滝を前にびびりはじめる
うっそうと茂る緑の中をしばらく歩く。どんどん森の中に降りていくような具合で、なんとなく周囲も薄暗くなってきた。
募る心細さに気づかないふりをして歩を進めると、きれいな滝が現れた。思っていた以上に密林感ある、かなり自然派の滝だ。
先客の子供たちが木の枝が伸びている自然のブランコで遊んでいる。楽しそうだなあ、滝になんて打たれないで、こっちに混じってもいいくらいだ。
案内によると、この黒滝は高さが15メートル。あまりにちゃちな滝でも効果が薄そう、だからといって本格的な滝に打たれたら死んだりしそうな今回の願掛け。そういう意味で、この黒滝はカジュアルな気持ちで打たれるにはベストな滝と言えるだろう。
忍び寄る秋の気配に朝方は肌寒かったりもする9月。これから本格的に涼しく、そして寒くなっていくことを考えると、半端な気持ちでの滝修行は今がラストシーズンとも言える。
見れば子供たちも滝つぼの中にちょこっと入って遊んでいる。なんだ、大丈夫そうではないか。子供の様子を見てびびり気味に曲がっていた腰もしゃんとなる。
そう思って入ってみると、思っていたより滝つぼが深い。
あ、ああ…、もう背が立たない。なんとか泳いで滝までたどり着く。ここまででもヒイヒイ言っていたのだが、流れ落ちる水に手をやると結構な衝撃があってさらに不安になる。
でも、ここまで来たんだからやっぱり打たれなきゃ。なんとか岩肌にへばりついてみよう。
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