公園が台所
快晴の日を見計らい、今度は公園に来てみた。今日も寒い。気温は14度。それでも準備をしていると背中に太陽の光を受けて暖かかった。ここは一つお願いしますと、太陽に向かって完全にへりくだった態度で臨む。
セッティング完了。今回は公共の場所、公園が私の台所だ。ベランダのときよりも強まるスペシャリティ。「おーい、公園で卵茹でてるんですよー、しかも、傘で!」叫び出したい心を落ち着かせる。
しかし。開始直後から事態は笑えない方向へ。
よかれと思った「遮る物のなさ」が災いした。風当たりが強い。温度が上がっても、風ひと吹きでまた下がってしまう。しかも、傘自体が風で飛ばされそうだ。どうにかして傘、ついたて型の二つを飛ばされないように押さえる。気分は巣から卵を守る親鳥。親鳥とは卵を守る動機が正反対だけど。
それでも風は止みそうにない。どうしよう、そうだ、電話で誰かに手伝ってもらおう! ポケットの携帯に手を伸ばした一瞬のスキに、傘が飛ばされてしまった。
無惨に芝生の上を転がっていく台所、いや、傘。アルミで武装した近未来感はまるでなく、ちょっと捨てるのがめんどくさいゴミみたいになってる。
私はただ、ビニール傘で茹でた卵が食べたいだけなのに……。あまりの仕打ちに言葉を失うが、 ここで諦めては男がすたる。諦めずに無風かつ、十分に日光を得られる場所を探すことにした。
後でニュースで見たら、この日は木枯らし一号が吹いたということでした。
木枯らし……。
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