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特集


はっけんの水曜日
 
そうだ、ヤキソバの町へ行こう

ヤキソバをよく食べる。3食入り198円の、野菜といっしょにいためて、粉末ソースを入れて仕上げる、安いやつ。冷蔵庫に常備してある。何しろカンタンだし、昼ごはんに最適だ。「いいとも」見ながら、もそもそ食べる。何も考えずに、口に運べるのがいい。

小さい頃から、ずっとその「3食パックヤキソバ」しか食べていない。
たまに「お祭り」や「海水浴」で食べるやつは、また別モノだ。家で作るものより、まずいけど、うまい。

生まれてからこれまで、何回食べたか分からないほど、大量に「ヤキソバ」を摂取している……のに、今まで「ヤキソバ」の味に関して、深く考えることはなかった。
「おいしいじゃん」ただ、そう思っていただけ。

だから、「ヤキソバが名物の町がある、しかも日本に3ケ所(秋田県横手市、静岡県富士宮市、群馬県太田市)もある」と知ったときは、驚きだった。

ヤキソバ? ヤキソバの味に、そんな違いがあるの?

今回はまず、東京から近い「太田市」に行ってみることにした。

(text by 大塚幸代


北千住から東武伊勢崎線に乗って、ひたすら北上する。
準急で90分で、JR太田駅に到着した。




何にもない駅前。私の故郷、埼玉県T市とタメを張るくらいの、ガランとした、地方都市の感じ。
そこらへんを歩いているのは、扶養されている年令の、学生服の子供たちばかり。静かだ。すべての音が、遠く聞こえる。

「……旅情、ってほどじゃないけど、遠くに来た、っつー感じしますね」
「こういう雰囲気、好きですけどね」

同行してくれた友人・タカセさんと、駅前にあった地図をながめる。
太田市観光協会のサイトにあった、ヤキソバ屋さんリストをプリントアウトしたものを広げて、照合する。

「うーん、いちばん近い店は、駅前の『ベルタウン』ってビルの中にあるみたいですね」
「そこに行ったら、無料観光マップとか、置いてありますかねえ……。ベル…タウンって、どこですかね?」
「あ、あそこだ」




見上げると、看板が出ていた。

「……うわあ」

ベルタウンまで歩く。中は、若い人向けのお洋服屋さんが、幾つか入っていた。




「うわ、服、安い」
「私、こういう、さびれた感じのファッションビル、大好きなんですよ。落ち着くんですよ」
「分かります、分かります」
「……でも『さびれた感じが好き』なんて言ったら、地元の人、気分悪いかなあ」
「うーん」
「日本のほとんどの場所……東京以外の場所って、こういう、ゆっくりした空気が流れてるんだと思うんですけどね」

目的の店「しぐれ亭」は、1階の軽食コーナーにあった。学食のような雰囲気。客席はほとんど埋まっていた。

「……焼きそば、メニューにないですよ」
「でも、『焼きスパ』ってのがありますよ」
「スパあ?」




とりあえず頼んでみることにする。

ジュージューと麺がこげるにおいが、ずっとしていた。働いているのは、若い女の子ばかり。

「5番のフダをお持ちの方、お待たせしましたー」




……こんなんが来た。

ソースで炒めたスパゲティ、ごまのふってあるゴハン、わかめスープ。つけ合わせの野菜には、オレンジのドレッシングがかかっている。




「……おいしい」
「おいしいですね」
「だけど、焼きうどんみたいですね。ソース味だけど」
「昔、こういうの、お母さんが作ってくれましたよ」
「うそお。こんなの食べるの、初めてですよ」
「……」
「……」
「……私たち、いきなり、ちょっと亜流な店に来ちゃったんじゃ、ないですかね?」
「そうかもしれませんね」


 

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