●あしたのためにその2
「泪橋交差点を中心に散策するべし」
「この橋はな、人呼んでなみだ橋という
いわく人生にやぶれ生活に疲れはててこのドヤ街に流れてきた人間たちがなみだで渡る悲しい橋だからよ
…中略…
だが今度はわしとお前とでこのなみだ橋を逆に渡り、あしたの栄光を目指して第一歩を踏み出したいと思う」
〜「あしたのジョ−」文庫版(講談社)第3巻より〜
ジョーが少年院から出所すると、泪橋の下に「丹下拳闘クラブ」というジムが出来ている。それをジョ−に見せ、今後の決意を語った丹下段平のセリフだ。
「わしの言うてる意味が分るか?」
段平はジョ−の肩を掴み、2回聞く。
段平とジョ−が人生の再起をかけた泪橋はもう既にそこになく、交通量の多い交差点になっていた。泪橋を逆に渡る事はもう出来ない。
せめて、信号が青の点滅になった時に普段なら走らないのにダッシュしてみる、くらいなら出来るがそこに人生の再起はかかっていない。
泪橋交差点を中心に広がる山谷地域は今でも簡易宿泊所が多い。「あしたのジョー」の中では
「泊まり120円 寺田屋」「簡易旅館よしの 風呂あり150円」
といった簡易宿泊所の看板が出て来るが、現代ではさすがにその値段で泊まる事は出来ない。大体2000円代でテレビ・冷蔵庫付き、というのが相場のようだった。僕が歩いてみた限りでは「りょかん あかつき」の1泊900円が一番安かった。
シャッターがおりたままの商店が目立ち、路上に座り込んで将棋を打っている人たちや、フラフラと歩き回っている人たち(大体2人組)や、自分が信号無視をして車に轢かれそうになっているのに、その車に蹴りを入れようとしている人などがいた。
街中で立ち止まるとこの場所にいてはいけない人オーラが出てしまうので、とにかく僕もウロウロしていた。小1時間ウロウロしている間に3回くらい会ってしまう人もいたりして、パックマンの中にいる様な気分になってしまった。
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