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コネタ


コネタ921
 
まな板の上のイカの解剖
瞑想中のスルメイカ

イカが好きです。
容姿も味も、まったくすばらしいです。

先週も焼き鳥屋で「イカの塩から」「イカの刺身」「イカ納豆」「ゲソ焼き」のイカメニューを全制覇してきました。
もちろん、今まで捌(さば)いたイカは数えきれません。

そんな私なのに、いまだかつて「イカの解剖」をしたことがないことに気付きました。
実質的にはありますが、精神的にないのです。これはいけません。

それでは、と、さっそくイカの解剖に取りかかった次第です。

「解剖」という言葉にビビっているアナタは、「さばく」と思ってご覧いただければけっこうです。
ようするにおんなじです。

(text by 土屋 遊

花嫁修業に「イカの解剖」を

私事で恐縮ですが、そろそろ我が弟も「結婚」の二文字をチラつかせるお年頃になりました。
言葉だけでなく「未来のおヨメさんご本人」もチラつかせてきます。シャクにさわりますので、私も大好きな「イカ」をチラつかせることにしました。

そこで、ご本人であるところの弟の彼女Yさん(24才・保育士)をお招きして、花嫁修業の一環に、一族の女衆が代々築いてきた「イカの解剖」を伝授したいと思います。
未来の小姑として一目置かれるためにも、ここが腕の見せどころです。


助手のモッシュくん(プードル犬)
いつもかわいいYさん(もちろん右)

全身が色づき、新鮮なスルメイカを、近所の魚屋さんで購入してきました。
1杯250円。
実に旨そうです。


今にも泳ぎ出しそうなイカさん

見事なイカです。
上部・耳と呼ばれるひれ(エンペラ)は私の大好物。鮮度のいいものなら、皮をはがさずに細く切って刺身にしていただきます。足は10本あります。これはゲソ焼きにすると美味です。長い二本がありますね。「触腕(しょくわん)」と呼ばれ、"えもの"を捕らえる時が本領発揮です。ゲソ焼きを数人で食べる時は、まずこの長いものから箸をつけるべきでしょう。あとで「私まだ3本しかたべてないからっ!」と言い張る時に得をした気分になります。

 

吸盤をのせて喜ぶYさん。

「吸盤」を観察しましょう。
足の「吸盤」から、小さな輪がポロリと取れました。イカリングです。捕らえた獲物を逃がさないために、ギザギザなものがびっしりとついています。この吸盤は、獲物に触れただけでエサか否か即座に認識するそうです。舌と同じ役目を果たしているのでしょうか。人間の腕や足に舌がこんなについていたら大変なことになります。ついてなくて良かったです。

 

じっさいに噛まれると痛そうです

クチはどうでしょうか。
鳥のクチバシのようなものがついていますね。これで獲物を噛みくだきます。通称カラストンビと呼ばれ、このクチバシと周辺の身を干したものが、日本の珍味に名を連ねています。あれも旨いです。こちらのスルメイカのクチを開くと発砲スチロールが入っていました。よほど腹が減っていたとみました。小さな白いカケラを見るなり切なくなり、「かならず美味しく料理してあげるからね」と固く心に誓いました。

 

マヌケなクチに見える「漏斗」

これは頭の後ろにある「漏斗(ろうと)」です。
フンやスミを吐き出したり、海水をここから一気に噴射してジェット移動する重要な役目を果たしています。これも人間とはずいぶんちがうところですね。「そうかな?」と疑問を持たれた方は、ご自分の頭のうしろに、フンの出口があることを想像してみるといいと思います。

 


では中身を開いてみましょう。


たぶんオスです。部位の名称はかならずしも正しいとは限りません。肝臓は塩と酒をふりホイル焼きにすると旨いです。イカ墨もご存知のとおり、白髪染めや「お歯黒」にして遊ぶときなどに重宝します。

透明な食道にご注目ください
「精巣か否か」論争が巻き起こる

 

食べ物の流れを見てみよう

クチに、スポイトでしょうゆを入れてその流れを見てみましょう。
食道をキレイに通っていく様子が見えますね。実際に、イカは"えもの"をクチで細かく噛み砕くので、管を通るときはほとんど流動食のようになっているそうです。
さきほど「精巣だ。いやちがう」と異常なまでに盛り上がったパーツがしょうゆでふくれあがりました。もしかしたらこれが「胃」なのかもしれません。
「胃」を通過し、「盲のう」をパンパンにしたしょうゆは「直腸」をほと走ります。写真ではうまく撮れなかったのですが、その間にイカの吸盤や発砲スチロールが流れていく様子が見えました。そのあと肛門から「漏斗」を通って排出されます。


