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特集


フェティッシュの火曜日
 
だんだん干物になってゆく

まずは眺める

干し上がった10匹をずらっと並べて検討に入る。鮭を食べた後でも、自分の手で作った干物を目の前にするとまだまだいくらでも白いご飯が食べられそうで大変に危険だ。

干し時間0時間から5時間のものまでは皮目がまだ乾いておらず、紙にのせるのにラップを敷いたが、それ以降のものは干物らしく両面しっかり乾いている。

並べてみる。おおー、なんだこの満足感は!

干物ではなく、開いただけの魚 10時間を経て完全に干物に

「色はやっぱり干し時間5時間から6時間あたりが美味しそうねえ」
見物にやってきた母、そういえば魚屋の娘なのだ。子供の頃は店でも干物を作っていたらしい。干せば干すほど旨みが出るものだと思っていたのだが、あれ、そうでもないの?

母の目が光る

食べてみないとどうにも感想も出づらく、早々に焼いてみることにした。条件を揃えるため、あらかじめ温めて置いたオーブンで10匹、5分で一気に焼く。

焼き、入れました

まあ、ただの焼き魚な訳ですよね それに比べ、堂々のこの干物感

 

果たして、その味わいは

干物いかんにかかわらず、焼き上がりは0時間ものから10時間ものまで、満遍なく美味しそう。ジャッジ気分を盛り上げるため、尻尾を切り取って番号を付け、いよいよ試食開始です。

商品開発してるみたいで嬉しい


私「0時間とか1時間のやつって、居酒屋で出てくるホッケの味がする…」
母「ああ、店なんかだと、腐らないように塩をうんと利かせるんじゃない? 干物にしてもいいぐらい味が濃いってことなんでしょうねえ。あっ、この5時間ての美味しいわよ。ふっくらしてる。3時間ぐらいから甘みが出てくるみたいね」
私「えっ、ちょっと順番に食べてるんだから途中の食べないでよ」

奔放ながら私よりも的確なジャッジをする母に振り回されつつ試食は続く。

審査員きどり

味覚に自信はないものの、全力で匂い、色、味わいを確かめた。その結果、以下のようなことが分かった。

0時間〜1時間

チェーンの安い居酒屋の焼き魚のような味。美味しいけど、これなら漬け汁に漬けないで普通に塩を振って焼いた方がよい。焼くだけならわたの苦い部分も取らずに食べられるし。レモンなんかかけて。ああ、いいですねえ。

3時間〜4時間

漬け汁が馴染んでまろやかになってる。身がツルっとした感じ。おいしい。私が食べてみたかった、焼き魚と干物の間にある物体エックスとはどうもこれらしい。そんなにアバンギャルドな味ではなかった。

5時間〜6時間

干物として完成された。味も落ち着いている。私の考える旅館の朝食ってこうゆう感じなんじゃないだろうか。ご飯が欲しい。おひつで欲しい。

一番美味しかった6時間ものの干物


7時間〜8時間

ややパサついてきた。干せば干すほど出ると思った旨みも頭打ちか(その前に旨みって実際どんな味なのかよく分かってない)。

9時間〜10時間

しょっぱいだけになってしまった。でも、小学校のとき修学旅行で行った日光の旅館の朝ご飯はこんな感じだった気がする。懐かしいなあ、日光。あ、そういえば旅館では、引率の先生達だけおひつで暖かいご飯が出て、生徒に出たのは盛りつけ済みの冷たいご飯だった。あれは悲しかった。

みんな違ってみんないい

いかん、うっかり日光の思い出話がはじまってしまった。

最終的に分かったのは、干し時間が5時間を過ぎたあたりから干物は干物たる、ということだった(季節や天候の状態にもよるとは思います)。が、0時間ものから10時間ものまで極端に失敗した干物は1匹もない。どれも違った美味しさがある。干物の懐の深さを見せつけられた。

それにしても、こんなに簡単にできるとは。楽しいし、もしかしてハマりそうだ。ほしあみを手に入れたからには野菜やキノコもがんがん干せる。干し芋である! 干し椎茸である! また、何か干しましたら随時ご報告いたします。


“薫製”という趣味のジャンルがあるだろう。なぜ釣りやゴルフと並んで男の人の趣味の一つとして確立しているのか、ずっと疑問だったのだが、干物の面白さが分かった今、その気持も分かる。

もし、お見合いをしたら「ご趣味は」と聞かれたとき何と言おうか時々考えるのだが、このまま干物を極めれば胸を張って「干物です」って言える。「それは良いご趣味をお持ちだ」場、なごむこと受け合い。毎朝干し立ての干物が食べられるなんて、私なら結婚するね、そんな私と!

 

結婚するとこんな朝ごはん出てきます


 

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