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コネタ


コネタ904
 
人は携帯のカメラで何を撮っているか

わからないのだ。人がカメラの付いた携帯電話で、いったい何を撮っているのか。

いや、実はわかる。子供の写真を撮って会社で見せる人もいるだろう。きれいな風景、おいしいものを食べたので記録している人もいるし、彼氏彼女とのツーショットを保存している人ももちろんいる。

カメラ付き携帯の普及により、デジタルカメラをそれほどは必要としなかった人々も撮影手段を手に入れることができた。しかも年々画素数や機能も向上している。旅先にわざわざカメラを持っていかずとも、きれいな写真を撮って保管しておける。

しかし、有意義な写真ばかりが手に残っているとは限らない。ふと気づくと、それは忍び寄っているに違いないのだ。「無意味の履歴」が。私は、人のそれが、見たい。

乙幡 啓子

本当のところ自分でも、どんなものを見たいのか、よくわかっていない。でも、探したいのがこんなものではないのは確かだ。


きゅうー(心がゆるむ音)

JR東日本ではおなじみの、非接触型ICカード「Suica」キャラクターのペンギンを撮った。理由は「かわいいから」、それ以外にはない。電車の待ち時間など、携帯の保存フォルダから呼び出してはきゅうきゅう言っている私だ。これは携帯カメラの使い方としては王道だろう。


飲み屋における、たこウインナー。

これも理由は明白だ。「おいしいし、楽しい」。そんな愉快な思い出の記録、カメラに収めることになんのためらいがあろう。

問題なのは、そこまで楽しい思いもなく、でも撮っとこう、で後から見たら何だこれ、何撮ってんだ、という画像だ。いや、そのときは浮かれていたのかもしれない。高揚し、ぜひこれはひとつフレームに収めよう!と猛然とシャッターを押した。押したのはいいが、よくわかんない絵になっちゃったよ!というものだ。それが気になる。

それには、ふだんからネタ探しに余念のないと思われる、デイリーポータルZ関係者の方々に協力を願ってはどうか。ネタ!と思った瞬間にまずはメモ代わりに携帯で撮影する宿命を背負った方々。だからこそそのなかに、微妙なよどみのような写真があるのではないだろうか。集まった写真から、まずいくつか紹介させていただきたい。

まずはライター、古賀さん(以降の写真のキャプションは、写真提供者の方々によるものです)。


なぜか携帯で携帯を撮っていた
(BBフェスタに来てくれた読者の方の携帯が
かっこよかったので撮らせてもらった気がする)

これこそ、そのときは「激写!」と勢いづいて撮っていたものだろう。しかし携帯である。後から見ても、携帯で携帯を撮っていることに他ならない。「かっけー!(「かっこいい」)」とばかりに携帯をフレームに収める様を想像するが、それ以上でも以下でもない。


スパゲティみたいに箸が立ってるうどん

これは微妙にネタかもしれない。通常、うどんをこのようにアグレッシブに表現している食品サンプルはこの世に存在しないと思われ、ならば誰だってこの傾いたうどんを被写体に選ぶだろう。

ちなみに古賀さんの携帯であるが、「私のバカ携帯は幅640ピクセルで撮影可能にもかかわらず送受信は幅144ピクセルが限界なんです。一体何をどうしたいのかという機能です。」ということだった。この携帯こそが、よくわからない。

次はコネタ道場主、石原さんから。


大和魂対ジャージーズ。5-7で負けました。外苑前の青山球場にて。石原

添付されてきた文面にはいきなり「大和魂対ジャージーズ」とあった。どうも野球チームの名前らしい。負けました、ということは、石原さんは「大和魂」の選手であり、その負けチーム「大和魂」の選手が負けた試合のスコアを写真に撮っている。

それ以上でも以下でもない。

勝ったチームがスコアを写真に。それはもう、王道中の王道的使い方だ。次の日、職場で自慢するための材料だろう。明るい職場。あふれる笑顔。しかし負けスコアを記録する、その表情に、私らはなんと声をかければいいのだろう。いや、実はすることなどなにもないのだ。そしてまた新しい朝が来る。

