おっきいほう)」
と呼んでいる。
上記のようにナメた飛び込みは決して許されない。

一番目の滝までは、ゴムボートで行くこともできる。
ゴムボートはいつも取り合いになるのだが、浅瀬では底が石にぶつかって翌日はかならず筋肉痛尻バージョンになる。歩くときに大変見苦しいので避けた方が無難だろう。ボートをかついで歩くことも必至。また、急流に飲み込まれると数回は水面へ放り出されてしまう。
どっちにしてもろくなことがない。


当日はゴムボートを忘れてしまったために、全員で歩いて行くことになった。それでは、第3ポイントまでの旅路をごらんください。いざ。


行く人は集合ー!
伊藤家三男は、はじめての冒険ツアー
浸かっているのではなく、流されています
じつは急流。岩にしがみつく
ボートだと早い浅瀬の急流ポイント
ここからどうすっか……試行錯誤で頭も使います

『一番目の滝』に到着。
この場所で、ボートもろとも沈んでいった人は数えきれない。


岩のてっぺんは、天下をとった気分になれる

川ダイブ中毒者。「チョー気持ちイー」はこのような時に使うのが正しい。何度か飛び込むと、水圧で耳がおかしくなります

 

「ちょっと待ってくれー」やっぱ行きたくなる

一陣の撤退

一番目の滝でぞんぶんに遊んだあと、余力のある者は次のステップ「プロの滝」へ進むのだがたいていのオンナコドモはここで引きあげることとなる。

でっかい岩がそびえ立ち、激流もはげしい。カメラを持って行くことはまず不可能だ。

平坦な道のありがたさを一歩一歩踏みしめる

私と伊藤さん、そして彼女の三男坊はここで撤退する。まことに遺憾ながら、私はカメラ、伊藤さんは息子を理由にかこつけてギブ。

山沿いの民家敷地内におじゃましながら国道へでて陣地に戻った。

 

ギネスレコードと犬の思い出

この先の「プロの滝」は、まさしく(我々の中での)プロフェッショナルだけが辿り着ける神聖な場所。
ここまでひっぱりながら画像がないの申しわけないが、カメラにおさめたことは一度もない。
「滝」とはいっても飛び込む場所はそこではなく、すぐそばにある空間だ。底なしのような深さを誇っていて、ダイブするときよりも、太陽めがけて水中をもがいている時(これが長い)が実は一番バクバクするくらいだ。

血気盛んな中学生なら十分可能で、今回は若い女子もチャレンジした。
私の知るかぎり、「プロの滝」に挑んだ女子は彼女を含め5人しかいない。
どうスッ転んでもこれは自慢のなにものでもないが、最年少記録は私が頂いている。今後は最年長記録も狙う心づもりだ。
突破陣営には男子も十数名いるだろうか、ほかに犬が一匹。これはギネスに申請してもいいくらいだろう。

この犬はアラスカンマラミュートというデカ犬種で、名はダイナマイトアロン。なにがなんでも私たちについてくるその勇姿をみた友人は、彼を、サバイバル犬と呼んだ。
どんなにへたくそに溺れたフリをしても必ず助けてくれたので、バカなのか賢いのか最後まで不明だった。
5年前にモーレツに惜しまれながらも他界。
神や幽霊の存在などまるっきり信じてはいないが、あの時のように、私はなにかあるたびにいつも「助けてアロン」と、死んでしまった犬に神頼みをしてしまうのだ。

まだまだ行くよ、日本百選の滝

第二陣が陣地へ戻ったころにはすっかり日が暮れていたので花火で照らしながら片付けをしなければならなかった。 当日は、日本の滝百選に名を連ねる、「払沢の滝」が、ライトアップされる日。
帰り道にあるので寄って見ることにする。

暗闇に浮かびあがった名滝は七色に光り、いかにも幻想的であった。


都会の噴水にも、こんなのがあったような……

 

名滝とロマンチックカップル

「ここじゃダメだな、飛び込みできないしな」

と漏らしている息子と、その父の会話をこれでもかとケーベツしながら、正真正銘のマイナスイオンをビショビショになるくらいめいっぱい浴びた。しかしなんと美意識の欠如した人種だろうか。

それにくらべて、我々の目の前にいるカップルには夢がある。うっとり滝をながめつつ、ピッタリと張り付いたままいつまでも移動するようすがない。

このまま飛びゲリでもして滝つぼに突き落としても密着したままなのかしら……
そんなロマンチックな好奇心をかき立てるほどみごとな日本の名滝だった。

しかし私はこの名だたる滝を、好きな人たちに見せたいとはまるで思わない。どちらかというと、名もないあの滝と、この密着カップルを見せてあげたい。

ああ、人として、もっとも大切なこと書き忘れていました……。

焦る自分。トイレはここらへん。つーかこの周辺ぜんぶ。ドアはないけど、りっぱな水洗便所です。

トイレにもかならず付いてきたサバイバル犬、ダイナマイトアロン。このコネタを、実は変態犬だったかもしれない彼に捧げることとします。


 

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