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チャレンジの日曜日

 
まぼろしのイスラムタウンへ

ペルーにホームステイに来ました。

と、キャプションに嘘を書いてしまったが、うっかり騙された読者の方もいることだろうと思う(いないよ)。自分でも思わず騙されそうであるが、 流れに身を任せていたら、いつのまにかペルー人のお宅にお邪魔して、一緒に食卓を囲んでいたのだった。

いったい何故!? それは筆者にも分からないのだが、とりあえず順を追って話そう。

あの後いくつかのマーケットを案内してもらい(実はすでに前ページで紹介しているところばかりだったため、ここでは割愛してある)、日も暮れてしまった。

その後、なにか言葉があるわけでもなく、おおかたどこかのレストランかなにかに連れて行かれてお開きになるのだと思って後をついていくと家に着き、本当に嫌な顔ひとつせずに「ウェルカム!」なんつって家に招き入れてくれたのだった。

そして僕らは色々な話をした。僕の住んでいる街のことや僕の家族のこと、あるいはそれぞれのガールフレンドの話。
なぜかママは星座にこだわっていて、僕の星座を何度も尋ねてきた(僕は星座の境目に生まれているため、自分でもハッキリとはわからないのだが)。

彼らの家はいまだにクリスマスツリーが出しっぱなしになっていて、そのことについて笑い合ったり、「ウチのテレビのアンテナは壊れているのだ」といって、映りの悪いブラウン管を眺めては、それすらも笑いの種にするのだった。

長男のホアン君は去年の6月にペルーから日本に来たのだが、「伊勢崎では仕事がみつからない」といって悩んでいた。
そこで僕はハローワークの電話番号を104で調べ、ホアン君に教えてあげた。

彼らのソウルフードである「ピカーニャ」というたべものを食べながら、 それら以外の事柄についてもたくさん笑い合ったのだった。

その後、僕の帰る時間になると(3時間もかかるので終電も早い)、彼らは本当に寂しそうにしてくれて、ママは「あなたのためにいつでもドアをあけておくから」といった。

そして、「あなたの家族におみやげよ」といって、キャンディーをくれ、 その後、家族総出でぼくを駅まで送り届けてくれた。
伊勢崎駅まで僕を送ってくれた。


以上が、今回の顛末である。イスラムタウンなんてものは、結局存在することはなかった。でも、そのかわり、遠い異国の地からやってきた人たちの、慎ましく幸せな家庭とその生活があった。そういう生活は、恐らく日本中、いや世界中のどこででも、繰り広げられているのだろう。

そして、もしかしたら、ペルーからきたということは、本当はどうでもいいことなのかもしれないとも思う。僕やあなたとなんら変わることなく、笑ったり悩んだりしながら毎日を過ごしていて、いつでも同じ太陽をみているのだから。

それでもやはり不思議なのは、お互い英語が不得手で共通の言葉があまりにも少ないというのに、一生懸命に喋ればジョークさえ飛ばせるという事実だ。

英会話喫茶のときにも書いたが、やはりコミュニケーションには相手になにかを伝えようとする情熱が重要で、それは仮に日本人同士でも同じ事なのかもしれないと思った。

思い出の一枚です。

取材後も、ホアンとはメールで何度かやりとりをしている。3月には、僕の住んでいる街に遊びにくるそうだ。

それが、今からとても楽しみである。


 

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