次はライター岸川さんからの作品。


拾得物の貼り紙。蝶ネクタイを落としてる人がいることに驚き、撮影。


家の窓から撮った雷の写真。携帯でもちゃんと撮れることにびっくり。

「驚き、撮影」「撮れることにびっくり」と、ひたすら驚いている人がここにいる。「驚いた」 → 「写真を撮る」。

野生動物は、驚いたら襲う。逃げる。人間は、驚いたら携帯で写真を撮る。なんということだ。

しかし、雷、すごくよく撮れてないか。よくこんな瞬間を。

次は、デイリーポータルZのコーディングをしてくださる、橋田さん。


かわいさを伝えたくて撮った画像ですが、やっぱり見かけかわいくないですね。

ファービーだ。最近ここでも小野法師丸さんが取り上げ、話題になったファービー。デイリー編集部にもお目見えしたらしく、その様子も送られてきている。

「第一印象はかなり悪かったのですが(かわいくない!)、毎日遊んでいると、だんだんかわいく見えてくるのです。昨日は、“ファービー”って問いかけると“ドュー”って返事してたんですが、今日は、日本語で“なあに?”って言ってくれたのです。法師丸さんの気持ちがわかりました。」

・・・。さてそれはいいのですが、横の書類はなんだろう。説明書だろうか。ファービーだけを撮っていたらそれはそれで形になっているだろう。それが、説明書付きでテーブルの端っこにおいてあり、そのせいかアングルのせいか、ファービーも伏し目がちだ。画面全体がソフトフォーカス気味なのも手伝い、見てるとなんだかボーっとしてくる。そう、この「ボーっとしてくる」のも、「無意味系写真」の味わいなのだ。

次は「MTV」でおなじみ、宮城さん。


田舎(佐渡市新穂の辺り)のメインストリート。

これは特にコメントはないのだが、どうもピンホールカメラで撮ったみたいな妙な雰囲気だったので載せてみた。私の中の「佐渡」のイメージが決まりかける。

帰宅途中にある橋から撮った夜景。暗過ぎてよくわからない。

これはどちらかというと「夜景を撮りたかったがどうも失敗」な写真のようだ。最小限の白点で「夜景」とわかる、いいデザインだと思う。でも夜景は「暗すぎてわからない」。

自分の影。頭の団子が面白いと思って撮ったのかもしれないけれども、そんなことなかった。

タッシリ・ナジェールの巨人の壁画みたいだが、宮城さんの影のようだ。

これが数人でいるときでなく宮城さん一人での帰宅途中だったらと思うと、私は寂しさが襲ってくるのを禁じえない。でもいくぶん曖昧な寂しさだ。なぜなら、「自分のちょんまげの影を面白いと思って撮る」宮城さんがそこにいるからだ。

次は腰低く丁寧な取材の、ライター三土さん。


知恵の輪です。 いつでも一つ前の状態に戻れるように、状態ごとに写真を撮っておいたりしています。

なんというか、三土さんらしい1枚ともいえましょう。よく、パソコンや何かを自分で修理するとき、手順の記録用にデジタルカメラや携帯カメラで写真を撮っておくといい、と聞くが、これ知恵の輪である。知恵の輪にこの段取り。もはや暇つぶしの枠をはるかにこえている。

さてライター最後の1枚は、藤原君である。私としては、この1枚に茫洋賞・欽ドン!(意味はない)を差し上げたい気持ちだ。


画像は学校にある、人通りの少ない階段の踊り場です。某日限りなく暇だったので・・・(以下、本文へ)

「・・・某日限りなく暇だったので、学校の階段をひたすら上ったり下りたりする遊びをやっていたところ、ここでカップルがイチャイチャしていました。なので正義の名の下に、意図的に大きな足音を立てながらその辺りをうろうろして、彼らを散らしたわけです。が、証として撮った画像は、見る限りただの踊り場なので、果たして彼らは本当に存在したのだろうかと心配になってくる今日この頃です。」

ああ。そうでしたか。

この絵自体はただの「踊り場」に他ならない。でもそれを見る彼の視点があって、初めて完結する写真である。2次元平面たる写真に視点が組み合わさり、3次元が現れた。これを3D写真といっても過言ではない。いやそれは違うと思うが、こんな写真を人の携帯で見つけて「これ何の写真?」と問いかけられないような迫力を、何も事情を聞かぬうちからもそこはかと感じるような気がしないでもない。

いかがでしたでしょう。でも私のイメージがいまいち伝わってない自信がある。途中で自分でも何を言ってるのかよくわからなくなってきた。なのでまたこの件は宿題にして、今後も「携帯メモリを無意味に占有する画像」の研究、継続します。最後、自分の携帯のとっておき無意味画像でお別れしましょう。

浅草のピンズのガチャガチャ。きんさんぎんさんみたいに座ってるなと思って撮った記憶はある。
「焼きめし」とはなかなか書かない。この店は言い放ってるなと思い。

 

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