高級感をかもし出す手法の一つ、木目調。
木でないものを木に見せかけるというやり方でハイグレードな感じを出す。自動車の内装などでも高級車は木目調だったりする。
そういう記号性ゆえか、世の中にはとりあえずなんとなく木目調になってるものもあると思う。
どうなんだろう、もしかしたらだまされているのではないか。木目調にすると高級感が出るのかどうか身のまわりのもので試してみました。
(text by 小野 法師丸)
木目アイランド・ホームセンター
木製でないものを木目調にする。プロの塗装屋さんの中には本物と見まがうような木目調にする技術をもっているところもあるようだが、素人にも手軽に木目化することのできるアイテムがホームセンターで売っている
粘着シートコーナーに行くと、かなりリアルな木目が描かれているシートがある。木目ファンのマストアイテム、木目シートだ。
さっそく木目化実践編といってみよう。まずはこれ。
無機的にピカピカ光るCD。世の中に登場してかなりの時間が経つが、個人的にはいまだにキラキラしたディスクを見ると「未来っぽいな」と思う。木製ではありえないCDを木目化するとどうなるだろうか。
おお、やっぱりかなりテイストが変わる。そこに未来っぽさはない。
ただ今回のこの企画は、「木目にすると高級感が出るのか」ということを検証する趣旨だったと思う。別に未来っぽさをなくしてみようということがテーマではない。
で、高級感だが、ちっとも出ていないと思う。むしろ野暮ったくなってはいないだろうか。
高級感をあきらめはじめる
続いて試してみたのは包丁。刃の部分は金属製なので、やはり木製ではあり得ない系だ。
実際に目にして覚える、思っていた以上の違和感。高級であるかどうかという次元はすでに忘れ去られ、だまし絵のような感覚にとらわれる気がする。
同じ金属系として乾電池も試してみた。
木目化することで、電気な感じがすっかり抜かれた乾電池。役に立ちそうもない無駄な感じが期せずして出てきてしまっている。おかしい、ちっとも高級感が出てこない。
植物系を無意味に木目化
ここまで木製ではあり得ないものを試してみたが、木と同じ植物系のものでやってみるとまた違った印象になるのではないだろうか。手ごろなところでニンジンを木目化してみた。
木目調のニンジンというより、単なる棒になってしまった。使途や意味もさっぱり伝わってこない、謎いっぱいの棒だ。
観葉植物の場合、木目にしたにも関わらず、際立ってきたのは人工的な感じの方だった。あからさまにそこだけ浮いている感じ。やはり高級感とかはもう全然関係なくなっている。こんなはずでは。
木製だけど木製じゃないように塗装されているものをもう一回木製風に戻してみるというのはどうか。色鉛筆でやってみた。
初めて出たかもしれない高級感。ただなんとなく感じる違和感はなんだろう…と、考えて気がついた。木目を横にして貼ってしまったのだ。そうじゃないだろうという木目の方向。
木目への無理解が引き起こした失敗だが、それでも今回唯一高級感のようなものが引き出せた感じはする。
仲間はずれのむらさき
高級感を出そうと思っての今回の試みだったが、はっきり言ってほとんどそれは出なかった。
ただひとつ高級感かもしれない感じになった色鉛筆、原料回帰がそうさせたのかも知れないが、ケースに入れるとなじめない転校生のようになってしまった。
急にナチュラル派になったむらさきに戸惑いを隠せない他の色たち。
これを機会に、「木目=高級」という、自分の中にあったまずしい認識を改めたいと思います。