作業開始から6時間経過
ようやく青Zくんの皮部分も完成した。あとはこれをかぶせて目をつけるだけだ。先が見えてきたので会話も弾む。
クラスで彼女がいるのは2割ぐらい。ただ、藤原の友人 T には彼女がいるそうである。
「T は夢の話とかするんですよ…。彼女が見た夢の話を」
夢の内容はこうだ。 T の彼女は悪い男に追われている。T に助けを求める。だが T は受験勉強で忙しいからと言って助けない。
「っていう夢を彼女が見たそうです」
「そんなこと話されても、どうしようもないよなあ」
「で『おれは彼女を大事にしてなかった』って勝手に反省してました。」
藤原の焦燥感、劣等感、そして嫉妬。勝ち負けで言ったら負け。
「『へー』としか言いようがないですよ…」
面白いのでさらに聞く
今年の体育祭の帰り、ファミレスに向かって歩いてる途中、ラブホテルの前を通りかかった。T はそこで
「ここ入った」
と言ったそうだ。
「そんなこと、聞いてないのに…」
聞いてる僕まで焦ってくるのはどうしてだろう。テスト終了5分まえみたいな気分だ。
しかし T は友人だ。文化祭でZくんの頭かぶらせてくれと言うかもしれない。そこにTの彼女もきて、ふたりがきゃあきゃあ仲良くするかもしれない。
「そしたら、壊します」
壊すなよ。せっかく手伝ったんだから。そして作業開始から7時間後、夜9時過ぎに青いZくんが誕生した。
|