■ヒヨコから120日間は準備期間
愛鶏園の創業は大正12年。横浜での飼育からスタートし、昭和41年に現在の埼玉県岡部町に移転、オールイン・オールアウト方式の一貫生産を確立した。 オールイン・オールアウト方式とは、雛から成鶏までの育成、そしてタマゴの出荷までの全ての過程を自社でまかなう事。 その一連の過程を案内してくれたのは3代目にあたる斉藤大天さん。
「じゃあ、まずはヒヨコたちの所に行きましょう」
クルマで案内してくれた先は育雛舎(いくすうしゃ)という生まれたばかりのヒヨコが入る飼育場。
「鶏は生まれた日数で年齢を数えます」 この育雛場で飼育されるのは0日齢から45日齢までのヒヨコ。 「人間で言ったら赤ちゃんから幼稚園までですね」 生まれてから45日でもう義務教育。
「ここにいる期間はとにかく手塩にかけて大事に育てます」 生まれたばかりのヒヨコはとにかくデリケート。徹底した温度管理で母鶏の羽の中と同じ温度の中で育てられる。
ここでは45日齢から120日齢の鶏が飼育される。 「育雛舎とはうってかわって、ここでは徹底したスパルタ教育を施します」
人間に例えると小学校から大学までの期間にあたる育成舎では、岡部地方の厳しい気候に耐える力を養うため、厳しく育てていくとの事。 勧誘の時までは優しかったのに、入部するといきなり厳しくなる体育会系クラブと同じ仕組みだ。
「鶏は特に暑さに弱いので、そうしないとこの土地では対応していけないのです」
義務教育に入った途端、厳しい現実を突きつけられる鶏たち。
ふと、ここで疑問が浮かぶ。 タマゴを産ませるために育てているという事は、ここにいるのは全部雌鳥という事か?
「はい、そうです。基本的には全部雌鳥です」 女子高だ。 「でも、雄雌を仕分ける段階の精度は完璧とは言えないので、たまーに雄鶏が混ざっている場合があります」 「えっ?どうやって分かるんですか?」 「雄鶏はコケコッコーと鳴きますから」 コケコッコーと鳴いた鶏は鶏舎から出て行かないといけない。 「その鶏はどうなるんですか?」 「うーん、可哀そうだけど……」 食肉用として出荷されてしまう。雄の悲しい運命だ。
「それでは、120日齢が過ぎた成鶏が送られる成鶏場に行きましょう」