トマトそば、890円。その価格設定が適正なのかどうなのか、サッパリ分からないが。
中に入ると中国人らしき女性店員二人(茶髪)が、座ったまま顔をぱっと上げ、「イラッシャイマセー」と声を合わせて言った。
はしっこの席に座る。
普通の中華屋と何か雰囲気が違うなあ、何が違うのかなあ……とよく考えてみたら、「店内が妙に明るい」ことに気づいた。白い蛍光灯が、ばりばりと店内を照らしている。
こんなに明るいということは……やっぱり長居する店じゃないんだろうか?
「すいません、トマトそばを……」
「ハイー、トマトソバー」
厨房に向かって女性がオーダーを叫ぶ。どうも雰囲気からいって、調理人は日本人みたいだ。調理人が中国人の場合、中国語で何か言うじゃないですか。
瓶ビールを飲む時に使う小ぶりなコップに、冷水が運ばれて来る。
水を飲んで落ち着くと、店内の音楽が気になってきた。
なぜかサンバがかかっていた。
……なぜにサンバ?
隣に年配の男性2人連れが座って、ビールを頼んだ。
チャーララララララチャララララ〜
「おっと、ごめんよ」
男性客の一方が、携帯に出た。
私は「あれ、この演歌っぽい曲何だっけ?」と、その曲名をずっと考えていた。
女性店員が、厨房に向かって、シフトのことに文句を言っている。
「ワタシー、マイニチハイル、ワタシー、ツカレル、ワタシー、ニチヨウヤスミタイ」
厨房が何かしら答えている。
「*****!」
女性が文句を言っている。どうやら彼女の希望は叶えられないみたいだ。
しばらく待つと、ソバが運ばれて来た。
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