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特集


ちしきの金曜日
 
夢でみたお団子の話

今日は夢の話からはじめたいと思います。

(text by 宮崎晋平

今から、ちょうど十年程前に亡くなったおじいちゃんが夢に出てきて、ミカサヤの団子を買いに行け、といった。

生きていた頃のおじいちゃんは戦争で右ひじから下を失っていて、まだ小さかったぼくにその妙につるんとした断面 を触らせながら、戦争がいかに悲惨なものかを語ってくれた。だけど、まだ子どもだった僕には半分くらいしか理解できなくって、そして残りの半分はもう忘れてしまった。

夢にでてきたおじいちゃんには右ひじから下の部分も普通にくっついていて、なんだか少し不思議な感じがした。けど、夢の中だからごく自然に、人は亡くなると元のかたちにもどるのかもしれないな、なんて思った。

夢の中のぼくはおじいちゃんのいいつけに従って、ミカサヤにお団子を買いにいった。そして、それをおじいちゃんの家で家族や親戚 たちと食卓を囲みながら、口々に「美味しい」といって、お団子を食べた。中でもお母さんが一番喜んでいて、「やっぱりお団子はミカサヤだね」といって、嬉しそうにしていた。

そんな夢をみた。ただそれだけの夢。

眠りから覚めた時、妙に生々しい夢の感触だけが残った。ぼくはその「ミカサヤ」という訊いたこともない団子屋さんに行ってみたいと思ってお母さんに尋ねたけど、お母さんもミカサヤなんて訊いたことがないようで、ただひとことだけ「知らないねえ」という答えが返ってきただけだった。

ただの夢なんだからそれで終わりにしてしまえばいいのに、なぜかミカサヤというお店がとても気になって、インターネットのタウンページで調べてみると、埼玉 県北葛飾郡と、東京都世田谷区にあることが分かった。

もちろん、これらのお店は僕が夢でみたお店とは関係がないし、これらの二軒のあいだに関係があるわけでもない。

だけど、なんだか妙に惹かれるものがあって、実際に行ってみることにした。

 


 

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