9月10日午前11時。スト決行か?
9月10日。スポーツ新聞各誌はこぞってストライキ関連のニュースを一面で伝えていた。記事に目を通すと、かなりスト突入の公算が高いようだった。
30年振りのプロ野球、というスペシャルな状況にある足利市もその例外ではなく、スト決行ならば、予定されていたイースタンリーグ(2軍)公式戦、ヤクルト・巨人戦が中止となってしまう。
今回の試合を主催する足利野球協会さんに電話をかけ、開催前日の様子を問い合わせてみた。
「大変心配しております。とにかく今日の17時にいい結果が出るのを祈るだけです」
朝から明日の試合準備を進めつつ、一方でストが決行された場合に備えて、前売券の払い戻しなど諸対応のマニュアルを作成しているという。
正直、ストライキになって30年振りのプロ野球が流れてしまった方が話としては面白い、不謹慎ながらそう思っていた。でも、電話で野球協会の方と話しているうち、その深刻さが伝わってきて、そりゃあそうだ、何といっても30年来の大イベントだし。
野球を愛する足利の人たちや、プロ野球選手に憧れるちびっ子たちの為にも、出来ればストライキ突入の事態は避けたい。電話を切った時にはそう思える様になっていた。
9月10日15時40分。現地へ
15時40分浅草発の特急りょうもう号に乗って現地に向かった。
タイムリミットの17時までに現地に入り、決定の瞬間を現地で見届けたいと思った。
勿論、スト回避で喜ぶスタッフの人たちの姿を見たい訳だが、スト決行となって意気消沈してしまうスタッフ、という絵柄にも興味がないわけではない。
9月10日16時50分。足利市駅に到着
浅草から70分ほどで足利市駅に着いた。タイムリミットまであと10分。駅からタクシーを飛ばせばまだ間に合う。
浅草では小降りだった雨がすっかり本降りになっていた。スト回避でも雨天中止になってしまうんじゃないか? 試合が開催される予定の足利硬式野球場はドームではない。
タクシーの運転手に「野球場」と行き先を告げると、ミラー越しに僕を見て首からカメラをぶら下げているのに気付き、明日の試合の取材か何か? と聞かれる。ええ、ストライキかもしれませんけど、あっそういえば、ニュースやってませんかね?とラジオを入れてもらうと、ちょうどストライキ関連のニュースが流れていて、何と、ストライキは回避されたと言っている。
「えっ? 回避されちゃったんですか? スト?」
されちゃった、という言葉が出て来るあたり、やっぱり本音では「スト決行」に期待していたようだ。いかんいかん。
9月10日17時05分。硬式野球場
球場内にある足利野球協会さんの事務局を訪ねた。
入口で担当の方が来るのを待っていたら、テレビ局のクルーにカメラを向けられ「前売りを買いに来たんですか?」と聞かれた。いや僕も取材です、と答えると少しがっかりして照明を落とした。
スト回避のニュースを聞いて早速チケットを買いに来た地元の人。
そういう絵が欲しかったのだと思う。
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