もっとハンバーグの話をしよう
きっかけは2週間前、デイリーポータル専属和食処の「京菜」さんで打ち合わせをしていた夜の事だった。
「僕、ハンバーグが好きです」
ウェブマスターの林さんがボソっと言った。
どういう話の流れだったのか、今となっては思い出せない。ただ、その一言が、その場にいた大人たちの心を揺さぶった事だけは確かだった。
「あっ、僕も好きです…」
「僕も…」
忘れかけていた感情だった。
そうだよ、僕たちはずっとハンバーグが好きだった。大人だからって恥ずかしがる事はない。もっとハンバーグの話をしよう。と、それぞれがハンバーグへの想いを語り始めた。自分がどれだけハンバーグが好きなのか、を。
「僕の作るハンバーグはかなりうまいですよ」
京菜のマスター金澤さんが料理人ならではの角度で斬り込んできた。しかし、京菜は和食屋だ。メニューにハンバーグはない。それなのに、何故ハンバーグを?
「休日に良く作るんです。究極のハンバーグを」
自信満々な金澤さんのハンバーグのポイントは、普通のひき肉を使わないところらしい。ならばどういう肉を使うのか?
「近江牛のすじ肉をミンチにしたものを使うんですけど、これがうまい!」
すぐにでも食べたいから、今からそのハンバーグを作ってください。
僕と林さんで頼みこむが、この時、時間は深夜0時。
「いや、無理ですよ。材料がない」
いい肉を手に入れるのは大変らしく、1週間ほど時間をくれたら作れるという。
「仕方ないですね、待ちましょう。約束ですよ、1週間後にその究極のハンバーグとやらを食べさせてくださいね、きっとですからね」
1週間後にこの場所で、と約束を取り付けてその日は解散した。
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