宝くじ当選への道のり

　負荷のかかる行動を通して願を掛けるというのは、かなり古くから行われている行動ではないだろうか。自分の力だけではどうにもならないものを目指し、人は合理性とは別の努力をする。

　今回挑戦してみるのはマラソン。霊場巡りも言ってみればチェックポイント式のマラソンともいえるだろう。

　24時間テレビだってなんだか毎年走ってる。あれもなにかを願っていたんだっけか。

　走ることを通して叶う願いもあるかもしれない。普段はジョギングなんて全然しない私であるが、宝くじが当たるかもしれないなら走ってみたっていい。

　ストレッチで体をほぐし、いざ出発。海べりの道を走ったこともあって、潮風が心地いい。

　……まあ、適当に走って疲れてきたなと思ったところで引き返す。要は気持ちの込め方であって、距離が大事なのではないと思う。

意外と通じるマラソンパワー

　港町の人たちはいつも気さくに話しかけてくる。息を切らせてかがみこむ私にも、「なにやってんだい？」と、散歩途中で通りがかりのおじいちゃんが声をかけてきてくれた。

　「いや、宝くじ削ってて…」

　そうとしか言いようがない。ありのままのことを話した私に返ってきたのは、「…へえー、そうなんだ」という言葉。

　そうは言ってないけど「がんばれよ！」と言ってくれているように勝手に解釈して、くじを削るコインに力を込める。下がでこぼことしていてスムーズに削れないのもアウトドアならではの醍醐味だ。

　それでもなんとか削ると、おお、４等・1000円当選だ！おどろきのマラソンパワー。

　海辺を走る自分に疑問を感じていた私だったが、結果はちゃんとついてきた。これに気をよくして、さらにハードな願掛けに挑戦してみよう。

勢いあまって滝に打たれる

　さらなる本格的な願掛けをするために訪れたのは、千葉県・和田町にある花嫁街道というハイキングコース。有名なコースであるらしく、休日には多くのハイカーでにぎわうところだ。

　そのコースの始点から少し歩いたところに黒滝という滝があるらしい。断崖から落ちてくる滝で身も心も清めて、宝くじの当選を願おうというわけだ。

　そういうわけで来てみたのはいいのだが、待っていたのは予想以上の森っぽさ。

　ちょっと歩くと、見るからにやばそうなキノコが転がっていた。トゲトゲ具合がただ事ではなさそうだ。見ると、他にも何種類か生えてる。

　ほんとに大丈夫なんだろうか。思いつきで滝になんか打たれちゃって。

　よぎる不安はふくらむが、ここまで来てしっぽを巻いて逃げるのもどうだろう。とりあえずは滝を目指して歩いてみよう。