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コネタ


コネタ825
 
金魚すくいで漁に出る
遊びじゃない金魚すくい

金魚すくいは楽しい。

子供の頃、お祭りで大人が真剣に金魚すくいをする様を見て「大人のくせに…」と思っていたが、その大人になった今、金魚すくいはもっと楽しい。

金魚すくいの楽しさは、我々人類の狩猟本能を刺激する部分にあるのではないかと思う。

都会の喧噪にまみれて生きていると、人間に本来備わっているはずの狩猟本能なんかに気がつかずに日々が過ぎる。
その本能を呼び覚ますのが金魚すくいではないだろうか。

というわけで、より狩猟本能を刺激する金魚すくいに行ってきました。
「川」まで。

(text by クドウ

その名も「ラッキースクープ」。100個ある
練習台は我が家のペット「ゼリーさん」という名のカメ
むしろ、カメの方からから枠にしがみついてきた

いきなり川に行く前に、まずは自宅で腕試し

狩猟本能のまま、思う存分「すくう」ために、買ってしまった金魚すくいの枠。

この枠のことを専門用語では「ポイ」と呼ぶらしい。
今回購入したのは、100個入りで1100円。ひとつ11円である。
ずばり、安い!
本格的な狩猟用具としてはかなりのお値打ち感である。

ちになみにこのポイ、紙の厚さで号数が分かれており、4号から7号くらいまである。号数が大きくなるにしたがって紙が薄くなり、難易度も増す。今回の漁のために用意したのは4号で最も紙が厚いタイプである。
相手は大自然、侮ってはいけない。念のため最も厚いのをチョイスした。

大量の「ラッキースクープ」を前にして気持ちは高ぶるも、いきなり大自然を相手に闘いを挑むのも少し無鉄砲というもの。とりあえず、我が家で飼っているカメで練習をする。

ありゃ、カメがでかい。
大きすぎて枠からはみだしてしまう。
しかし、生き物を相手に真剣勝負をする感覚はつかめた。…気がする。

練習して気づいたのは、紙を水につけても、意外に破れない事。
いくら大自然が相手とはいえ、少し安全策をとりすぎたか。

心配を胸に、いよいよ大河へと向かうのである。

妻よ、今夜のおかずはボクが穫ってくるぞ。

 

うらやましそうに見つめる後ろのカップル

いざ、漁へ。

川に着いた。
当たり前だが、川に金魚はいない。
しかし、 子供たちが網を片手に何かを追いかけている。聞くと、ハゼがいるらしい。
よし、ハゼ漁だ。
金魚すくいならぬハゼすくいに挑もう。

用意してきた胴長を履き、川へと足を踏み出す。まわりの子供はサンダルだけれども。

川の中には意外なほど魚がいる。
確かにハゼだ。
都心からわずかの所に、こんなにたくさんの魚がいるとは知らなかった。
縁日の金魚すくい程の密度ではないにしろ、こんなに魚がいるのだ、きっとすくえるに違いない。

魚影は濃いぞ。

せっかくの胴長だからとりあえず深い所へ
でも、ハゼは浅瀬を好むらしい

 

獲物は豊富なんだよ
いつのまにか子供たちが。しかも手にはラッキースクープ
体長5cmほどのハゼに狂喜乱舞。金魚すくいっぽくお椀に入れた

野生の魚は速いよ、はやい

うん、確かに魚影は濃いが、すくえない。

魚影どころか、魚そのものが見えているのに、すくおうとするとひょいと身をひるがえす。
なかなか手ごわい。
手ごわいというか、完全に魚に遊ばれている。
魚のほうが興味を示して、我らが「ラッキースクープ」の紙の上に寄ってくるにもかかわらず、いざすくい上げようとすると、すらり身をかわすのだ。
腹が立つったらない。

完全に夢中だ。

夢中で、写真なんか撮っていられない。
すっかり取材の事なんか忘れて、漁に没頭する。

これは、ハゼ対ボクの闘いである。
勝者がすべてを手にするのだ。
まさに、生きるか死ぬかの真っ向勝負だ。

ラッキースクープを水面に落とす瞬間、この闘いのゴングは鳴らされる。

ハゼが身をひるがえすのが先か、ボクがラッキースクープを持ち上げるのが先か。
いつの間にか集まった、ちびっ子ファンの歓声も、今のボクには聞こえない。
「あー、おじさんもうちょっと早く!」
「わかってるよ、魚が速いんだよ!」
んん、子供がうるさい。大人の邪魔をするな。

ラウンド終了のゴングは、紙が破れるのが合図だ。
すくい上げようとすると、紙は簡単に破れてしまう。一番厚いのにしておいてよかった。

ひるむ事なくもう一度挑戦だ。
なんてったって、100回挑戦できるのだから。

次のラウンドを制するのはどちらか!
と勝負の右手を何度目かに水面にくぐらせたその直後、 ラッキースクープに確かな手応えが!!

「やった!穫った!!」

かれこれ一時間くらいたっただろうか。
子供たちのやんやの喝采のもと、 ついにハゼをモノにした。

 

この手でモノにしたハゼ。子供にあげた。友情の証に
暮れなずむ荒川に想いをはせる

見事に狩猟本能を満たす

本当はもっと漁をしたかった。
しかし、夕暮れという最終ラウンドがやってきた。
子供たちも去ってしまった。
暗くて魚が見えない。

いかに人間の英知をもってしても、大自然の時の流れを止めることはできない。

たしかに、このラッキースクープですくいあげることができたのは、たった一匹のハゼである。
しかし、この漁を通じて、ボクは数えきれない程のことをすくいあげることができたのかもしれない。

例えば、新しき友との出会い。
あの、ちびっ子たちの熱い視線と歓声は、陸にあがった今でも脳裏によみがえる。
あれは確かに友情と呼べるものだったと思う。

この大自然に、ラッキースクープを通じて触れ合うことができた今日の日を、ボクはきっと忘れないだろう。

いや、楽しいですよ。ホント

何だかすっかり夢中になってしまった金魚すくいならぬハゼすくい。
とても面白かった。
これは、純粋に大人の趣味として成立すると思う。
漁から帰って、次はあのタイミングで手首をひねろうとか、すくい上げる方向はハゼの向こう側だなとか考えている。
きっと、企画とかインターネットとか関係なしにまた行きます。

夢の跡

 

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