うっかりしすぎの彼

　香港の店の軒先には必ずと言っていいほど「濡れた床はすべるので注意」という警告看板があった。どういう背景があるのかはわからないが、しつこいくらいに掲げてある。

　ここまで言われると、普段床の滑りやすさにはあまり注意しない私も、確かに気をつけたくなってきた。香港はすべりやすい街なのだろうか。

　よく見るとそれらの掲示には結構個性もある。うっかり感がよく出ているもの、独特の作風のもの、同じことを伝えようとしているのに、本気の度合いやユーモア感覚はそれぞれだ。

　もう体制の回復は見込めない一瞬をとらえたものもある。あとは受け身を取ることに集中した方がいい。

　いつの間にか掲示の中の人に感情移入しているような気もしてきた。いろいろあるけど、がんばれよ。身を挺して注意を促す彼の姿を見ていただきたい。

意外な一面も

　彼の姿を見るのは圧倒的にすべり警告の掲示が多いのだが、他にもいくつか見かけることもできた。非常口の掲示は日本のものよりスピード感がある。

　うっかりすべりがちな彼だが、逃げる時はすみやかだ。意外とかっこいい。

　それでいてゴミを捨てるときにはまた別の個性を発揮するから演技も達者だ。これからもそのアクションで人々にいろいろな意味を伝えていってほしい。