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コネタ


コネタ944
 
完全変態いそうろう
「必殺仕掛け鳥」とは私のことです

家の前に人糞をされるという、オリジナリティーあふれるストーカー被害にあったことがあります。

あれから数年経った今、今度は家の中にフンをまき散らされる被害に遭遇しました。

前回は明らかに人間のフンだったわけですが、さて今度はどなたの仕業でしょうか。

なんとなく察しはついています。

リベンジをかねて、超被害者である私が、犯人のストーカーをしてみたいと思います。

(text by 土屋 遊

10月31日 犯人像

うちの食物を許可なく食べてるという新たな事実も明らかになった犯人とは、いったいぜんたいどこのどなただったのでしょうか。
不法侵入および無銭飲食・迷惑条例違反、場合によっては精神鑑定なども含め、訴えることも充分可能です。


こんにちは。ボクですよ。

お前か。

惜しげもなくその姿をあらわした、何か(おそらく蛾でしょう)の幼虫。

お花屋さんから、期せずしてはるばる大移動してきたのでしょう。きっとその前は花問屋、花農家を経由してやってきたのかもしれません。

お腹をすかせた名もなき彼を、笹塚交番に突きつけることなどできましょうか。私にはできません。そんなことをしたら、むしろこちらが警察もしくはある種の病院へ放り込まれてしまいます。

しかたない。

不法侵入者から『居候(いそうろう)』に昇格して、最後までとことん面倒をみることにしましょう。

 

よっこらしょっと
ちょっと休憩
ぼくはキレイ好きなんだ
おーい!もうすぐメシなくなるよー

11月1日 はじめての放し飼い

『昆虫を飼う』という行為には、多少のうしろめたさを感じてしまうのが大人の常。
本来であれば、大自然の中で自由を謳歌しているであろう彼らを、小さなカゴに閉じ込めてしまうのですから良心がとがめます。

しかし今回はどうでしょう。

虫アミで捕まえてきたわけでも、大金をはたいて購入してきたわけでもありません。
ポジティブな解釈をすれば、自然な流れで我が家にやってきたのです。

その旅人を、放し飼いで飼うことが出来る。

飛んだり跳ねたり三段跳びなどをして、私を驚かすこともない。

目がウロコとはこのことでした。1ミクロンの曇りもなく、すがすがしい気分で昆虫を飼うことなど初めてです。

私は訪問者がくるたびに、我が家の居候を紹介しました。

 

11月2日 大食漢の居候

居候であるからには、多少の『遠慮』というものが不可欠ですが、こちらはその自覚ゼロ。
あきれるほど菊の花びらを食いまくります。
一輪をきれいさっぱり食したあとは、ものの見事に移動する曲芸もご披露してくれました。

「ちょうちょう」の歌に「花から花へ〜」という一節がありますが、幼虫もまったく同じだということを学びました。
ちなみに、食したぶんだけきっちりフンを残していく律儀な性格だということもご報告しておかなければならないでしょう。たいしたものです。

それにしても。
百合の花びらは美味しくないのでしょうか。たしかに菊の花は人間でもワザビ醤油でおいしくいただくことが出来ます。さっぱりキョーミをみせないので、明日にはまた別の食材を調達してくることにします。

 

 

11月3日 夜 反抗期

花屋さんで、美味しそうな花を吟味する日がこようとは思ってもみませんでした。かつて、一晩でレタスをペロリと平らげた同棲相手、チョウチョの幼虫のことを思い出してレタスも購入します。

(ただいまー)

一足遅かったのか、いくら声をかけても居候は返事をしません。返事をされてもまた困るのですが、姿さえもあらわしません。とっとと"おかわり"を用意しない私に腹を立て、家出を決行したようですがこのせまい部屋の中です。腹をすかせてすぐに戻ってくるだろうともくろんだ私はたいして探しもせず、『レタスで釣る』という作戦に出ました。


よりどりみどりの美味しそうな花々

 

11月4日 朝 理由ありきの家出か

迷子にでもなってしまいましたか。
朝になってもまだ現れません。空腹で死んでしまったのでは……と、急に心配になりました。


レタスも待ちわびています

 

11月4日 夜 錯乱中の居候発見

帰宅直後、迷子になっていた居候を発見しました。


あああっ!あそこに見えるはまさか!

