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コネタ


コネタ829

 
上野の気になるトンカツ屋に行ってきた。
ここが以前から気になっていたお店、
『とんかつ平兵衛』

いつか一度は行ってみたいと思っていつつも、なぜか行けていないお店はないだろうか。

今日は思い切って、前々から気になっていたとんかつ屋に行ってみようと思う。

皆さまは、とんかつって何だろう? という命題について考えさせられた事はありますか?

梅田カズヒコ

とんかつ平兵衛について、僕が聞いた噂

まずは事前に聞いた情報、噂をまとめてみよう。


  • かなり個性的な主人の居るお店らしい。
  • とんかつ定食は2200円。けっこう高い。
  • ある有名な漫画家がこのお店を「日本一のとんかつ屋」だと絶賛していた。
  • しかし食べた人によると評価は賛否両論。
  • とにかく他店のとんかつとは違う味がするのだ。
  • 油が悪くならない調理法を会得したらしく、ほとんど油は変えないという。

さっそくお店にいってみたいと思う。
東京の中でもオリジナリティあふれる名店が多い事で知られる街、上野。

上野のマルイの近くに平兵衛はあった。


外観は下町の小料理屋といった風情。

 

「食品分析比較表」も気になる。
他のとんかつ屋への問題提議

まずは店頭の宣伝文句を見てみよう。

見た感じは普通のお店だが、近づいて看板を見てみると

“他店で「とんかつ」等と称するものとは全く別の物です”
という売り文句が書かれている。

別の看板には

「肉は一切叩きません。叩かねば柔らかくできないという事は下手ということです」
と、さらりと他のとんかつ屋をアジテーションする言葉が書かれている。

そして最大の問題定義
「他店は傷害罪といえます」
というお言葉。これはつまり悪い油を使うとんかつ屋に対しての提言なのだが、なんだかただならぬとんかつへの思いが店に入る前から伝わってくる。

少ししりごみつつも財布の中を入念に確認し店内へ。

 

店内の雰囲気。

とりあえずは歓迎ムードに胸をなで下ろす。

「いらっしゃいませ。あ、すいません、ちょっとつめてもらっていいですか?」

カウンター10席しかないお店にはすでに先客であふれている。ご主人は僕らのために席を空けてくれた。
なんだか頑固親父の居るお店で私語が厳禁だったり理不尽に怒られたりするかもしれない、などと最悪の事態を考えていたのでとりあえずは笑顔で歓迎してくれたご主人に一安心。
考え過ぎかもしれないけどはじめて行くお店っていろいろ考え過ぎてしまいません? こうやって淡々と書いてるけどこのときはかなり緊張してました。

「何する?」
と聞かれたのでいち早く目的のとんかつ定食をオーダー。

「いやー、噂を聞いて来てみたんですが」
と僕が話しかけると、「あ、そうですか」と笑顔のご主人、お店が独自に作っているという小冊子をくれた。
なんだ、話せるじゃないか。(やや、リラックス)

 

奥の鍋には僕らがオーダーしたとんかつが。まったくあぶくが立たない。ゆえに揚げているように見えない。

とんかつができあがるまで、お新香をつつきながらお茶を飲み、じっくり待つ。

とんかつが揚がるまで、約30分。

僕らが陣取った席はちょうど油のそば。とんかつを揚げているところが間近に見えるアリーナ席だった。

しかし、とんかつを揚げているにもかかわらず、ジュワーといった音がまるで聞こえない。左の写真の奥の鍋を見てもらっても分かるが、あぶくがまるで立たなくて、見ようによっては何かを茹でているようにも見える。

「ジュワーってならないんですね。油の温度はどのぐらいなんですか?」

と店主に話しかけると
「うん、詳しくはさっきの小冊子を見て」
と返された。その後とんかつ定食ができあがるまでの約30分、店主がヒマそうな時を見計らって、話しかけてみたがご主人の回答は
「詳しくはその小冊子の10ページ目に載っているから」
と返されなかなか会話が発展しない。野暮な質問には答えないようだ。もしくは僕と同じような客がやってきて同じような質問ばかり繰り返すから答えるのが面倒くさいのかもしれない。

全16ページに渡る小冊子から僕なりの解釈でこの不思議な調理法について端的に説明すると

お肉の肉汁が蒸発しないように温度設定をして揚げる事により、うま味を逃がさず、また揚げ物が焦げる事によって油が悪くなる事も防ぐという調理法のようだ。

しかし、お客さんが黙り込むと今度は主人のほうから話しかけてきた。
「うちはのとんかつは外より中のほうが温度が高いんだ」
だから、揚げたてのとんかつも素手でもてるんだ」
と、言葉通り揚げたてのとんかつをつかんでいた。「すごい!」というと、「まだすごくないよ」と返されてしまった。

 

そんなこんなで、ついに完成!


 

色が薄く、揚げ出し豆腐、もしくは卵焼きみたいな色合いだ。

僕がカメラで撮影しているとさっそく食べ出した友人が「あ、おいしい」ともらした。

僕ははじめて見る形状のとんかつにしばらく面食らっていた。

さっそく一口食べてみる。

とんかつ特有のかりっという食感ではなく、代わりにふわっというお肉の柔らかい食感と肉汁がじゅわーと口いっぱいに広がった。

「カステラのようにやわらかい」「かまぼこのような感覚」とグルメ系のサイトで紹介されていて、不思議な比喩だと思っていたのだが、確かにこのとんかつは今までのとんかつにない比喩を与えなければいけないような不思議な味だった。

油であげたというより、茹でた、煮込んだという食感に近いですね。


とんかつの断面図。柔らかそうな肉の食感が伝わっているだろうか?

ソースのかわりにケチャップで食べてもおいしいよ。

皆さまは「とんかつって何なんだろう?」という問いにぶつかった事はありますか? なんだかギャグのような質問だが、このとんかつを食べたあとはそう問いかけたくなった。

平兵衛のとんかつはとことんオルタナティブだ。一生に一度ぐらいはこのとんかつを食べてみて、「とんかつ」という食べ物について思いを馳せるのもいいのではないでしょうか?

とんかつの魅力はやはり、あのカリッとした食感にあると思う。しかし、この妙にふにゃっとしたとんかつを、僕はうまいと思ってしまったんだよなー。


 

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