17時 宮崎空港から延岡へ
羽田空港から約1時間半のフライトを経て宮崎空港に着いたのが17時。
そこから特急電車で1時間半、延岡駅に向かう。
林「あ、雄司だけど、今空港から電車に乗ったから、えっ?住さんはタバコ吸わないよ、うん、うん……」
林さんのご両親は10年程前に東京から延岡市に引っ越し、田舎暮らしを満喫されている。自給自足を目指すお父さんのユニークな生活ぶりは、林さんのレポート「ハイテンション田舎暮らし」に詳しい。大量に能面を自作したり、大量なウコッコケイを飼ったり、大量なほだ木でシイタケを育てたり……。
これから僕はそのハイテンションなご実家に林さんと一緒に1泊させていただく。
住「どんな話をしたらいいんですかね」
林「心配しなくても親父は話し好きなんで、ずっとしゃべってると思いますよ」
住「初対面でも、ですか?」
林「ええ、とにかく話し始めたら止まらないから、そっちの方が心配です」
住「でも、気まずい沈黙よりいいじゃないですか」
林「うーん……」
林さんは考え込み、しばらくすると眠ってしまった。
徹夜明けだったらしく延岡駅に着くまで、コクリコクリとやっていた。
「19時 林さんの実家に到着」
延岡駅からは車で山道を行く。
細くクネクネとした道を登り林さんの実家が近づいてくる。外はもう真っ暗で星が目立っている。
15分ほどで家に着くとご両親が満面の笑顔で僕たちを迎えてくれた。
「どうもどうも、寒い中、忙しい中、その上こんなに遠い所まで!」
お父さんは節のついた言い方でそう言うと大声で笑った。
お父さんと握手をすると、ここに来るまで抱いていた不安が吹き飛んだ。
東京からお土産に持って来た焼酎とお茶を渡す。
「まあ、そんな事!」
お母さんが恐縮してこっちも恐縮してしまう。
「この焼酎、東京でお父さんがいつも飲んでたやつだわ」
僕のセレクトは六調子という米焼酎で、偶然にもお父さんの好みにあった。
お父さんは焼酎の箱を手にすると裏を見て笑った。
「そうそう35度、これがおいしいんだ!」
林「親父、強い酒が好きで、昔はよく焼酎を煮詰めてたんですよ。そうすると度数が上がるとか言って、部屋中アルコール臭くして……」
お父さんは六調子を床の間に飾った。
「さあ、住さん。お風呂入りなさい。この水は井戸水で、いい湯になってるよ」
着いて10分もしないうち、僕は林さんの実家でお風呂をいただいている。
バスクリンで緑色になったお湯につかりながら、人生の不思議を思う。
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