どうしたのでしょう。カーテンの柄に食らいついています。
そういえばまだ小さかった弟が新宿で迷子になった時、恐怖のあまり、彼の大きく開けた口がしばらくふさがらなかった記憶があります。
この小さな居候も、空腹と恐怖、そしてさびしさのあまりにパニックを起こしているのかもしれません。


なにこれ。まずい。(苦手な方は注意!衝撃の食いっぷりはクリックで表示!)

そっとレタスの上に、おいておきました。

思う存分お食べ……

しかし、レタスはお口に合わなかったのか、それとも箸でつまんだのが気にいらなかったのか……すっかりスネてしまった居候。レタスの中で、クルンと丸まったまま固まってしまいました。
そのとき私は、まさかそのお姿を見納めになってしまうとは思いもよらず、バッカだなあーハハハーと、死んだフリをしているおつもりの居候を微笑ましく眺めていたのです。


ぼくは死亡中です。

 

11月5日 朝 家出、ふたたび。

よほど私のおせっかいが気に障ったのでしょう、居候の姿がありません。
レタス、おいしそうな花、あたたかいテレビの後ろなど、思い当たる場所のすべてを探してみましたがどこにもいません。
その日は予定を変更して、丸一日居候捜索にあたりましたが、とうとう私の前に現れることはありませんでした。

どこかで干涸びていたらヤだな……

踏んでしまったらもっとヤだな……

寝てるとき、口に入ってきたらもっともっとヤだよな……

二度の家出のあと、私はようやく居候に『シャックムネオ』という名前をつけて、友人や家族、ネットでも捜索願いをだしました。


よく見たら指名手配でした。

12月4日 夜 変装シャックくんとの再会 あれからきっちり一ヶ月たった寒い日。
掃除をしていたらタオル入れのカゲからポロッとコゲ茶色の物体が転がってきました。

姿形は進化をとげていますが、シャックくんです。まちがいありません。アナタにはわからないかもしれませんが、私には一発でわかります。立派なサナギに成長しても、シャックくんの面影はたしかに、ありました。
手でそっとつまんでみると、フリフリと腰を動かして、全身で再会のよろこびをあらわしています。(もしくはいやがっているともいいます)


寝ているのかどうなのか

ふ化するかどうかは定かではありません。最悪の結末が待っているかもしれませんが、やはりいつもシャックくんがいたあの場所に、小さな部屋を作りました。
今回ばかりは行方をくらますこともないと思います。

そして5日後のある夜……。


大人だぜ、ばかにすんなよ

 

12月9日 夜 さらば、居候ライフ

見事に大人になったシャックムネオくんの凛々しい姿。

ポケモンでいうならば
キャタピー>トランセル>バタフリー。

進化する"むしポケモン"を生で目撃したわけです。
じっと見つめていたら、「うぜーよ」というかのように私に背を向けてからバサッと飛びました。初飛行です。

息子や友人に見せたい、と思いましたが、バカスカと壁やら電気に突進しています。脳しんとうなど起こされてはたまりません。窓を開けたら、「待ってました」とばかりに飛び出していきました。なんの挨拶もなく大変失礼です。


空き家
固定するための接着剤(?)をだしていました

都心の小さなマンション、この悪環境のなかでけなげにも完全変態を遂げたシャックムネオ氏。「かわいい」なんて思う人は、おそらく世界中でただ一人、私だけかもしれません。
みんなで作る日本蛾類図鑑の掲示板にてお訊ねしたところ、『オオタバコガ』という種類であると教えていただきました。
調べてみると、農作物を食い荒らす嫌われもののようです。

なるほど、あの自由奔放ぶりに振りまわされたのも納得です。
どんな暴れん坊でも、生でその成長を目にするとなんと感慨深いことか。さすが、ポケモンの進化とはぜんっぜんちがうなーと、しみじみ実感した冬の夜でした。


元気でね。

後遺症

花屋で花を物色するたびに、おいしそうな花、いかにも虫が付いていそうな花を探してしまう後遺症に悩まされている私ですが、現在は、自転車のカゴを最終形態の舞台にえらんでくれたアゲハのサナギと、ケセランパサランの成長過程をしずかに見守っています。病み付き。


どこへ行くのも一緒です
フンしないからとても楽

ところで『イソーロー』は『シソーノーロー』と似ていると思います。


 

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