並木町の信号が青に変わり再び走り始める。

原付バイクって実はガソリンで走っているんじゃなくて
「ガソリンは気持ち入れておいてくれたら、まあ、どこまででも行きますわ」
っていう善意の固まりみたいなシステムで動いている乗り物なんじゃないか？
だったら永遠に走り続けないといけないのか？

そんな覚めない夢の中にいる様な不安に駆られ始めた頃、パスンッ、ポンッポンッ、とそれまでにない爆発音がマフラーからして、あっけなくエンジンが止まった。
いくらアクセルをふかしても、もうどうにもならない。惰性で進むバイクを道路の脇に停めた。

最終到達地の住所は、東京都八王子市東浅川町70-2
だった。

新宿を出る時8618.4キロだった走行メーターは、8659.6キロになっていた。

2時間にわたる検証の結果……
130円分のガソリンで原付バイクが走った距離は、41.2キロメートルだった。

東浅川町70-2には、ラーメン屋が2軒並んでいて静かなラーメン戦争が繰り広げられていた。

奥のラーメン屋は休みだったので手前のお店に入り、味噌ラーメンと餃子を頼んだ。

店の主人は僕がこれから高尾山に行くものだと決めつけていて、あそこに行ったってちっとも面白くないからやめときな、と忠告してくれた。

ラーメンを食べている間もいかに高尾山がつまらないか、という話をずっとしていて、いい加減うんざりしたが、とりあえず一番近くにあるガソリンスタンドの場所だけは聞き出して、素早くラーメンを食べ終えて店を出た。

バイクを押して最寄りのガソリンスタンドを目指す。
帰りも130円分だけ補給する事にしよう。