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特集 12月のテーマ:夜

12月のテーマ:夜
甘酒ショック療法



12月某日(平日)13:00 神田明神、天野屋

お茶の水の駅を降りて5分ほど歩くと、神田明神に着く。
鳥居の左横にあるのが、目的の店「天野屋」だ。
創業1846年という、気合い入りまくってる老舗。大人向けグルメ雑誌で甘酒ネタをやるときは必ず登場する、東京一有名な店らしい。

みやげ物や味噌などを売ってる売店の隣に、喫茶スペースがあった。
足を踏み入れると、プーンと独特な匂いがした。これが麹の匂いだろうか?
テーブルと椅子は民芸調。ガラスケースには、江戸切り子のグラスがたくさん飾ってある。古い置き時計がチーンチーンと鳴っている。

平日昼過ぎだったので、客は私しかいなかった。
座ると、まず熱いほうじ茶を出された。こういう店って、水じゃなくてお茶だ。

メニューを見ると、甘酒は400円だった。
アイス甘酒なんかもあったが、今回は基本のホットを頼んでみる。

テーブルの下を見ると、天野屋の記事が載った雑誌が置いてあった。
「甘酒は白粥に麹を加えて発酵させたもの」「とくに天野屋の甘酒の原料は米だけ。天然の甘味で、砂糖は加えてない逸品……まさにスローフード」
なるほど。酒粕で作るやつとは、わけが違うのだ。

甘酒はすぐに出てきた。

オマケに口直しが付いていた。なめたらしょっぱかった。これが、甘酒と並んでこの店の名物である「久方味噌」らしい。

湯のみの中をのぞいてみる。
お米の形が残っている。
「もともとは、おかゆ」というのが目で見てとれる。

ふわあっと、独特の発酵食品の匂いがする。きっと甘酒好きの人には、たまらない香りなんだろう。
うう………つばを飲み込みながら、覚悟をきめる。
ごく。

ん?

自宅で作る味とは全く違った。
まさに米の味。甘味はきつくなく、ほんのり自然な甘さ。
酒のしぼりカスを利用して作るものより、ゴージャスだ。味が複雑で、厚みがある。

決して「まずい」とは思わない。
でもやはりコップ3分の1で気持ち悪くなった。
いや、でも今回は全部飲んでみようと腹に決め、ちびちび、ちびちびなめてみた。

ときどき麦こうじをつまむ。甘いものと辛いものを行き来すると、舌がこんがらがってくる。
ああ、日本人はライスプディングとか、米を甘くするのは苦手なくせに、どうして甘酒は平気なんだろう。
かなりパンチのある、変な飲み物なのに………。

30分かけて1杯を飲んだ。
胃を重く感じながら、神社内を歩く。結婚式があったようで、ちょうど記念撮影をしていた。
きれいな花嫁さんを眺めていたら、ゲップが出た。

さあ、次は人形町だ。



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