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特集


エキサイティング火曜日
田んぼと橋と私と酒
今週は青春18きっぷスペシャルウイークをお届けしています。「青春18きっぷウイークとは?」


私の苗字は「金巻(かねまき)」と言う。
少なくとも出身地の横浜ではめずらしい苗字で、今まで親族以外に同じ苗字の人に会ったことはない。
あれは小学生の頃の話だ。
社会の時間にぼんやりと地図帳を眺めているときのことだった。
広大な新潟平野に「金巻」という地名があった。

珍しい苗字と自分の名前を認識していた私は、地図帳で同じ名前を見つけ驚き、いつかその場所に行ってみたい、と心に決めた。
学校にあった姓氏事典で「金巻」を調べるとはやり、新潟県の地名、というように出ている。
他に由来としては「鐘巻」が転じて「金巻」というのもあるようだった。
どちらが私の「金巻」の由来かはわからない。
少なくとも曽祖父まで横浜に住んでいることだし。
なんにせよ、私にとって「金巻」という土地が特別なものであることには変わりない。
というわけで、青春18きっぷを使って、小学生の頃の夢を叶えてみました。
(text by 金卷 朋子


駅のシャッターが開くところなんてはじめて見た。閉まってるところなら見たことがあるけど。

電車の中で朝ご飯。電車が走りだした瞬間、周りの人がいっせいにごはんを食べ始めていた。となりのおじさんにいたってはきゅうりを丸ごと食べていた。

高崎と水上の間で天気がどんどんとよくなっていく。山間の景色が美しい。

長岡で食べた駅弁。越後長岡花火寿司。小さなサイズのカップに4種類の寿司がつまっていてオトク。これはいくらごはん。うまかった。

前準備と長く果てしない道のり

インターネットで調べると、とりあえず東京から新潟まで日帰り旅行が可能ということがわかった。
ちなみに上野出発時間は朝の5時という恐ろしいスケジュールだ。

さらに「金巻」は新潟駅のすぐそばにあるわけではない。
新潟駅から少し先の「内野」という駅から少し離れた場所にある。
新潟駅から内野駅までの所要時間はおよそ20分。
内野から金巻までの距離はわからない。
金巻には金巻橋と金巻神社があるというのでそこを目的地に据える。
日帰りが可能な新潟滞在時間は2時間となる。
ついでに「内野」について調べるとなんと内野は新潟でも有数の酒どころだと言う。
「金巻」にほど近い「内野」が酒どころなんて、そりゃあ飲むしかない! と心に決め私の旅ははじまった。

朝4時。家の周りは暗い。暗いどころか雨が降っている。
そもそも4時に出発ということは3時半には起床しなければならない。
そんなことが夜型人間のフリーライターにできるわけもないので当然徹夜明けだ。

最寄駅の飯田橋につくと、まだシャッターが開いていなかった。
力みすぎたか。
シャッターが開き、ホームへ向かう。
ここで私は決断を迫られた。
傘がいらないのだ。
確かに東京は雨がばんばん降っている。
だが天気予報では新潟は快晴。
快晴の中傘を持って15時間近く歩く―――そりゃムリだ、と判断し、傘を駅のゴミ箱に捨てた。
多分寝不足で頭がおかしくなっていたのだと思うが、あとでこの判断は成功だったことが判明する。
とりあえず総武線の始発で秋葉原に向かい、そこから上野へ。
んでもってそこから高崎に行き、水上で乗り換え。
水上からは長岡、そして12時くらいにようやく新潟につき、そこで乗り換え、内野に―――というルートだ。
所要時間およそ8時間。
なにが楽しいのかと突っ込みたくなるような行程だが夢をかなえるためなのでしょうがない。



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