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コネタ


コネタ942

 
JR浜松町駅の小便小僧の謎
12月のある日の小便小僧

JR浜松町駅のプラットホームの中に小便小僧がある。地元の人や詳しい人にとっては有名らしい。

小便小僧を眺めていると、電車から降りてきた人が「うわっ」と一瞬驚いているのがよく分かる。電車を降りたらいきなり小便小僧。確かに驚くシチュエーションだ。突然小便小僧。

しかもこの小便小僧、毎月衣装を着替えているらしい。(今月は12月なのでサンタクロースの格好だ)
誰が何のためにこの場所に小便小僧を建て、毎月衣装をきがえさせているのだろう。気になったので調べてみることにしました。

梅田カズヒコ

小便小僧は本当に着替えるのか。証拠写真を入手。

過去の小便小僧の写真を浜松町に勤める友人が送ってくれた。ちょっと見てみよう。


夏の小便小僧。(2005年8月撮影)

今年の夏に撮影した小便小僧。確かに浴衣を着て夏の格好をしている。なんだか小便をする姿も妙に様になっている。
手には虫かご、麦わら帽子には丁寧にひまわりまでさしてある。すべて刺繍だ。芸が細かい。

次の写真はどうだろう。


2005年5月の小便小僧。

これは今年もっともよく我々の前に登場したキャラクター、あのモリゾーとキッコロではないか。

モリゾーの着ぐるみを着た小便小僧。腕や肩には小さなキッコロが小僧を見守るように抱きついている。

それにしても小便をするモリゾー。かなりシュールだ。

ますます気になってきた。小便小僧よ、おまえに会いたい。

 

ホームの向こうに見えるのは……。

とりあえず現場へ。

というわけで現場に向かうことにした。浜松町駅の山手線外回りホームの端へ。

それにしても謎が多いぞ小便小僧。いったいいつ誰がどういう経緯で小便小僧を建てたのか。誰が毎月着替えを行っているのか。

あの着ぐるみの完成度の高さはJRの職員によるものではない気がするのだが。

 

あった! 小便小僧だ。あいも変わらず冬の寒い中放水を続けている。

それにしても……

 

小便小僧がある、ただそれだけだ。冒頭から小便小僧の写真を見過ぎたために感動や驚きが薄れてしまった。

このまま「小便小僧は本当にありました! 感動!」といってまとめるとさすがに怒られそうだし、今の僕は明らかに平常心で感動していないので嘘になってしまう。

それになぜここに小便小僧があるのか、という疑問はいっさい解決していないではないか。

小僧よ、おまえはなぜここにいるんだ? そう問いかけてみたが小僧はただただ小便を垂れ流すだけだった。らちがあかなさそうなので浜松町駅の駅長さんにたずねてみることにした。


交渉中。
お賽銭が投げ込まれていた。

駅長さんに尋ねたところ広報にたずねてみると分かるかもしれませんというお返事をいただいた。

では広報にさっそく問い合わせてみよう。

「すみません、JR浜松町駅の小便小僧について伺いたいのですが」
「あ、はいはい」

広報のかたは慣れた対応だった。きっと気になる人がたくさんいて、質問を受けているのだろう。

「なぜあの場所にあるのですか? 小便小僧って普通は駅前広場とかにあるじゃないですか」
「確かに。でもなぜ駅の中に作ったのかは古い話でして今の職員は誰も分からないんですよ。ただ、私たちが知っているのは昭和27年10月14日に鉄道開通80周年を記念して、国鉄の嘱託医だった小林歯科医院の院長小林光さんというかたから寄贈していただいたということだけです」
「あ、寄贈されたものなんですか? 小便小僧を寄贈されるというのはよくあることなんですか?」
「わりとJRの銅像はもらいものも多いんですよ。有名なところでは池袋のいけふくろうとかも寄贈されたものですね」
「水槽の中にお賽銭がなげこまれていましたね」
「そうですね。」
「あれは何か言い伝えがあるんですか」
「さあ。私もじつは浜松町の駅をよく利用しますが、私もそのあたりはよく分からないんですよ」


  • その後も職員さんと長い時間お話を伺えた。分かった事をまとめると昭和27年に小林歯科医院の院長先生から寄贈された。
  • 服(衣装)を着るようになったのはここ2〜30年の間ではないか。
  • 服を着るきっかけになったのは、寒い冬のある日に、ひとりの少女が手作りの帽子をかぶせてくれたのがきっかけ。
  • 以降、ボランティアで誰かが服を着せる事が定着していったという。
  • ここ10年ほどは港区(浜松町の所在地)の手芸グループ「あじさい」という団体がボランティアとして毎月アイディアを考え服を着せているらしい。

少女のエピソードも魅力的だが、それより僕が気になったのは手芸グループの存在だ。なるほど、あの完成度の高い衣装は手芸グループによるものだったんだ。

毎月アイディアを考えあの衣装を作るのはかなり技術と根気が必要だ。僕は強いリスペクトを覚え港区社会福祉協議会の手芸グループ「あじさい」のかたに会いにいくことにした。

 

手芸グループ、「あじさい」の作業現場へ


手芸グループあじさいは月に2度、区の会館に集まって活動しているようだ。

 

秋の小便小僧。
消防服を着る小便小僧
お話を聞かせていただいたあじさいの皆さま

代表、吉成さんに聞く。

毎月すごくよくできた衣装ですが、あれはすべて手作りですか?

「手作りです。毎月26日に着替えるんですが、着替えた直後は皆さん写真をよく撮ってますね。衣装は何にするかは私たちが意見を出し合って相談しています」

(各々が毎月意見を出し合ってその月の衣装を決めて制作する。なんだかプロジェクトXみたいだ)

何年前から「あじさい」さんは浜松町の小便小僧の衣装を作っているんですか?

1986年からなので、もう20年近くになりますね。最初は消防服を着ていたんですよ。

皆さまの反応はどうですか?

ほとんど好意的な反応ばかりです。でもたまに小便小僧が服を着ている必要はない、とか言われてしまうこともあるんですよ。あと、いたずらされることや持って帰られてしまうこともあるんです。モリゾーのときなんかはすぐ衣装を脱がせて持って帰られてしまいましたね。

(いたずらはやめましょう)

ちなみにあじさいにはどなたでも参加できるんですか?

  • もちろん誰でも参加できますよ。ただ希望としては
    針を持つのに抵抗がない人(手芸が好き)
  • (私たちはパワフルなので)喋るのが好きな人
  • アイディアがある人

が入っていただけると助かりますね。

あじさいの名前の由来は?

あじさいは小さな花びらの集合体で、ひとつひとつの花は小さいけど、集まればきれいな花になることから、この名前になりました。

ありがとうございました。

歯科医に寄贈され、ボランティアグループの手で衣装が着せられ、それを見守るJRの職員たち。
小便小僧が人々に愛されているのがよくわかる。

「おまえ、人気者だなー」と話しかけてみたがやっぱり小便小僧は小便を繰り返すだけだった。

===
後日、再び小便小僧を訪れると、小便小僧の前でシャッターを構える人に出会いました。このかたは新幹線愛好家で、この小便小僧も大好きらしく、小便小僧越しに見える新幹線をずっと撮影していました。

J1さんのホームページ

話を聞くと人の少ない週末はここで思う存分撮影しているそうです。小便小僧の魅力、おそるべし。


 

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