「朝市」……この、魅惑的な響き。
安くて新鮮な野菜、魚介類、華やかな売り声、素朴な人々との会話、そこでしか買えない名物、笑顔、プラプラ歩く幸せ……実際行ったことのない私には、憧れがあった。
よし、行ってみようか、朝市へ。
とはいうものの、遠出する予算はない。そこで、東京から行ける朝市は無いだろうか……? と、調べてみたら、あった、あった。
それが「三崎港」の朝市。品川から電車で一時間、バスに乗り継いで20分で行ける距離。
毎週日曜日の朝5時から9時まで開催されているという。
「都内からは、どんなにがんばって始発で行っても、7時着だなあ……前日の終電で行って、港で夜明けを待つのはどうかしら?」とも考えたのだが、キケンなのでやめた。
前日、フトンに入ってからも、起きれるか心配で心配で、結局、徹夜。
じゅうぶんに支度する時間はあったのに、なぜかアセって右目にコンタクトが入らず、
「もういいやっ片目装着で出かけちゃえっ」
ぼやけた視界のまま、家を出た。電車に乗る。不安だ……。
(text by 大塚幸代)
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