お昼時の立ち食いそば屋さんはお客の回転が早い。１人の滞在時間は平均3分程度だ。
立ち食いそば屋は忙しい時間帯にスープの温度を低くする、と聞いた事がある。そうする事でお客の回転が早くなるのだという。ちなみに銭湯は忙しい時間帯にお湯の温度を上げるらしい。

客層は主にサラリーマン風な男性たちで、誰もみんな迷わない。お店に入る前から注文する品を決めているようだ。
そりゃあ、そうだよなあ、みんな大人だもんなあ…。難しい商談とかこなして外国人と握手したりしてるんだろうし、そんな忙しい人たちがカレーうどんの匂いに誘われたりする訳ないよなあ……。

と、その時、おばちゃん2人組が戦場の様な店内に迷いこんで来た。
これはチャンスだ！

注文カウンターの前で何にしようか迷うおばちゃんたちの背後にカレーうどんを近付ける。
ほらっ、ほらっ、この匂い。

「んー、どうしようからしら…」
ほらっ、ほらっ！
「あっさりしたのが、いいわね」
「そうね、そうね」

結局おばちゃんたちはおろしうどんに。何だよ、おろしかよ。

おばちゃんたちの決断にがっかりしていたら、
「カレーうどん」
と不意におじさんの声。
おおっ、ついにカレーうどんの注文が入った。

カレーうどんを注文したおじさんは、僕の右手奥、カメラを持って待機するスタッフの真横に立った。
何て都合のいいおじさんなんだ！

その後も次々とお客が回転していくが、結局カレーうどんを食べたお客はこのおじさん1人だけ。

いつまでも店内で粘る訳にもいかず、20分程でお店を出ることにした。

中々思うような成果があげらない。
ステージを次のお店に移し、更なる挑戦は続く。