食道に流れるしょうゆ
パーツが混乱する。刺身の匂いもします。

イカを取り上げると、目の周辺がきれいに変色していました。
「まさかご生存だったのでは……」
そう思うとやりきれなくなり、はじめて参加者全員で手を合わせることに。


神秘

 

イカは近眼かもしれない疑惑調査

さて次は「眼球」を取り外してみましょう。
構造こそちがうのでしょうが、人間のパーツに一番近いビジュアルをしているのがこの目玉です。さきほど、「生きてるかも疑惑」があがったイカなので、少々ためらいながらも一気に取り外しましょう。

眼球に切り込みをいれると、きれいなガラス体がコロンと現れました。
事前調査をあまりしていなかったので、これには皆が歓声をあげました。

透明の球を通して見る物体は大きく見えます。あきらかにレンズです。
人間はおろか犬さえもこれには興味津々のご様子……。


エ、エイリアン?

【※ ↑モザイク画像をクリックすると実際の写真が表示されます。ご覧になりたいかたはクリックしてください】

こ、これは……

 

マヌケ面の弟が映っていました。水晶占いをしたくなります。

 

指輪にしてもオシャレです
食らいつくYさん。彼女の前世が気にかかります
高性能なコンタクトレンズ(粘着性)

Yさんは、ご自分がメガネ女子だからでしょうか、ガラス体に異常なる関心をしめしています。
「このガラス体は自分のものだ」
と言わんばかりにひとりじめして離そうとしません。

いつまでも食らいついていたYさんが取り出したものは、コンタクトレンズでした。
ピンセットでなにやらいじくりまわしていたようでしたが、まさかイカのコンタクトレンズを剥がしていたとは……。
少々厚みがあるものの、どの角度から検証しても、人間のソレと区別がつきません。
生イカを持ち歩くといざという時に代用できるので便利、ということが判明しました。

私が近眼であることを理由に、Yさんはイカのコンタクトをしてみてくれと信じられない要求してきました。しかしそこは未来小姑の意地、素直にいうことをきくわけにはいきません。
そこで、「じゃあ食べてみてー」というYさんの言葉につい、「わかったよ」と返答してしまいます。

まず舌に乗せてから、前歯で噛んでみました。想像より固く、つぶすことは不可能なうえに、ものすごい粘着力。強力粘着性両面テープにもまさる粘着ぶりです。上歯と下歯がくっついてしまってビクともしません。
「イカの呪いでは……」
と一瞬あせりましたが、おもいっきりクチを開けて離し、下歯に密着していたガラス体の一部もやっとの思いでこすりとりました。まだベトベトしたものが歯にこびりついています。
疑似体験したい方は、セメダインを丸めて、半日ほど乾燥させたものを噛んでみるといいと思います。試したことはありませんが、おそらく同じ感触でしょう。噛んだ私が言うのですからまちがいありません。

味は「いくら」に似ていましたので、今後「いくら」を食べる時は
「イカの眼球と味が似ているわね」
とさりげなくグルメな自分を演出することができるわけです。

 

イカも、考えているようです

目のすぐ裏に、脳みそがあります。
とても小さいものの、しっかりとシワも確認しました。あの風貌で、なにも考えずに大海原を遊泳しているのかと思っていましたが……。
「考えるイカ」
ひじょうに哲学的にまとめたところで、もう一つのガラス体を取り出し熱心に観察しているYさんを尻目に、本日の解剖を終わりにします。


脳みそ

実験でわかったこと。

「イカはすべて旨い」

イカ解剖デモストレーションは、子を持つすべてのおかあさんに実践して頂きたいと思います。カラダのしくみ、イカの視力と旨味、そして命の大切さを、まな板の上で学べるいい機会です。

また、イカにただならぬ興味を持たれた方は、下記のサイトをオススメします。

動物行動の映像データベース

 

現在、モテる(大きい)オスと、モテない(小さい)オスでは交接戦術が異なるというユニークなイカの行動を動画で見ることが出来ます。

アオリイカ雄の体サイズ依存代替交接行動

お色直しのスルメイカさん。心して頂戴します。

 

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