お母さんが帰って来たよ
明らかに2人の作業ペースが落ちて来た頃、土屋君のお母さんが仕事から帰ってきた。
「どうもすみません、これ食べて下さい」
肉マンの差し入れだ。絶妙なタイミングで現れた肉マンに、僕と土屋君のテンションが上がる。さすがお母さん。子供をやる気にさせるのがうまい。(この時点で僕もお母さんの子供の様な気分になっています)
「おいしいね」
「うん。おいいしい」
肉マンを食べてすっかりやる気が戻り、作業を再開。残り8つの造型に手をつける。
「そういえば、以前穴を掘ってましたよね。デイリーポータルで」
とお母さん。
「ええ。去年「穴を掘る」ってやりました」
「昔、うちの息子も掘ったんですよ、穴」
「穴を?」
「ええ、自分の手でアリの巣を作るとか言って」
僕と林さんはすぐに止めてしまったが、土屋君は1週間も穴を掘り続けたという。
穴を掘るのは容易ではない。僕も経験者だから分る。割とすぐ、堅い岩盤にあたってしまう。
「そっかー、大変だったしょ、穴」
「うん。でも面白かったよ」
穴を通じて打ち解ける2人。
君が大人になった時、まだデイリーポータルが続いていたら是非とも仲間に入って欲しい。そして一緒に穴を掘ろう。
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作業は急ピッチで進み、紙粘土での造型は終了した。
土屋君の絵具セットで彩色していく。
土屋君はカナヘビ、僕はオンブバッタのフンに色をつける。
「わあ、これ、凄くリアルですよ(写真1)」
息子の自由研究を手伝って、やっぱりフンに詳しくなったお母さんが誉めてくれた。
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