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特集


ひらめきの月曜日
 
おひとりさまの限界

テニス編

オートテニスなるものの存在を知ったのは、つい最近のことだ。テニス好きの友人に連れて行かれたのだが、とても面白かった。今回はそこに1人で行ってみることにしよう。


早稲田にあります
バッティングセンターも併設

オートテニスいわれてもピンと来ないかもしれないが、バッティングセンターのテニス版と考えてもらえば間違いない。

つまり、機械から打ち出されるボールをただひたすら打ち返すだけの、決してラリーには展開しないテニスだ。これぞ究極のひとりスポーツといえよう。


先客はカップル1組と、テニスが上手なオジさん1人
人がいても、わりとシーンとしています

よみがえる記憶

コートは全部で3面ある。3面といってもネットから手前だけなので、それほど広くは感じない。200円払ってラケットをレンタルし、千円のカード(4回分)を買った。

1人でテニスに来る人は、きっと物凄く上手な人(技術維持)か、よっぽど下手な人(自主練習)だと思うのだが、私の場合は何に当たるのだろう。…単なるテニス好きの物好きといったところか。

そういえば高校生の頃、ゴム紐がついたテニスボールを家の近所でよく打っていた。やっぱり1人だった。ボールを打つとゴムがビョーンと伸びて、ボールが戻ってくる。それをまたを打つ。ゴム伸びる。戻る。打つ…。

ストレスを叩きつけるように、ボールを打ちつけていた青春の日々。まさか大人になってまで1人でテニスをする日が来ようとは。

少女だった頃の私が「大人になってもアンタは1人でテニスをする運命だ」と聞かされたら、どんな反応をするだろう。…泣くか。


このキャノン砲のような筒から、ボールがポスス打ち出される仕組み
キャノン砲を操作するパネル。これで細かい設定も可能。ドライブもかけられます

パネルでスピードや向きを調節して、機械にカードを差し込む。あとはスタートボタンを押すばかり。さあ、やるか!


丸椅子にデジカメを置いて撮影。めざせシャラポワ

意気揚々と始めてみたものの、仕事帰りに寄ったせいもあり思ったように体が動かない。そして、スカッと空振りしても「てへへ」と照れて見せる相手がいない。なにより「疲れたー」と、声に出すことさえ出来ない。

…これはひどく虚しい。まるで罰ゲームだ。


ボールを打つ音と、自分の息づかいだけが聞こえる
どんどんシリアスな気持ちに。1人部活か

友達3人と来た時はお互い「キャッキャ」と笑い合って物凄く楽しかったのに、1人でするテニスは想像以上にツラかった。楽しい時を知るが故のツラさなのか。

もう、もういい。帰ろう。近くで働いている友達を呼び出して、一緒にごはんを食べよう。そして、このツラさを聞いてもらおう。


気が付くと、
誰もいなくなっていた。

仕事帰りの友人Nさんと、高田馬場でごはんを食べた。

「1人テニスより、花やしきの方が辛そうだけどね。私は1人でラーメン屋に行くのさえビクビクもんだよ。緊張するよ」というNさん(既婚者)―― そういうものか。

「ラーメン屋に1人で入れることがカッコイイ女の条件。カウンターだけの店なら更に高得点。女らしくなりたいとも乳がデカくなりたいとも思わないけど『これだから女は…』と言われる女にだけはなりたくない。だから急いで食べる。まだ2回しか行ったことないけど」

…Nさんの言うことも独特すぎて分からない。

やっぱり「おひとりさま」で女を上げるには(忘れてた。これが目的だった)食事が手っ取り早いのかもしれない。そういうことなら食べましょう。なかなか1人では行かないところで。


 

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